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クロスメディア・ビジネスのための6つの重点テーマ

クロスメディア・ビジネスを考えるためには、メディアそれぞれでの活用の具体像を知っておく方がよい。間違いなく、今後のクロスメディア・ビジネスの代表テーマとなる「電子書籍」「電子カタログ」「eラーニング」について、まず最初に考えてみる。
後半では、クロスメディア・ビジネスを支える3つのテーマ「ナレッジ管理」「コンテンツ管理」「ユーザビリティ」について考える。これまで当り前だった生産-流通の仕組みと、市場側のニーズが噛み合わなくなってきている中、これらは、エンドユーザー(市場)の立場に立って生産の仕組みを作り直すための重要な要素となる。


従来型の出版業は印刷業と同様、やはり出版にしかできない領域が急速に狭まってきている。辞書、実用書、情報誌はWeb、携帯メディアの中で新たな成熟をはじめている。
そして、読者も書籍、雑誌を唯一の読書メディアとは考えなくなってきている。
その流れに対応する形で「電子書籍」という括りによる、デバイス〜出版〜流通販売のビジネスの姿がはっきりとしだしてきた。
出版業界には、既存のコンテンツ資産と、編集ノウハウが蓄積されている。これらの経営資源を、今の読者のライフスタイルに合わせて有効活用しようと考えることは、それはそのままクロスメディア・ビジネスへの進出となる。その時印刷業は、これまでの紙の書籍の時と同様、出版業のパートナーとなるべきなのではないか……。
→「電子書籍」(PAGE2004コンファレンス C1)


モノを売るための手段(ツール)であるカタログは、顧客にとっては、場所を取らず、しかし見たいときに見れ、紙への印刷と同様の高品質であることがより好ましく、それは提供側にとっても、メリットの大きいもののはずである。
それが電子カタログへの期待のとっかかりであるが、これを実現することは、実は商品の上流から下流までの工程の中での「商品情報」全体の統合化と、マルチユース活用を導き出してくるのではないか。
電子カタログの制作環境を戦略的に構築することは、製造〜流通〜販促〜販売に至るバリューチェーンを生み、その中で商品情報データベースを共有しながら、さまざまなビジネスチャンスを生み出していくことにつながる。
チラシ、カタログ制作を行ってきた印刷業が、このクロスメディア型ビジネスモデルの「チェーン」の中に組み込まれることを指向をすることは、自然の流れなのではないだろうか。
→「電子カタログ」(PAGE2004コンファレンス C2)


eラーニングが教育の必須の形態のひとつとして、いよいよ日常化しはじめてきた。これまでさまざまな形態のeラーニングが開発されてきたが、それぞれふさわしい場面場面で、その形態が選択され定着しはじめている。
紙の教材とデジタルの教材を使い分けしていく形も定着してきている。
そして扱う教育内容も、学校教育、資格取得教育、企業研修などを中心にしながらも、社会の変化に伴った幅広いナレッジ(知識、ノウハウ)の習得にも今後活用されていくであろう。
そういう中で、さまざまな既存のコンテンツがeラーニング教材として活用できる可能性がでてくる。印刷業のクロスメディア・ビジネスの可能性として、既存のコンテンツ、すなわち印刷用データのマルチユース活用ということが充分に考えられるのである。
→「eラーニング」(PAGE2004コンファレンス C3)


リストラによる経営のスリム化により、業務に人的にも時間的にも余裕がなくなってきている。しかし一方でITによる技術革新は進み、ビジネスプロセス、ビジネスモデルが変革している中、整理されない疑問が社内、顧客の間に渦巻いている。
これは誰に聞いたらよいか分からないために、つい業務が滞ってしまう経験は、誰にでもあるだろう。疑問がその場で解消できないとき、そのちょっとした疑問にすぎないものが、結果としてそのビジネスチャンスを逃し、そのビジネスを潰してしまうことも多々あるはずである。
この問題が、「気兼ねする必要のない形」で解消された時、「もっと突っ込んで仕事をしたい」という意識が芽生えるはずである。それは、業務に新しい段階を産み落とす。
この仕組みを組み込むことのメリットを想像してみて欲しい。「疑問-回答」を社内、顧客との間で蓄積し、「共通理解」を形成しながらパートナーとなってゆく、その基点となるはずである。
従来の担当者が回答するのみのFAQや、フォーラムなどによるナレッジシステムとは決定的に違う、「困ったことに、すぐ回答が寄せられる」リアルタイム・コミュニケーション型の「FAQコミュニティ」が業務を劇的に変える力を持つのである。
→「ナレッジマネージメント」(PAGE2004コンファレンス C4)


蓄積された情報が、しかし様々なメディア形式で、個々ばらばらにストックされているとしたら、そんな非効率でもったいない事はないのである。そしてそれがみすみすビジネスを逃すことになるのである。
それを根本的に解決する仕組み、それがコンテンツマネージメントシステム(CMS)の考え方である。このCMSは物理的にコンテンツをワンソース・マルチユース活用しクロスメディアを実現するための「要」の仕組みとなる考え方である。
文字から画像・映像まで多元的な表現のできるWebというメディアの中にCMSを導入し、コンテンツを簡易に更新・管理できるようになった時、Webは、情報発信力の高い「真に戦略的なメディア」となる。
そのCMSの中で、使い勝手がよく、かつコストメリットの高い、オープンソース(無償)の仕組みも登場してきている。
→「コンテンツマネージメント」(PAGE2004コンファレンス C5)


今の企業社会の中では、Webサイトをもっていない、ということは与信に影響する時代になっている。自治体のサイト保有率が9割を超えたという話もある。
しかし、せっかくWebサイトを立ち上げたにも関わらず、社内外問わず誰も見にこないことがある。それはなぜなのか……。
迷う、重い、機種を選ぶ、逃げられない、強制的に飛ばされる、探せない、文字が読みにくい、それらすべてがわざわざそこを訪れたユーザーにとって大きなストレスとなる。これらを取り除くことで、ユーザーはようやく「見たいもの」「見せたいもの」を「見る体制」が整うのである。
しかしそのためには、それを設計し制作し運用することの全体が、同じ思想でなされなければならない。それはそのWebサイトがどういうメディアなのかというコンセプトを明確にすることである。
隣りと似たように作ったのに、こちらには人が来ない、ということの理由は、サービス、コンテンツの力を別にすれば、その思想の一貫性によるところが大きいのである。
→「ユーザビリティ」(PAGE2004コンファレンス C6)


以上の3+3の6つのテーマは、クロスメディアに進出するための、必須テーマと考えてよい。今回のPAGE2004コンファレンス「クロスメディアトラック」では、この6つのテーマを取り上げ、セッションを行なう。

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2004/01/14 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会