未来を作る,ICタグとは?

2003年になってTVにもしばしば採り上げられたICタグ(RFIDタグが正式名称?)は,実はJRのSuicaなどすでに実用品でもあるので,そんなに未来技術とは考えられないかもしれないが、近年までワケのわからない単語であった「ユビキタス」の格好の例として,ありとあらゆるものへの応用が考えられている凄い技術だ(参考:トピック技術セミナー)。人間が文字を発明して、コミュニケーションや記録が変わったように,ICタグ(RFIDタグと呼ぶべきか?)によって人間とモノとの関係は全く新しくなるのかもしれない。

例えば忘れ物の傘が置いてあって、これは誰のか? と思った時に傘にICタグ(RFIDタグか?くどい?)が入っていれば,製品番号なり連絡先なりわかるかもしれない。しかしモノの所有者がわかることはプライバシーの侵害にも通じるので,このような応用からスタートすることはないと考えられるようになった。

似たことでは,食品にRFIDタグがついていて,冷蔵庫がそれを読み取るようになっていれば,冷蔵庫に何が入っているか自動認識できるし,それを外部からケイタイで確認することもできるようになる。家庭の冷蔵庫でそれが今必要かというと,そんなニーズは少ないだろうが,業務用ならば便利だろう。つまりRFIDタグは流通改善が最初の応用になろうとしている。だからRFIDタグの推進が,かつてバーコードのシステムを世に送り出した面々によって行われていることが理解できる。

Auto-IDとは?

Auto-IDとは,物体をコンピュータネットワークシステムによって認識するための個体自動認識システムのことである.
無線を用いて,物,商品,製品を認識するシステムを構築するには,一つの業界,企業の中でのみ採用するシステムでなく,ありとあらゆる業界,企業に運営,運用される業界横断システムが必要である.
またこのシステムは,アジア,米国,欧米だけでなく世界で一つの規格を目指している.
世界の統一規格化を目指すためには,導入コストは安くなければいけない.ありとあらゆる商品に付くために,一つのICタグが1万円もすれば,100円のチョコレートには付けられないことになる.タグの単価は安くなければいけないし,それを導入するにはコストも安くなくては普及しない.グローバルな展開のためには,各国の経済事情に差があるので,導入コストは安くなければいけない.
一方,導入したシステムの運用が難しくコストが掛かってしまうと普及・浸透はできないのでできるだけシステム管理は分かりやすく,扱いが簡単なものがいい.

Auto-IDセンターの誕生

このようなAuto-IDシステムの策定を目指して,1999年にマサチューセッツ工科大学内のある研究室が中心となってAuto-IDセンターが1999年に創設された.そこにP&G,ジレット,米国でバーコードを管理するUCC(Uniform Code Council),ウォルマート,ユニリーバなどが加わり,米国の流通における課題を解決しようという取り組みが始まった.
Auto-IDセンターは,1国のみに拠点を置く活動ではグローバルなサポートはできないということで,2000年に英国ケンブリッジ大学内に姉妹研究拠点を設立して,2001年にオーストラリアのアデレード大学内にAuto-IDセンター・オーストラリアを設立した.また2003年4月1日から,日本でも慶應大学湘南藤沢キャンパス内にAuto-IDセンター・ジャパンを設立して,同じ日付でスイス国内のザンクトガレン大学内にもAuto-IDセンターを設立した.2003年には,中国の復旦大学が参加した.

目的

Auto-ID Centerは,物流やサプライチェーンマネージメントの際の商品管理など,社会生活におけるあらゆるものに対するID付与とその利用に関して諸問題を解決する手法について国際的に共同で研究を行う機関である.様々な製品に対してRFIDを貼付し,生産から廃棄までの間,情報空間とともに取り扱う環境の実現を目指している.
Auto-IDラボラトリは,Auto-ID Centerの日本研究拠点として,MITなどの海外拠点と共同で研究にあたることになる.

ネットワーク技術の変遷

ひと昔前,ネットワークにつながっているのはデスクトップといわれるようなコンピュータであった.現在,携帯電話,テレビゲーム,テレビ,インターネットIPS,テレマティクスなどの組込型コンピュータがネットワークにつながってくる端末としてとらえられている.
これからの将来,ネットワークにつながっているものは,電気のスイッチのような機器,温度計に代表されるさまざまなセンサーや,例えばお菓子などのパッケージや包装紙が無線対応になりネットワークにつながっていくものではないかと考えている.近い将来,洋服,スーツにタグが付けられてネットワークに繋がってくる.

Auto-ID構想(ePC)

Auto-ID技術のうち,ePC(electronic product code)は固体を識別するためのID番号,番号体系になる.このePCは,概念的な番号を指し,これを記憶するのが,次にあるスマートタグ(RFIDタグ)といったコンピュータ・チップと無線通信のためのアンテナで構成されたタグになる.このタグにePCを記憶させて,さまざまな消費財,商品,製品にタグを貼りつける.タグが貼りつけられた製品,商品は,無線リーダの前を通過したときに,コンピュータ・システムによって物がはじめて認識される.
例えば入退室管理のように,タグがついた入館証をドアの近くのリーダが読み取ることで人物を識別するといったような具合である.

Auto-IDとバーコードの違い

Auto-IDとバーコードはどちらも標準規格であるが,Auto-IDは,すべての物体を個体認識することができる.
例えばお店で並んでいるペットボトルを例に挙げると,バーコードでは同じコードが割り振られているが,Auto-IDでは1本1本にすべて異なる番号を与えることによって,それぞれが違う物体であることを認識している.
次にAuto-IDは,人の手の介在が少ない.つまりバーコードであると,レジでそのバーコードをスキャナに向ける必要がある,間に障害物があってはいけないという制約や人の手を介在する作業があったが,無線タグではそのような問題は比較的少なくて,ある程度離れた距離から複数を同時に読み取ることができる.
また,Auto-IDはインターネット経由で情報取得し,拡張性がある.これはバーコードと違い,商品情報そのものをネットワーク上に置くので記憶できる情報量には事実上際限がない.バーコードのJANコード43bits強と,96bitsを基本とするAuto-IDのデータ量は容量にかなりの差がある.96bitsも将来は128bitsあるいはそれ以上というような拡張に耐えうる構造になっている.
このようなことが,Auto-IDとバーコードの仕組みそのものの違い,特性そのものの違いと言える.

RFIDタグ

EPCを記憶するタグ,ハードウエアとなるタグは,高価であってはならない.Auto-IDセンターでは,タグ一つ当たりのコストに関して,スポンサーにアンケートを取った.その結果,目標の金額は,タグ当たり5セントになれば採用することが可能であると,多くのスポンサー企業が答えた.Auto-IDセンターでは,5セントをターゲットプライス(目標価格)として,その規格の策定に臨んだ.
値段は,チップ,シリコンウエハーの大きさに比例して,小さければ小さいほどチップ自体は安くなる.そのかわり機能も制限されてくるので, まずチップにはIDのみを入れることを前提に考えている.そうすることで,5セントという価格実現が見えてきた.スポンサーのAlien Technologyでは,近い将来,一つのチップが1円という価格で販売することができるとコミットされている.

RFIDリーダ

タグを読み取るリーダも高価であってはならないので,目標価格は一つのリーダ当たり100〜200ドルを検討している.リーダ価格は,数ドルから高価なリーダまであるが,安くなくては普及できないと考えている.
また,各国で現在使用できる電波周波数帯というものが異なっている.米国で中心的に使われているのが915MHz帯,一般的にUHF帯といわれるものである.一方ヨーロッパでは,868MHz帯の一部限定解放と,13.56MHz帯の利用が中心となっている.日本では,UHF帯は使うことができないので,13.56MHzと2.45GHzの二つの周波数帯において利用を検討している.
このような周波数帯の違いを考慮すると,グローバルに展開するうえで,マルチ周波数対応のリーダやマルチ周波数対応のタグが必要となるなどさまざまな条件が出てくる.

固体認識番号

ePCそのものは四つのパートに分けることができる.製造業IDと製品IDは,現在広く使われているバーコードのメーカーIDと商品IDとほぼ同類のものである.その後ろのシリアル番号が一つ一つの商品を個体識別するための最終的なIDとなる.企業によって重要となるIDのカテゴリーは異なる.例えば,年間5種類の商品しか製造しないが,1億個生産するような企業にとって必要するIDの桁数は,製品IDの桁数ではなく,シリアル番号の桁数が必要となってくる.一方,1億種類の商品を作るが,それぞれ2個ずつしかつくらない企業にとっては,製品IDの桁数が多く必要で,シリアル番号は必要ない.このように各企業で必要されるIDの桁数の違いを合理的に吸収してID空間を無駄にしないために設けているのが,バージョン・ナンバーである.例えば,バージョン・ナンバーを1番から2番にすると,製品IDの桁数が2桁増えて,シリアル番号が2桁減るという運用が考えられている.

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