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DYNAGALAXYによるカタログ制作とクロスメディアへの活用

大日本印刷では,顧客のカタログ制作で培ったノウハウをベースに商品情報をいろいろなメディアに展開し,さらに販促活動を支援する仕組みとしてDYNAGALAXY(ダイナギャラクシ)を開発している。開発を担当している同社C&I事業部の今泉氏に,お話を伺った。

DYNAGALAXYとは

DYNAGALAXYは商品にまつわる文字データ,画像,音声,動画,図版等の情報を一元管理するデータベースと,クロスメディアへ展開していく機能から成り立っている。このシステム自体の販売もおこなっているし,このシステムをベースにお客様の販促業務を支援するサービスもおこなっている。サービスとは,カスタマイズ開発や,運用管理の代行,このシステムで管理されたデータを基にした販促物の制作である。

商品情報管理とコラボレーション環境

カタログ制作のプロセスは,その企業の中で大量の商品に対する幅広い情報,しかも新しい情報が一時期に1つの部署に集中することである。商品企画・開発から市場投入までの情報共有・プロセス管理がうまくいかないと,カタログ制作が混乱してしまう。これを支援するために,2つの仕組みを提供している。
1つは,商品情報をリアルタイムに共有できることである。柔軟にデータ構造を管理できる仕組みを持たせており,関係する商品や,商品を説明する素材データを合わせて管理しておくことができる。また情報が常に最新の状態を維持するための,メンテナンス機能も充実している。 もう1つが,商品のライフサイクルを,一元的に管理する仕組みを提供している。商品のステータスを管理し,さらにユーザーの権限に応じて商品情報がフィルタリングされる。必要な人に必要に応じた情報を見せることができる。

情報メンテナンスの仕組み

メーカーでカタログを制作する場合,新商品の撮影をおこなうと,簡易画像をデータベースにアップする。そうするとデータベースには新商品の写真がどんどん入る。商品を扱う部署では,写真のイメージを確認しながら商品情報テキストを入力,確認し,訂正するという作業が進んでいく。併せてデザイン編集ではアップされた写真と入力された商品情報をダウンロードして,カタログのデザインワークを始めることが出来る。簡易画像を,いち早くアップすることで,そのあとの作業がはかどるのである。データベースで管理されているので,あとから高精細画像が,登録されてくる。

承認の仕組み

カタログに掲載したり,Webに配信するためには,誰かがそれをコミットメントしなければいけない。誰が入力して,誰がそれにコミットメントを出すかといったような承認の流れも,このシステムでコントロールしている。
商品情報を構築するプロセスを,いくつかのステップとして設定をおこなう。そのステップの中で入力すべき項目はどこまでだとか,それに対して誰が入力して誰が確認をするという制御をすべて設定することができる。ユーザーは自分の権限に応じてログインすると,現在のステップと,自分がやるべきタスクが示される。その指示に応じて,入力したり確認したり,作業を進めることになる。商品情報データベースを作るプロセスのための,グループウェアとして働くものである。
こういう機能を組み合わせることでデータベース構築のプロセスを支援している。

カタログ制作を支援

メーカーが年に一度作る大型の総合カタログの場合,すべての商品データが整った後にメディアの制作が開始されることはない。出来るだけデータベースの完成度を上げてから,DTPの工程に進みたい。
カタログの場合,商品情報を表組形式で表現すること多い。その場合,表組みのイメージのまま入力することができるインターフェイスを提供している。また,カタログの各ページにどの商品を掲載するかを設定すると,画面上でシミュレーションできるツールがある。さらに,ページネーションした結果から目次,索引のデータを同時に作成していく機能や,一括してデータの更新をする機能がある。
これらのツールで,DTPに流す前に仕上がりイメージを確認していく。その結果をDTPの編集に用いるテキストデータ,素材データを出力し,DTPに流して組んでいけば良い。
これらの機能は,カタログ制作工程の合理化の他に,どの商品を掲載するか,また価格決定など販売戦略に関わる意志決定を,出来るだけ後にすることができるという効果がある。企業の販売業績や売上に直結する販促メディアを作ることができるという意味で,顧客から高く評価されている。

Webへの展開を支援

カタログを作る素材とWebを作るための素材は,トリミングの違い,フォーマットの違い,HTMLに書き換える必要があるなどの制約がある。そのため,Webの即時性だとか情報発信が迅速にできるメリットが活かしきれなかったり,他の媒体での掲載内容と整合がとれなくなることがある。そういう問題を解決するための仕組みがある。
1つは商品情報のステータス管理である。Webへの公開の可,不可とか,まだ紙カタログの制作中でフィックスしていないデータであるとか,ステータスが管理されており,どのデータはWebで使って良いか,配信するタイミングはどうか,も管理できるようになっている。
Webの画面デザインは,テンプレートを定義しておくことで,データベース内のテキストデータと素材データを,そのテンプレートに基づいてフォーマットして出していく。DYNAGALAXYからWebへの情報配信をするやり方は基本的に2つある。1つはWebからデータベースにアクセスして,ダイナミックに検索なり参照した画面を返すやり方と,もう1つはあるテンプレートに従ってHTML,素材,インデックスの情報をはき出して,それを公開用のWebサーバーに持って行って情報配信をする仕組みである。
イントラネットの中で,商品情報を共有する場合は,データベースを参照してダイナミックに結果を返すという方法が多い。
紙カタログを作るためのデータベースと,Web上で一般の方向けに情報公開するデータベースを持つ場合には,設備やDBを物理的に分けて,情報を受け渡しするほうが,セキュリティや処理能力の面で確実である。その場合,差分を送り込んでいく機能が有効で,送り込みの頻度やタイミングを調整することになる。

販促ツールへの展開

営業マンが提案書を作る仕組みもある。いくつか用意された物の中からテンプレートを選択し,商品を検索してそのテンプレートの中に商品を配置していく。商品の情報を確認したり,必要であれば価格を変えたり,商品情報を変更して,最終的にプリンタから出力すると,簡易的にパンフレットができる仕組みである。また,ハウスメーカーや住宅設備の業界向けに,間取図や住宅設備,内装品を組み合わせてプレゼンテーション用のデータを作成する仕組みもある。

(テキスト&グラフィックス研究会)

2003/12/11 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会