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CIP4/JDFがもたらす印刷の近未来(PAGE2004コンファレンスより)

drupa2004で主要テーマになるCIP4/JDFは,MISなど経営管理と生産機器の双方向接続によって,生産管理面では工場全体の最適化から、印刷取引全体の最適化までを目指すものである。CIP4のマーケティングを担当しているEFI社のJDF担当のシニアディレクターであるジョン・フェレマン氏をお呼びして、CIP4/JDFがもたらす印刷の近未来について伺った。氏はアドビ時代にはJDFの重要な要素になっているPJTF(ポータブルジョブチケットフォーマットの開発に携わっておられた。以下は2004年2月4日に開催されたPAGEコンファレンス・セッションA2の要約である。

■CIP4 JDFでもたらされる利益
-印刷におけるコンピュータ生産統合化の価値を認識-

印刷会社が収益を上げるために、いかにワークフローを変えていくのか。工場をCIM化するためにはどう対応するか、そしてどのような利点が得られるかについて解説する。

JDFによる統合が目指しているのは利益と生産性をいかに高めるかである。
現在の印刷産業は以前の労働集約型から資本集約型になっていて、事業コストについてはより厳しい見方が必要である。

CIP4/JDFは生産設備と管理システムの密な統合を可能にし、工程改善と利益をもたらすことができる。



■なぜ、CIM?
現状は、どこでコストがかかっているかも不明確であろう。
例えばコスト見積りについて、隠れているコストや項目のために過少見積りになり、思ったような利益が得られないこともある。

データ収集は手作業では、時間もかかるし不正確である。
より効率的に正確なデータをリアルタイムにつかむことによって、より早い判断ができるようになる。

また、工程の特徴として、プリプレスは人に頼るところが大きく、中央集権的ではなく、工程も多岐にわたるのでデータ収集にも手間取る。
印刷工程はプリプレスより人的要因は少ないが、より大きな原材料が掛かっている。
後加工は細かい工程が多いので、工程間の調和が必要である。



■コストを知ること
CIMでは「双方向の情報交換」が重要で、MISと連携して効率的な工程が実現していく。
コストを正確につかむことで、正しい見積もりや生産計画が立てられ、見積りと実際が近づいて、効率が上がる。

見積りや生産計画やワークフローを改善して、標準化やデータ交換がうまくいけば、変更にも迅速にフレキシブルに対応できる。

CIMを印刷に適応することには不確実なところが未だあるが、他産業ではCIM化が成功しているので、印刷でも成功させなければならない。




■印刷は製造業関連?
「その通り、印刷はあらゆる種類のユニークな特質があり、列挙したら暇が無いだろう。しかし基本的には印刷とは手順工程の積み重ねとみなすことである。」(Frank Cost RIT Center for Integrated Manufacturing Studies)




■CIMによる5億円のコスト削減の可能性
年商10億円規模の中規模印刷会社において、5年間で楽観的に見て5億円、少なく見ても1.6億円のコスト削減が可能である。

■工程の自動化
CIMは、企画、見積、営業、プリプレス、印刷、配送納品の各工程に適応できるが、その利点を得るには工程の統合化と自動化を図ることである。
統合化することで、在庫コストは下がり、生産性と収益性が上がってくる。



■二つの全く違う流れ
印刷会社には2つのフローがあり、一つは生産に関するもの、もう一つは経営管理に関するものである。
そして、自動化は各々のフローの中で、またフロー間においても行わなければならない。

■MISからコンテンツ・プリプレスへ
データ交換は手作業が現状であり、正確なデータがつかめず、データも工程の始めか終わりにつかんでいるので、十分な生産性改善になっていない。MIS、プリプレス、コンテンツを結ぶ部分について、特にプリプレスはデータがつかみ難い。ここが正確につかめるかで、経営の成否が決まってくる。つまりプリプレスの「ブラックホール」を取り除かなければならない。

また、客へのベストサービスとともに、変更(直し)に掛かるコストを削減することによって、効率を上げる。また、用紙を含む消耗品の在庫のリアルタイムな把握も必要である。




●顧客満足(5年間で1180万〜5880万円)
重要なのは顧客満足で、維持のためにサービス改善である。顧客がインターネットで最新情報が分かり、WEBでも迅速な対応をできるようにしておくことが改善につながる、また、顧客の心配事に即応して、顧客と良い関係を維持しておく。客を無くすと、新規開拓のコストまで掛かる。

5件の顧客を維持できれば、5年間で1180万〜5880万円のコスト削減効果になる。




●生産性を増大(5年間で5000万〜1.5億円)
既存設備の有効活用が重要で、予定や仕事の割りふりを自動化で実現して、不必要な機械停止を削減する。
これによって工場生産性を全体的に 2-6% 改善でき、稼働率や減価償却を改善することも可能である。
これによって、5年で5000万〜1.5億円のコスト削減になる。

●生産へのMIS/JDF対応
MIS活用で、保管コストや支払利息の削減も図れ、MISと生産機を結ぶことでいろいろなムダをなくすことができる。




●無駄な印刷の削減(損紙の印刷など:5年間で4000万〜1億円以上)
MIS から工場への指示データの発信や生産機の実稼動データ返信などの活用で、無駄な印刷を1-3% 減少する。これによって、5年間で4000万〜1億円以上のコスト削減効果になる(紙、インキ、人件費、時間など)。

●在庫削減(5年間で1000万〜2700万円)
在庫把握の精度を向上し、ジャストインタイム購買によって在庫コストが 5-15% 減少できる。管理の改善で在庫削減により、保管コストや支払利息も削減するので、5年間で1000万〜2700万円のコスト削減効果が上がる。



●オンラインウエブ受注や発注(5年間で、5400万〜1.5億円)
受発注をWebでおこなうことで、発注作業が削減でき、連絡ミスや注文間違いによるムダが25〜75%削減でき、5年で1900万〜5700万円の削減効果がある。
また工場内では、ネットワーク化された業務情報によって、進捗の問合せだけで 1-3 時間/週/人の削減が可能で、工場に電話で問い合わせたり行くムダの削減ができる。
これによって5年間で、5400万〜1.5億円のコスト削減効果がある。




●請求業務の改善(5年間で460万〜1390万円)
代金回収の改善では2-6 日間の代金回収期間が短縮でき、5年で受取金利相当の460万〜1390万円の削減効果がある。伝票発行作業もかなり削減できる。

●投資対効果分析(全体:ROIは5年間で600%〜2000%以上)
以上のようなコスト削減効果を合計すると、全体としては5年で投資対効果(ROI)という観点からは、JDFやCIMへの投入にかかったコストの600%〜2000%以上の利益が上がられるという考えである。

数字が大きいと見られるが、大きな人件費や設備コストが掛かっている現状からは、少し自動化することで、大きな効果が得られる。




■CIMのためのJDFの役割りと標準化
JDF は要求を満たす技術的な力があり、CIP の開発努力でJDFは広く利用可能になる。
JDFはCIMを印刷会社にとってシステムの統合化を図るのに優れておりオープンな規格である。

もう一つは、MISと生産機を如何に統合していくかであり、また紙伝票のときと同様にシステムや環境が変われば、ジョブチケットの標準も変わっていかなければならない。

異なるメーカーのシステムで、いかに統合して行くかであるが、ジョブチケットがフォーマットもジョブチケットもともに標準化されている必要がある。そして異機種であっても対応できるジョブチケットがCIP4で策定されたJDFである。




■課題と解決
いかにして MIS を生産環境に統合し得るか ?
これについて、ワークフローを通してデータが保たれるためにはジョブチケットはデータ検索や蓄積に向く構造でなければならない。

異なるベンダーの製品があるとき、いかにして、プロセスコントロールを統合するのか?
これについて、JDF は既知の内容で保証された構造であると明記しているが、ジョブチケットはフォーマットも記述も標準でなければならない。





■工程の端から端までJDFで
・JDFジョブチケットは企画から完成まで仕事と共に流れる。
・JDF はワークフローの各工程から必要なデータを取得する。
・JDF によって会計システムのための整理された業務情報を生成する。
JDFでこのような流れを作ることになるが、MISと生産の統合は未だ進んでいない課題がある。








■まとめ、今、何ができるのか?
JDFは顧客、ベンダー双方から期待されているので、速いスピードで普及して行くだろう。しかし利用するには、元原稿がデジタル化していることが必要であるが、原稿のフォーマットは既にPostScript、PDF、TIFF/ITなどで標準化されている。

MIS担当者にとっては、JDFインターフェースは良く整備されているので、ワークセンターが(ナレッジベースなどとして)プロセスデータを蓄積するのに使いやすいようになっている。

そして、今すべきことは次のものである。
(1)コンテンツ管理と営業管理を統合するソリューションへの投資。
(2)業界標準による社内インフラの形成
(3)コンテンツのデジタル化
(4)インターネットに対抗した経営
(5)洗練され完全な生産の標準化により デジタルスマートファクトリーを管理



(EFI Senior Director Server Products John Felleman)
*EFI社はCIP4のマーケティングを会社として担当

2004/02/10 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会