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意外に身近なフルフィルメント

10年以上前から使われている言葉と思うが、そのニュアンスはだいぶ変わってきたようだ。英語のfulfillmentの意味からは、遂行・実践・完了といったことがあてはまるだろう。例えば通信販売業界では、店舗は持たないが、全国から注文が集中し、また注文を受けたあとの配送から決済までの業務をどこでどう処理するかが大きな問題で、そのための施策がキーになるとか、負担にもなるといえる。

そこでこれら通信販売に欠かせない業務をどこかに委託するわけだが、それは単なる外注以上のしっかりした関係で、迅速に正確に行わなければ、顧客の信用を築くことは出来ない。同時にコストがかかっても困る。
外注先も会社だからいろいろな都合があるだろうが、そういうことで通販のサービスが変動してはいけない。あたかも社内でコントロールしているごとく、通販業務のビジネスプロセスにがっちり組み込まれて、一定以上の品質を保たなければならない。
こういう外部への委託はアウトソーシングと呼ばれているが、受託する側から見るとフルフィルメント業務代行である。つまりフルフィルメントは受注とともに発生する一連のバックヤードの作業を遂行し完了させることである。

こういった業務が増えるにはいくつかのわけがある。特に人件費の面でムダができなくなっているので、会社の業務はコアコンピタンスに絞り込んで経営をスリム化すると、例えば受注の季節変動に対して業務がパンクしやすくなりフレキシビリティがなくなる。
お歳暮など受注が集中する時は受け付け業務のキャパシティを高めなければならないが、それはオペレータ人数だけでなくPC台数、通信回線やサーバ能力、また倉庫の手立て、発送作業の集中化などに対策をたてなければ、需要が高まった時にサービスが低下することになってしまう。

とりわけ経営のスリム化という意味ではEC化が効果があるにもかかわらず、EC化によってB2Bの世界でも引き合いから受注までの段階が効率化してしまうと、フルフィルメントの遅さとかバックヤード処理の弱さが客先にもよく見えるようなるので、フルフィルメントは力をいれなければならない分野になりつつある。

フルフィルメントにあたる業務はルーチンワークであるので、アイディアとか企画性よりも地道なノウハウの蓄積がモノをいう。ノウハウに基づいたプロセスの改善、それに必要なITインフラの導入、管理のスキル、人の教育などが必要で、これらの要素を需要の変動やビジネスの変化に合わせて調整していくことは大変難しい。

しかしコールセンターがしている受注の受付や、データ入力、入荷・出荷管理、伝票発行、苦情処理などはビジネスモデルの違いや商品の如何にかかわらず共通した要素が多い。
データ入力ひとつとっても、電話で聞いてキーボードを打つだけではなく、FaxOCRや、音声応答、WEB入力、携帯電話などがあり、またその日その日の込み具合に応じた対応をとる方法を見つけ出したり、ピッキングの方法の改善や、発送方法や決済方法についてもいろいろ多様な方法が出現していることへの対応が求められる。
だから販売に伴うフルフィルメントを社内で垂直にすべてもち、それらの方法の変化に社内の開発で対応していくことは容易でない。ところがフルフィルメント専門の業者なら水平にノウハウを展開していくことができる。

さて印刷出版という点でフルフィルメントを考えると、印刷物自身が商品になる書籍雑誌でのフルフィルメントはまだそれほど一般化しておらず、むしろパッケージ印刷側からの動きの方が先行していたかもしれない。 またDMやカタログ印刷物などもその送り先の管理と合わせて請け負う例はみられた。
しかし今後は、印刷会社がフルフィルメントサ−ビスをするか、他のフルフィルメント業者に印刷会社が納品をするかは別にして(両方あるのだが)さまざまな印刷物がフルフィルメントの業務の対象になっていくであろう。
そのきっかけとなりそうなのはオンデマンド印刷である。特にバリアブルプリントをするとなると、封筒と内容物を別の会社が扱うような非効率が許されるはずはなく、最初からフルフィルメントを含めたビジネスモデルを提案せざるをえなくなるだろう。

関連情報:2003年11月13日(木)ITとパートナーシップで築くDMとフルフィルメントの動向

2003/11/05 00:00:00


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