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ネットワークはVPN技術活用で直接社内サーバの情報共有時代に

従来はネットワークを導入する目的が、データ転送や基幹システムなどのオンライントランザクション処理であった。しかし今ネットワークの利用はサーバ上の情報共有が目的となってくる。これはどこにいても社内LANへのアクセスが行えサーバ上の情報を参照・更新ができることである。
言い換えると、工場と本社、支社と本社という環境でそれぞれのLANをすべて結び、情報の一元化を行うことである。たとえば管理情報システムの運用では、どの支社やどの工場からも本社の基幹システムにアクセスできる意味であり、制作面では制作のための素材や制作済みのデータ管理サーバからデータがアクセスできることである。
一見当たり前のようだが、今までこのような環境を実現するには高価な専用線を利用して拠点間を接続するため、簡単には導入ができなかった。

では何故今このようなことが進められているのか。日経コミュニケーションの記事にもあるように、今企業が導入を検討しているネットワークはIP-VPN、広域イーサネットの順となってきている。これらはLANとLANを接続するためのネットワークサービスだが、接続技術や価格やサービス地域などが異なってくる。
しかしこれらのサービスはまだまだ高価であり、大企業や大きな事業所を中心に導入が進んでいる。しかしその次に検討されているのがインターネットVPNと呼ばれる仕組みであり、これはバックボーンがインターネットであるため比較的導入コストが安く、今後小規模事業者やコストがかけられない業態にはこの利用が進んでくると思われる。
これらは基本的に、LANとLANをどのように接続するかの技術の違いやサービスの違いで、利用目的は同じになってくる。

インターネットVPNの普及

比較的導入コストが安価なインターネットVPNは、中小規模の多い印刷業では非常に魅力的なネットワークである。
既に導入は始まっているが実際にインターネットVPNを利用しているという意識を持ったところは少ないようだ。たとえば、業務管理システムを導入する場合でも、本社だけではなく、工場や支店からも情報を参照・更新したいので、システム業者が一緒にネットワークも導入してしまう。
また、校正用のプリンターをリモートプルーフで利用する場合でも、ネットワークと機器などが一緒に導入される。このような場合、実際はインターネットVPNにして利用するケースが多いが、利用している方の意識はあまりない。
しかし実際にはこのような意識では問題がある。導入業者では導入するシステムのための設定となるため、LANとLANが接続できて他のアプリケーションも使えるという認識が少ない場合がある。実はこの辺が課題である。
インターネットVPNとは、実際にはインターネットを利用するためセキュリティを意識する必要がある。このようにインターネットVPNを利用する場合には、セキュリティや全社のネットワークが実際にどのようななるかを把握し、利用範囲も検討する必要がある。また当然利用する目的が増えれば導入したネットワークや装置にも問題が出てくる。
たとえば、工場から本社の基幹システムのサーバに工程管理情報などのアクセスを行うならば、ADSLでも十分である。しかしそこでCTPや制作のためのデータを共有すると、光ファイバを利用したネットワークが必要になる。このように部分的な利用ではなく統合環境として利用するには、ネットワーク環境も把握する必要がある。
今印刷業の制作面ではPDFワークフローなどの利用で直接CTPまで接続するが、このためには工場と本社など拠点間の接続が必要である。またJDFなどの利用も装置と管理システムが情報共有する環境であり、ネットワークは不可欠である。

固定地点ではなく、出先からの接続も考える時代に

また、最近では自宅や出先からの社内サーバへの接続という利用も求められる。これらもインターネットVPNで実現できるのである。
工場や本社、支社のような固定地点への接続があり、また自宅や無線LANのホットスポットのような場所からの接続があり、またPHSやFOMAなどモバイルのような接続もある。
これらは今、セキュアでオープンなネットワーク技術を利用して社内情報を共有するネットワークの構築の時代である。今、年々ネットワーク利用環境は変わりつつある。自社でどのようにネットワークを利用するのかを考えながら、早い動きを把握し自社に向いたシステムを検討する必要がある。ただ、価格が下がってきていているので、検討するより導入してだめなら入れ替えるという方法もある。

今ネットワークの選択は、IP-VPNか広域イーサネットか、インターネットVPNかだと思われる。特にインターネットVPNに関する技術や商品は非常に多くのものが出てきている。
これからは得意先との接続もあり、VPN技術を活用したネットワークは企業のインフラとして重要な要素となってくる。

2003/11/13 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会