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「電子タグ(RFID)が作るユビキタス社会のインフラ」

第30回JAGATトピック技術セミナーは,12月10日(水)に国立オリンピック記念青少年総合センター カルチャー棟 小ホールで開催する。このセミナーの特別講演では,社団法人 日本自動認識システム協会 研究開発センター長 柴田 彰 氏に,「電子タグ(RFID)が作るユビキタス社会のインフラ」のタイトルで,各方面で注目され,実証実験が行われているRFIDをめぐる国内・海外の市場動向,先進事例,RFIDとネットワークがもたらす未来像などについて講演していただく。以下は,柴田氏がご講演される概要である。

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ユビキタス社会を実現するためには社会基盤の整備と技術の標準化が欠かせないが,いろいろなキーワードの中で,物をコンピュータに結びつける手段として特に注目されているのが,非接触でしかも無人でも情報を取得できるRFID(Radio Frequency IDentification)である。
一般的にRFIDには非接触型ICカードが含まれるが,ここでは非接触型ICカードを含まない「電子タグ」や「ICタグ」などとも呼ばれるものを意味するため,以後「RFタグ」と呼ぶ。

RFタグは,非接触であるが故に,サプライチェーンなどのような世界規模での利用を考慮した使用周波数の標準化が必要である。また,コンピュータによるデータ処理のためには,物品をユニークに識別する番号体系や格納するデータ構造,リーダ/ライタとコンピュータとのインタフェースなどの標準化も必要である。更に,物流では多種多様な大きさ・重さ・梱包・輸送容器・輸送手段が存在し,それらを統括したアプリケーションの標準化も重要であり,その標準化が完了すれば,国際的なサプライチェーンマネージメントの高度化が可能となる。これらの標準化は,ISO/IEC JTC1 SC31で規格開発が行われている。

この標準化の動きに呼応するように,電子商取引メッセージ,標準バーコードシンボル及び標準識別コードなど,流通系の標準システムの開発及び構築を行なっている国際的な団体 EAN が事務局となって GCI(Global Commerce Initiative)が設立され,RFタグに関するワーキンググループが活発な活動を行いG-Tagと呼ばれる提案を行っている。また,マサチューセッツ工科大学の オートIDセンター も,2003年6月にEANと提携するなど活発な活動を展開しており,この活動を強力に推進している流通業最大手のウォールマートでは,2005年からすべてのベンダーに輸送梱包へのRFタグの添付を義務付ける計画である。

日本国内でも,経済産業省が商品トレーサビリティ研究会(参考:中間報告書)を,総務省が ユビキタスに関する研究会(参考:中間報告書)をそれぞれ発足させ,それらの成果を受けて2003年7月には e-Japan戦略U(PDF形式)が策定された。

このような活動と前述した標準化が完了すれば,あらゆる産業分野での応用が可能となる。例えば,自動車や家電業界では製品及びその構成部品のライフサイクル管理が可能となり,リデュース,リユース,リサイクル(3R)の実現が容易になる。食品業界では食品の安全性保障や原産地証明が可能となり,医療業界では取扱いミスのない安全な医療システムの構築が可能となる。運輸業界では基本的に誤配送が零となり,さらに輸送時間の短縮と貨物のリアルタイム管理が可能となる。

RFタグは,ユビキタス コンピューティングには欠かせない要素技術で,ユビキタス社会実現の過程としてすでに先進的利用が始まろうとしている。
RFタグを物品につけることにより,第一に貨物の出発地点/経由地点/到着地点など,貨物の物理的な移動のリアルタイム管理が可能となる。第二に物品の在りかを即座に入手できるため,ロケーション管理が不要になる。第三に事務処理の効率を向上させることができる。第四に暗号機能を備えたRFタグをカギとして利用することにより,セキュリティレベルを飛躍的に向上することができる。自動車のキーに内蔵したRFタグとエンジンコントローラの認識コードとが一致した時のみエンジンを始動する「イモビライザー」は,すでに実用化されている。また,紙幣,小切手,株券,チケットなどにRFタグを埋め込めば,偽造や不正流通の防止が容易になる。
道路や街灯,信号機,横断歩道など特定の場所にRFタグを埋め込むことにより,そこから地域の情報が得られ,地図に頼らず容易に目的の場所に到達することができる。これは高齢者や視覚障害者,車椅子利用者などがスムーズに移動できるバリアフリー社会の構築を目指すものである。

ユビキタス社会を実現するためには、まずRFタグの価格が安いことが条件であるが,すべての商品の識別コードをどのように体系づけるか,商品(物品)は移動するので,商品(物品)の位置座標をどのように表わすのか,などRFタグに直接関係しない大きな課題の解決が望まれる。

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詳細は,講演予稿(PDF形式)を参照願います。

第30回JAGATトピック技術セミナーのご案内・お申込は,こちらを参照願います。

2003/11/18 00:00:00


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