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新デジ放談−その1

みずき:今月からデジ放談でお世話になります若草みずきです。何でもこのデジ放談, 私達で,業界で話題になっているもモノコトについて,思っていることをぶちまけて,いやお話して欲しいといった企画のようですよ。

そういえば,昔から水無月さんは辛口の批評がウリですよね。どうぞお手柔らかによろしくお願いします(笑)。

水無月:水無月実です。みずきさん,よろしくお願いします。

みずき:業界で話題のモノコトについて取り上げる企画とは言っても,題材になるものがいろいろありますね。

編集部:昨年(2003年)の年明けにJAGATでは『DTPの行く先を占う』というタイトルで,DTP,プリプレスのトピックに関連したアンケートを実施しました。それからちょうど1年になりますので,いま,このアンケートに答えるとしたら,というトピックでは如何ですか?

みずき:そうですね。このトピックについて取り上げて,興味のある事柄を楽しくそして時にはディープに(?)掘り下げてお話してみるのもよいですね。この1年の間にも著しく普及し,メディアのコンテンツに多用されている,「デジタルカメラ」につ いて参りますか?

アンケートでは『印刷画像としてのデジカメの利用率が50%を越えるのは何年後?』 といった質問でしたが。

水無月:案外,10年近くはかかるのじゃないかな。私はこの10年間で利用率が50%に達し なければ,次世代の技術に変わられるだろうと思う。

みずき:私は現時点で「印刷原稿用にデジカメの画像を入稿する」ということは,仕事に よっては盛んだったりするので,もっと早いと思います。いかに印刷画像としての品 質を維持できるか。

原稿としての撮影〜データファイル受け渡しまでのルールが,ある程度でも標準化で きれば5年位で50%を超えてもおかしくないと思ったりします。

それにユーザーの意識変化ですよね。印刷物の品質要求度や担当者の思い入れ, ビジュアルの再現性について,色再現や画質をどこまで求めるか。掲載される情報に 対して正しく伝われば良いと割り切れば。普及の可能性はより大きくなると思いま す。

編集部:統計的なデータを紹介します。カメラ映像機器工業会(http://www.cipa.jp/)が2003年1月にまとめたデジタルカメラの国内出荷数の統計発表 では,平成14年は前年比135.6%の655万台です。平成15年の出荷予測(改定)では前年比126.4%の828万台となっています(http://www.cipa.jp/press/news/new-pdffiles/kaitei15.pdf)。

ちなみに,銀塩カメラは,平成14年は前年比 74.3%の224万台,平成15年予測では前年比78.3%の175万台となっています。国内向けだけでなく輸出を含めた総出荷数でも同様の傾向があります。

水無月:統計資料のように,デジタルカメラの普及は目覚ましいが。デジタルカメラもい ろいろなタイプのものが普及して,画像の品質にも幅ができたね。だから,この統計 数字がそのまま,印刷市場でのデジタルカメラ利用率に繋がるとは言えないよね。

みずき:コンシューマ市場ではこのように圧倒的な勢いでデジカメの普及が進んでいる様 ですが,これがこのまま印刷業界にも当てはまるというわけではないのでしょう。印 刷業界ではコンシューマ用途とは隔絶した部分がありますしね。 印刷業のプロから見た視点でいくと,コンシューマ市場がどんどんとデジカメにシフ トしてしまうと,訳が分からないままに撮影して入稿されてしまう原稿データが加速 度的に増えてしまう。といったことが危惧されますよね。

水無月:デジタルカメラの画像品質が多様化してくると,ユーザーにはこのカメラではど こまでできるかという認識もほしいよね。 RGBで入稿するのか,CMYKで入稿するのか。製版サイドはCMYKで入稿してほしいし, カメラマンやプロダクションはRGBでお願いしますと。

みずき:今はものによってはRGBでの受け渡しも柔軟に行われるようになっている(というかなし崩し的に行わざるを得なくなってる??)気がしていますが。 でも,解像度や偽色(擬似カラー)といわれるハイライトやシャドー部のノイズ,色再現性にも気を付けてほしいですね。 これはけっこう,デジカメのデバイスによってもまちまちの様ですし,カメラマンやデザイナー,プリプレスに関わるディレクターや画像オペレータにとっても認識にかなり個人差もあるように思われますね。

水無月:これらの問題点はカメラマンやデザイナー,プリプレスに関わるディレクターや 画像オペレータも全員が認識しているようではないね。

みずき:このほかにも,一眼レフデジカメの場合なんかには標準で用意されていますけ ど,画像フォーマットもデジカメの生画像を保存するRAW(ネガ撮影)があったり,RGBで保存する JPEGが選択できたりしますよね? これらのフォーマットの区別とその特長を理解する だけでも大変でしょうね。

水無月:実際の印刷現場では画像フォーマットの違いとそれぞれに応じたワークフローの 確立が重要だね。その当たりのノウハウもDTPの初期のように重要な要素になりつつある。

みずき:あれ? こうして突き詰めて考えるとけっこう印刷画像としてのデジカメ利用って ハードルが高い?(笑)。

編集部:最近PhotshopでもプラグインでRAWを扱えるようになったんですってね。これってどうなんでしょ? やはり簡単に扱えるものではないのでしょうか? どのように運用ルールを考えていくべきなんでしょう。この後はこの辺をお話していくことにしましょうか。





*-*-*-* プロフィール *-*-*-*

水無月実:DTPライター。1台のMacUciと出会い,1980年代の終わりからDTPの世界に入る。MacintoshはMacUの時代から,今日まで使いつづけている。これまで日本語DTPからマルチメディア,インターネットまで,さまざまな分野に携わってきた。そこでの経験を生かして,現在はインターネット・メールニュースの執筆・編集も行っている。

若草みずき:フリーのテクニカルライター,DTPアドバイザー。過去に制作ディレクションなど実務経験を積んだ経歴を持つ。かたくなに銀塩カメラを愛用しているが,最近はデジタルカメラの便利さも実感。しかし,スタイリッシュでコンパクトなものがいいか,やはり画質で一眼レフタイプか,とどれがいいやら迷っている今日この頃である。

2004/02/04 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会