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商品画像の標準化の動き

印刷業がチラシやカタログなどに利用する,商品画像の業界標準データベース化という動きが出始めている。日用雑貨化粧品業界では,業界VANとしてEDI事業を手掛けている株式会社プラネットがある。ここでは今業界商品データベースを構築しているが,その中に3種類の画像を扱っており,印刷用商品画像も取り込み始めている。
このような動きは,業界全体の流通における最適化から出てきているが,そのため印刷業でも特に小売業のチラシなどを扱う上で,このような流れを意識しながらより効率的な提案をしていく必要が出てくる。

流通におけるIT活用には印刷業への期待も

流通業では,メーカー,卸,小売といった流れで商品を消費者まで効率良く届けようとIT活用を始めている。その中で,商流という物の受発注から納品・決済までのIT活用にEDIがある。プラネットは日用雑貨化粧品業界でこのようなEDI事業を行っている。
今までは受発注という商流の部分でのIT活用が進められてきているが,インターネットが出てきてから,商談や販売支援のコミュニケーションの部分でのIT活用を目指して「バイヤーズネット」というサービス展開を始めている。商談を進めるための仕組みや,棚割りを支援する部分だけではなく,チラシやPOPの作成を効率良くするための印刷用画像の支援サービスも始めている。このようなサービスを行うためのベースに業界標準データベースを構築し,その中にはEDIに利用される取引先データベース以外に商品データベースがある。

商品データベースの画像

プラネットでは商品データベースの構築の中で,まず画像の標準化を決めるところから始めている。最初に扱っているのは,棚割り画像という画像である。日用雑貨化粧品のメーカー,加工食品のメーカー,菓子のメーカーなどは,店頭の棚を再現するためのソフトに,棚割り画像という商品画像を提供する必要がある。データベースを提供する以前は,各社がデジタルカメラで商品の撮影を行い,これを切り抜き,商品のサイズぎりぎりでトリミングを行いながら棚割りソフトに登録していた。大変な時間が掛かるので棚割りにも準備期間として2カ月ぐらいは用意し,全部画像がそろってから実際の棚割りのシュミレーションを行う。
データベースで画像を管理し,データベースから画像を取って棚割りシステムに入れたいという要望から,棚割り画像の標準化を行ってきている。棚割り画像はJPEG画像で,長辺が400ピクセルまたは200ピクセルというフレームの形で,短辺は成り行きで,これを各メーカーが用意し商品データベースに登録するルールとなっている。日用雑貨化粧品の小売業界はもともと棚割りシステムが浸透しているので,データベースからデータを自動で取り込む仕組みを用意することで,自分で撮影せずに利用できる環境へシフトしていった。

また,小売業から「チラシ画像」EPS画像を同じようにデータベースから利用したいという要望があった。小売業でコストダウンのためEPS画像を自社で撮影せずデータベースから取得したり,デジタル画像を保管して再利用するといったことから出てきている。
またメーカーとしても,EPS画像をデータベースにしたい目的がある。メーカーの営業は,チラシを印刷するためにポジや現品を小売業に持って行く必要があった。商品を撮影してポジを作成する,また現品を用意するなど,しかも小売業は1社ではないため,大変なコストと手間が掛かる。また何回も持って行くことがあり大変であった。そこでこれを何とかやめたいという話からEPS画像をデータベースにしようとした。そのためプラネットでは,EPS画像については2002年から登録できるようにした。
このチラシ用のEPS画像にはガイドラインはあるが,標準化は検討中である。そのため早く標準を決める必要があるが,今はプラネット独自の基準で行っている。しかし,現状では課題も多い。チラシ画像は各メーカーが撮影しているため,メーカーにより撮影条件が違ってくる。チラシではメーカーの違う商品を並べることから,向きなどの撮影条件が違うのは困る。このへんは標準化で検討する課題である。
もう一つ小売業のニーズの中に,社内システムに登録するために「オリジナル画像」JPEG画像が必要で,これは背景とかサイズなどがばらばらである。このため個別に対応するのではなく,データベースに画像のサイズ,背景,余白を自由に変更できるシステムをWeb上に載せて,小売業の要望があればWebからサイズ,背景を設定をすることで,オリジナル画像がサーバ側で自動作成されダウンロードできるという仕組みを用意した。

全体最適化のためのインフラへの対応

印刷会社はなかなか画像インフラの認識がない。今の段階ではまだ日用雑貨化粧品業界くらいしか標準データベースはできておらず,加工食品などもまだこれからという段階である。またプラネットのEPS画像も1種類しかないので,隣のチェーン店と同じメーカーの同じ商品が同じ画像で載るのがよいかなども課題である。
印刷業のチラシを作る現状では,現品が来て撮影する一つの流れがあるので,そこにEPS画像をデータベースからダウンロードしチラシに載せるという例外的なフローが入るし,また今までの撮影の仕事が減るという印刷業の現状がある。
プラネットでは,理想型のためこれを乗り越えようとアプローチをしている。この背景には流通業全体の最適化という視点があり,画像を何度も撮る必要性や別途撮影することに対するコスト面などから,データベースを利用することで小売業のメリットの認識ができれば進むのではないかと考えている。
プラネットの商品データベースに登録されている画像は版権フリーであり,ダウンロードした画像は小売業,卸売業は自由に使える。ネットワークで画像を共有することは,極端に言えば撮影は1商品につき1回で済む。印刷会社がメーカーの商品を1回撮影すればネットで共有でき,撮影自体の標準を決めそれに合わせて撮影するという提案が欲しいというメーカーも増えてきている。
また小売業からはコストダウンだけでなく,納期短縮の提案も要求されてくる。今,小売業では土曜・日曜で商品を売り切りたいということから,間近で在庫量を把握しそれに合わせてチラシを出し在庫をなくしたいという要望があるそうだ。このような要望への対応には,作業を圧縮する必要があり,データベースを使った提案も必要である。日用雑貨化粧品だけでなく,ほかの画像を収集できる方法も,流通業全体で次のステップに進むためには必要で,そこに印刷業からの提案も可能である。
このような流通全体で最適化するような仕組みを目指して,プラネットのような商品データベースがいろいろな業界で進められようとしている。

印刷業への期待

プラネットでは,印刷業へ次のようなことを期待している。一つは,棚割り,外観,チラシ用などの画像の撮影,管理などを含め,メーカーへトータルな提案をすることがある。また卸業では取り扱い商品データベースとして,自社で商品カタログデータベースをもっているが,これがかなりハードなものであるため,これを構築支援するような提案がある。また小売業へはインフラ画像を利用することで,チラシ作成の短縮などローコストオペレーションの提案がある。全体最適化から見て,このようなことが期待されている。

(通信&メディア研究会)

出典:社団法人 日本印刷技術協会 機関誌 JAGAT info 2004年1月号

2004/01/25 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会