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情報産業は、技術モデルからビジネスモデルへ

まだ記憶に新しいITバブルの後遺症から立ち直れないとか、あるいはIT化の前進ができないでいる企業が日本には多い。紙の印刷技術の場合は、各社同じような技術を使っていても、設備投資額の違いでビジネスのスケールが違うとか、教育投資で差をつけるなどが、電算写植やスキャナの時代には行えた。ところがコンピュータがダウンサイズして、設備投資での差はなかなかできなくなってしまったことで、先への進み方がわからなくなったという人も多い。

設備競争に代わって、ITではいろんなことができることから、技術知識をベースにしたアイディア競争が盛んに行なわれるようになった。つまり技術的にはこういうことが可能になりますという技術先行のビジネスモデルが作られるようになった。しかしあまり技術アイディアへの依存が強すぎて現実離れしたサービスが増えてしまった。インターネットに申し込むとパソコンがタダとか、インターネット上で広告モデルの無料サービスなどが次々に生まれた時代があるが、大抵はダメになってしまった。

安直なアイディアではビジネスにならないので、ネット上のビジネスモデルに特許を認めて無理やりサイバービジネスを成長させようともしたが、ライセンスの維持には金がかかり、ヨチヨチ歩きのサイバービジネスが生む金と相殺してしまうこともみられた。 要するに社会的にはあまり効果のあるものではなかったように思う。これら過去を振り返ると、いろいろ愚かなこともしてきたので、IT不信が生まれたのかもしれない。

しかし将来に目を移して、そこから今日を見たならば、技術が可能にする未来の技術の王道にあるものは、紆余曲折を経ても、結局はそうなるといえるだろう。いちいち例を挙げないが過去からの歴史が必然的な進歩が起こることを証明している。だがビジネスの主体側にとっては紆余曲折にどう耐えるかが問題であるのだが、耐えたところが次世代の勝者になるのであって、勝者が決まった段階では後の会社は落穂ひろいしかなく、もう手遅れになるのである。

その意味で今日は重要である。なぜならネット上のビジネスで「モルタル」のビジネスを凌駕するような成長分野がいろいろ現れて、すでに勝者が見えかかっているからだ。つまり勝敗の分かれ目の段階をわれわれは目撃するなり立ち会うことができるわけで、これこそ紆余曲折問題の最大の教科書であり、紙を含めてメディアビジネスの今後の展開を考える上で注目していかなければならないものだ。

今日登場しつつある勝者は、当然IT技術面でも優れているが、リアルビジネスの場合と 同じように、顧客との信頼関係を築き、サービスの価値を認めてもらい、ブランドを築くというところにうまくITを利用しているのであって、IT技術を振り回しているのではない。ビジネスの成功要因には偶然も含まれるが、ビジネスそのものの戦略性とITの戦略性の双方をどのようにうまくコントロールして、今日の成功を引き出したかをよく観察しなければならない。

PAGE2004では「ITとパートナーシップで築くトータルサービス」をテーマに、紙のビジネスからクロスメディアのビジネスへと展開を考えている方々が、戦略を立てるヒントを得られるように、さまざまなプログラムを用意している。特に基調講演・コラボレーショントラックでは、漠然と語られるところのニューエコノミーや,情報サービス「新」市場の創出,クロスメディア型ビジネスモデルの発見,新しいマーケットが新しいビジネスモデルを求める…,などなどの実態を,このダイナミズムの渦中で活躍する当事者たちが語り合うことで,ビジネスモデルを構築するとはどのようなことなのかを浮き上がらせる。

またPAGE2004と同時開催される「DMビジネスショウ」ポスタルフォーラム2004とあわせて、印刷の中でもクロスメディアと関連が深く、印刷物自身も伸びが期待される販売促進・DM分野において、関連業種の方々と連携してどのようなビジネス戦略を立てるかのヒントも豊富に得られるように準備中である。

2004/01/06 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会