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デジタルの流れを印刷に活かす

今年はIGASが開催され、来年はDRUPAが開催されるが、今日の印刷システムの変化の特徴は、デジタルが社会のインフラになったことにより、印刷がデジタル化の流れに合わせるように開発が進んでいることである。その意味ではまだまだ機能向上や効率化のネタは尽きないが、従来の印刷機の高速化などのように、単純に印刷会社に導入しても稼ぎ頭にはなってくれない新製品が多い。
つまり、トナーでプリントするオンデマンド印刷よりも、有版のオフセット印刷の方が1枚あたりのコストが安いように、デジタル化の流れに合わせて開発されたものは、ふさわしいデジタル環境に置かないと意味がないのである。だから自社にとってはどのような新設備を考慮すべきか、迷う会社が多くなっている。

CMYKからRGBへ
かつて製版オペレータがスキャナを駆使していた分野は急速に変わりつつある。高画素数のデジタルカメラが普及し,一般的なカラー画像はRGBデータで入稿され,カラーマネジメントもRGBベースのものになる。DTPの初期はCMYK分解した画像をEPSファイルにして処理していたが、CMYK分版は出力段階でのみ扱うという形で仕事が進められるようになった。
しかしRGBというだけでは色域の範囲が限定できないので、個々の作業ごとに色空間の定義や変換が必要になった。RGB色域の標準としてはオフィス分野はsRGBがあるが、デジタルカメラ・製版の世界はAdobeRGBへの対応を強めている。

XMLでコンテンツ管理
組織の中の資料や出版業界にもテキスト情報は膨大に残っているが、そういった資源の再利用は大変手間やコストがかかるものであった。しかしデジタルデータを扱うインフラはどこにでも持てるようになったので、コンテンツをXMLで管理することが一挙に進みだした。マイクロソフトのOffice製品群もDTPソフトの新バージョンも、XMLをネイティブで扱えるようになる。
印刷用のコンテンツを更新して再度印刷することは当然ながら、それよりももっと高い頻度でコンテンツが電子メディアに使われようとしている。両者は別システムではなく、マルチメディアも印刷も同じ土俵で扱われ,それらは印刷にもプリントにも多様な出力となって現われるようになる。このようなデジタルデータの流れに印刷ビジネスが位置付けられるようになった。

タイトな管理が求められる
かつての印刷工場の経営感覚では物的な生産性の向上が最大のテーマであった。しかし今日ではクライアントにとってメディアは印刷だけではない。今すぐとか、ちょっとだけなど、印刷の間尺に合わない情報は他の手段で伝達することを最初から考えている。このような情報の受容者の行動変化を無視して、印刷の物的生産性だけを求めても,印刷の価値が発揮できない範囲は広がってしまう。その結果、印刷は単価が安いとか、静的に美しいなどの認識は残ったとしても、デジタルメディアに比して印刷のパフォーマンスは相対的に悪いと判断されかねない。
このような市場と印刷界のズレを防ぐには,印刷作業の全工程を迅速かつ,きめの細かいサービスができるように見直して,リアルタイムに管理や制御が容易にできるIT環境を備えなければならない。これがMISやJDFのミッションである。

プリント技術は産業用へ
ITと直結してオンデマンドで使えるプリンタは,「水と空気以外は何でも刷れる」といわれた印刷に比べて用途が非常に限定されていて、複写機と同レベルに思われていた時代があった。今でもプリントと印刷の技術的な隔たりは大きいが,さまざまな機能特化したプリントエンジンの発達により,徐々に印刷以上のパフォーマンスを発揮できる分野が出てきた。
印刷とプリントの両分野の重なり合いは次第に大きくなり、その意味で印刷方式はますます多様化し、オフセット印刷機のような汎用の装置でスケールメリットを出す競争の一方で,特にIT技術を駆使して印刷需要の側の個別の事情にあわせたシステム構築や、デジタル印刷からヒントを得た新たなビジネスモデルへ特化していく傾向もある。ユニークなプリントエンジンの開発によって新たなニッチ印刷ビジネスが生まれようとしている。

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2003/11/11 00:00:00


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