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薄れた?環境対応製品への関心

去る9月に、世界4大機材展のひとつとして位置付けられて初めてのIGASが開催された。出展社数、来場者数等、当初見込みでの開催になった。しかし、環境対応製品に関して言えば、あちこちに「環境対応」の表現は見られたが、2,3年前に見られた盛りあがりは感じられなかった。

IGASでの環境対応製品分野における新製品のひとつの目玉は、三井化学の完全無処理CTPプレート「A-LA-ONE」(ア・ラ・ワン)であった。「ア・ラ・ワン」は、元々親水性を持つ感光材料を使い、印刷画像部になる部分にレーザーを照射することでその部分に親油性を持たせる、という原理のCTPである。したがって、現像処理が不要となり、現像廃液を出すこともない。このような環境対応面での特長とともに、オンプレスCTP用の版材として利用できる点も特長である。

環境対応印刷資材に関しては、最初に再生紙が注目され、次いで印刷インキ分野に目が向けられた。最初に紹介されたのは芳香属炭化水素を含まないアロマフリータイプのインキで、次いで揮発性有機化合物(VOC)対策として大豆油を使用したインキが登場した。その後石油系溶剤使用をゼロにしたノンVOCインキも登場した。いずれも枚葉印刷機用とオフ輪用が用意され、印刷インキの分野ではこの数年間で多様な選択肢が用意されてきた。インキに関しては、カートリッジ式のインキ容器とこれを使ったインキツボへのインキ供給装置を組み合わせた環境対応システムがあるが、今回の展示会では新たな製品発表はなかったようだし、来場者の関心もいまひとつだった。

一方、湿し水の分野における環境対応では、ノンアルコール湿し水の採用とともに、水なし平版を環境対応面から普及していこうという動きも見られる。湿し水に関してはPRTR法(Pollutant Release and Transfer Register)施行を契機に対応の必要性が再認識され、ノンアルコール湿し水化に向けた製品も紹介された。しかし、その後続々と新製品が紹介されるという状況は見られなかったが、IGASでは水ナシ平版用のノンVOCインキが紹介されていた。

いずれにしても、細部ではいろいろな改良があるのだろうが、印刷資材に関しては目立った新製品発表が見られなかった。すでに新製品開発の余地はないということなのか、業界での利用が浸透して改めてPRすることもないのか、あるいは実態として市場の拡大がなく、メーカーとしても力が入らないということなのだろうか?

非紙媒体への印刷におけるインキのVOC問題が深刻である。埼玉県生活環境保全条例に関連して大騒ぎになったグラビア印刷インキ等の問題だが、IGASにおいては、コーパックが水性インキを使った軟包装のフレキソ印刷をアピールした。グラビアインキの問題は、大手企業の主力工場であれば、溶剤回収装置の設置による対応も可能だろうが、中小企業にとっては方式転換の方向で対応していくことになるだろう。いずれにしても、大きなお金が掛かることである。

従来のグラビア印刷やフレキソ印刷が対象とする分野を大きくカバーすることにはならないが、UVインキを使ったプリンターが非紙媒体への小ロット印刷で今後注目されることになるだろう もちろん、環境問題対応ということだけからではなく、多品種、小ロット製品の生産手段としてのオンデマンド性が最大の武器である。

印刷業界における環境問題対応のひとつの分野は「オフセット印刷サービス」に沿った行動ということになる。ひとつの内容は環境負荷の少ない資材・生産工程の採用で、上記のようにメーカー側からさまざまな製品が出されて、それを使うということになる。もうひとつは環境マネージメントシステムの構築といった環境問題への取組みがある。いま、中小規模の印刷企業のISO14000認証取得への関心は高まってきているようだが、IGASで感じられた各種環境対応製品への関心の低さととのギャップが気になるところではある。

(「JAGAT info 2003年11月号」より)

2003/11/04 00:00:00


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