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日本のユーザにもプリプレスの効率化ツールを享受してほしい

Xinet社 CEO Mr.Scott Seebass 特別インタビュー

インタビュアー 日本印刷技術協会常務理事 小笠原 治

IGAS2003に併せて開催されたVPJ(ビジュアルプロセッシングジャパン)ユーザ会議に,WebNativeの開発元であるXinet社CEOのScottSeebass氏が来日した。JAGATでは,同社の製品開発への取り組みと欧米での同社ユーザの動向を伺った。


メディア・業界の境界がぼやけつつある

小笠原 貴社の事業について伺いたいのですが,日本の読者に対して紹介する上で,4つのキーワードがあると考えています。一つはプリプレスのプロダクションツールとして,もう一つはプリプレスのワークフローのコントロールツールとして,それからコンテンツマネジメント,クロスメディアパブリッシングです。読者にこれらの言葉についての定義付けを行わなければならないのですが,それを含めてお話しください。まず貴社の事業の背景と今後の方向性についてお聞かせください。

Mr.Scott 当社は11年前(1992年)に設立しました。当初はMac用のネットワークソフトウエアの開発を手掛けていました。その後,7年前(1996年)からプリプレス用のソフトの開発を始めました。
その時に考えたのがプリプレスの効率を上げる,スピードを上げるようなツールを作ることでした。基本的な方針としてはプリプロダクション(編集,ディレクション,ページレイアウト,カラーマネジメント,校正,CTP,クロスメディア等々)のプロセスの中で,品質を向上させ,さらにできるだけ労働を減らすことに関して,当社のソフトウエアは,「ここまでしかやらない」というような境界は設けずに,できることは何でもやろうという姿勢です。改善の余地があるものなら,一つのソフトに作り込んだ形のソリューションとして提供してきました。

小笠原 従来のプリプレスを超えたクロスメディアまで含めたものとなる,ターゲットのユーザが少しぼやけてしまうことはないですか。

Mr.Scott 現在では,従来の印刷の範ちゅうなのか,そのほかのメディアなのかといったメディア間の境界がぼやけてきています。実際には同一の会社で,印刷だけではなく印刷も,ビデオもWebも制作することが行われるようになっています。対象となる業界自体が広がっています。
また,大企業のクライアントではメディアが違っても、1社ですべて制作を請け負ってほしいというニーズがあります。

小笠原 メインのユーザはどのような方ですか。

Mr.Scott もともとのメインユーザは大手印刷会社でした。今は広告代理店や,インハウスでパブリッシングなどを行う大手企業,従来型の印刷会社,フォトハウスなどです。地域的にはアメリカとヨーロッパが同じくらいの市場で,ラテンアメリカ,スカンジナビアも大きな市場になっています。

小笠原 ソフトウエアツールはCTPレコーダやセッタように台数で普及状況を判断しにくいのですが,欧米の印刷やWeb制作のプロダクションなどで,貴社の製品はどのくらい利用されているのですか。

Mr.Scott 米国とスカンジナビア市場では,大手の会社では90%以上で使用していただいています。中小の会社では,利用していただいている会社はかなりありますが,総量としてはそれほど多くありません。そのほかの市場では,技術レベルがあまり高くないところは,それほどユーザはいません。
業種別ではパッケージング分野では特別なツールも提供し,効率が良いのでほとんどすべての会社で利用されています。

各ユーザ,ソフトをつなぐ糊のように

小笠原 貴社のツールを元にコラボレーションするというような,企業間をまたがっての利用も多いのでしょうか

Mr.Scott 当社のWebツールを使用して異なる企業間でコラボレーションすることもあるし,同じ企業内の異なった部門間でコラボレーションすることも盛んに行われています。特に大手企業の場合にはさまざまな国や地域にまたがって仕事をしています。また,業界内でも合併や再編などが増えていることもあります。例えばQuebecor社です。

小笠原 日本では大手印刷会社の場合,自社内に開発部署をもち,サーバベースのシステムもなるべく自社で設計・開発して使用することがあります。同様にQuebecor社のような大きな会社は,エンジニアを抱えていると思うのですが,そのような大手企業が貴社の製品を利用している理由はどこにあるのでしょうか。

Mr.Scott 当社の場合には顧客の数が多いので,同じようなツールを開発するにしても,顧客の数で割ると単体当たりの開発費用は低くなります。確かに10年前のアメリカの業界では,それぞれの企業が自社内で開発してさまざまなシステムがあるとういう状況でしたが,収益性を厳密に管理しなければならなくなると,自社で開発して自社でサポートするよりも,購入するほうが良いということです。そもそも,ソフト開発の会社ではない印刷をメインに行っている会社が,開発部隊を抱えているのは非効率だということです。
なかでもサポートのところが要素になっていて,業界に起こっているさまざまな変化に目を光らせて,それをフォローしていくことは自社で行うよりも,専門のところに任せたほうが良いという判断です。
逆に言うと当社の製品はワークフローの中にあるいろいろな部分を,うまくつないで糊(のり)のような役割を果たすものなのです。当社の製品は大手企業では,これをツールとして使用してもらっていることがあります。
もともとさまざまなツールが製品として提供されており,カスタム化するためのツールもあります。従って,汎用的なニーズ対しては当社の製品で,そのほかはツールを使ってユーザが各社のニーズに従って社内のシステムをカスタム化するということです。

小笠原 それは(アドビのような)DTPのソフトウエアのベンダーが,軽視していたようなところに重要なニーズがあったということなのですか。

Mr.Scott 当社の製品の意味としては一つには,アドビ社,クォーク社などの各ソフトウエアを共通のワークフローにまとめ,複数の人が一緒に使えるようにすることです。ほとんどのDTPソフトのベンダーさんは個々のユーザに目が向きがちですが,当社はコラボレーションやグループに対しての視点をもっています。ほかにも,そのような視点をもったベンダーはいましたが,当社の製品が評価され,結果的に大きなシェアを取ることができました。それによって,さらなる改善もできたということがあります。

小笠原 それらについて分かりやすく具体的な例でご説明ください。

Mr.Scott レイアウトを行う仕事を例に取ります。仮にQuarkXpressを使用するとして,画像がたくさんある場合には,一つひとつにリンクを貼り直す必要があるとします。その作業は1枚当たり2〜5秒ほど掛かります。何千点もあるようなドキュメントやカタログであるならば,それなりに時間が掛かります。当社のツールにはリンクを一括で行うXTensionがありますので,すぐに処理でき,作業時間が短縮します。一つひとつを見れば,小さいな改善かもしれませんが,1件の仕事でみれば,それが30分,1時間という単位での短縮につながるので,長期的にはかなりの費用の節約になります。

後半へ
『プリンターズサークル1月号』より

2003/12/03 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会