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電子書籍の行く先を占う

電子書籍ビジネスコンソーシアム設立,Σ Bookの登場などにより,電子書籍が今,改めて注目されています。そこで,電子書籍ビジネスに携わっている方々に今後このビジネスがどの方向に向かっていくかについてアンケートを実施しました。

・端末,PDA,携帯などの電子デバイスで読む,一冊の冊子として完結している コンテンツ。〔ブッキング/左田野渉氏〕


・「電子書籍」という言葉を定義しなければならないのかというところにそもそも疑問を感じています。従って,私なりに定義すると「書籍が売れなくなったので,なんとか書籍を電子的な手段でローコストで販売しようとして,しかも書籍そのものをめざそうとする無謀な活動一般」のこと,ということになります。〔日経BP/竹田茂氏〕

・デジタル化された書籍(画像化を含む)。〔イースト/下川和男氏〕

・書籍をデジタル化し,液晶ディスプレイなど紙以外の電子表示媒体を用いて閲覧すること。〔シャープ/村松正浩氏〕

・デジタルデバイスで閲覧可能なコンテンツ。〔インプレス/田村明史氏〕

・テキスト,画像,音声,動画などが電子的なファイル(通常は1ファイル)となっているもの。ダウンロード,保存を前提にしているもの。〔日立製作所/飯田滋氏〕

・PC,PDA,携帯電話などのデジタル機器を媒体として表示される書籍。〔新潮社/村瀬拓男氏〕

・紙媒体を一切使わず,電子機器のみを用いて本・雑誌などを表現すること。〔JCD/木戸康行氏〕

・いま現在は…ダウンロードしてPC,PDA,ケータイ等で読めるコンテンツのことを電子書籍と考える。〔NTTドコモ/安藤哲也氏〕

・かさばらない。検索可能。〔ブッキング/左田野渉氏〕


・それがないから苦労している,というところでしょう。〔日経BP/竹田茂氏〕

・大容量,検索性,絶版がない。〔イースト/下川和男氏〕

≪企業側≫
・デジタルアーカイブとして残せ,絶版がない。
・物理的な在庫が発生しないため,返本などの既存書籍流通における問題点がない。
・分冊化など作品形態の自由度が高い。
・製本コストなどが抑制できるので,新人作家の登用など斬新な企画においてもリスクが低い。
≪ユーザ側≫
・場所,時間問わず,好きな時に本が買える。
・複数冊持ち歩いても「重さ」「容積」がない。
≪電子書籍の個々の機能≫
・読みやすいようにユーザー自身で文字サイズを変えられる。
・目的の項目に瞬時にジャンプ出来る。
・わからない漢字,英単語などを検索できる。
・音声や音楽,動画など,紙の書籍では不可能な表現が出来る。〔シャープ/村松正浩氏〕

≪企業側≫
・在庫リスクがなく,制作コストを低減することが可能。また参入障壁が低い。
≪ユーザ側≫
・場所を選ばずローコストで手軽に入手でき,検索性,カスタマイズ性,携帯性に優れる。〔インプレス/田村明史氏〕

・フォントの大きさを変えることができる。(目の悪い方は字を大きくしてみることができる)
・保存するとき,読むときにかさばらない。
・ネットワーク経由で購入できる。書店に出向かなくてよい。
・買いにくい本も比較的買いやすい(アダルト物など)。
・ハイパーリンクや栞,音声再生など電子書籍ならではの機能がある。〔日立製作所/飯田滋氏〕

・紙の本のような物理的なボリュームを伴わないこと。複製コストが生じないこと。このため,絶版対策や小部数対応などが容易となる。〔新潮社/村瀬拓男氏〕

≪企業側≫
・保存コスト,配布コスト,流通コストが大幅に削減でき,初期の著作物の保存状態をそのまま保つことが可能。
≪ユーザ側≫
・今のところ,「?」です。PDA用なイメージならば発想がわきますが,電子書籍となると 電子辞書の延長イメージしか思いつきません。技術的には良いのはわかりますが。〔JCD/木戸康行氏〕

≪企業側≫
・品切れ・返品なし
・高利益率
・新規読者の獲得
・コンテンツの保存
≪ユーザ側≫
・スピード…いつでもどこでもすぐ買える!紙より早く読める!
・移動性…PDAに20冊入れて持ち運べる!
・エコロジー…non paperで環境にいい!
・収納性…書棚要らず。日本の住宅事情にピッタリ!
・低価格…なんてったって紙の本より安い!〔NTTドコモ/安藤哲也氏〕

・携帯性,操作性が紙に劣る。 ・ビューアー,ファイル形式が乱立。 ・技術の進歩が,前段階の技術をフォローしない。(部品の製造停止,ソフトの保守打ち切り)〔ブッキング/左田野渉氏〕


・書籍ではないこと。〔日経BP/竹田茂氏〕

・重い,コンテンツが少ない,読みづらい。〔イースト/下川和男氏〕

≪企業側≫
・現状,事実上デジタルデータ化のフォーマットが統一されていない。書籍を読むために電子機器が必要である。
≪ユーザ側≫
・書籍を読むために電子機器が必要である。〔シャープ/村松正浩氏〕

≪企業側≫
・市場が未成熟なため,顧客を確保するのに大きなコストが必要。成長段階の技術に多くの要因が依存するため,本格参入ができない状況。
≪ユーザ側≫
・一覧性が悪く全体を把握するのに時間がかかる。モノとして存在しないため,デジタルデバイスの性能に利便性が依存してしまう。 〔インプレス/田村明史氏〕

・表現に制約がある。例えば,紙の本では複数フォントの混在や,特殊なフォントを使用することができても,電子書籍では自由度が少ない(ただし,将来的には改善されると考える)。
・機種により,同じファイルでも見え方が異なる場合がある。
・不正コピーの恐れがある。
・誤操作,端末不良により,紛失の恐れがある。
・持っている本を書棚に飾っておくことができない。〔日立製作所/飯田滋氏〕

・読むためにデジタル機器という媒体が必要であること。
・読者のデジタル機器に対する認識によって,マーケット自体が左右されてしまうこと。〔新潮社/村瀬拓男氏〕

・利用者にとっての「使える気軽さ」が追求できていないこと。満員電車の混雑のなかで電子書籍(いまのは大きすぎ)が読めれば利点あるが,本当に実現可なのか?〔JCD/木戸康行氏〕

≪ユーザ側≫
・コンテンツ数が少ないこと。
・パラパラと読む,アナログ的な「ナナメ読み」が出来ないところ。
・買い物のエロス(興奮)がない。〔NTTドコモ/安藤哲也氏〕

・コミュニティをいかに集めるか ・付加価値〜主に検索性〔ブッキング/左田野渉氏〕


・電子書籍とは何かということを最初からユーザーの目線で考えなおすこと。〔日経BP/竹田茂氏〕

・軽く,高機能な読書デバイス。〔イースト/下川和男氏〕

・出版社とのビジネススキーム。
・ハード(電子機器)/ソフト(ビューア,フォーマット)/コンテンツ(書籍ラインナップ)のバランス。〔シャープ/村松正浩氏〕

・デジタルデバイスの特性を最大限に利用したコンテンツ制作とマーケティングミックス(コンテンツテーマ,価格,プロモーション,チャネル)の最適化。
・現時点では,ケータイプラットフォームでの展開が重要であり,コミュニケーションがキーとなる。また,話し言葉的なコンテンツが受け入れられると考える。〔インプレス/田村明史氏〕

・電子書籍が読めるデバイスの普及,および購入から読書に至るまでの簡便さがどこまで進むか(どれだけ手軽になるか)。〔日立製作所/飯田滋氏〕

・長期的には,読者の意識のレベルで,電子書籍を読むということと紙の本を読むということとの間で違いが生じなくなること。
・短期的には,デジタル機器の個別の媒体特性と,それに伴う市場の意識とに配慮した,適切な編集作業がなされること。〔新潮社/村瀬拓男氏〕

・電子書籍でしか入手できないコンテンツ,電子書籍ならではのコンテンツ(例えば学習教材)。加えてネット接続機能がついていることだと思います。〔JCD/木戸康行氏〕

・出版社の意識。電子書籍を戦略商品として企画・編集・制作し,宣伝・販売に力を入れられるかどうか。
・安価で画期的なデバイスおよび端末機の登場。
・翻訳作品の電子化。〔NTTドコモ/安藤哲也氏〕

後編へ続く]

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2003/10/06 00:00:00


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