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社内ネットインフラの再構築を考えるポイントは

今印刷業務のIT化を進めるためネットワークインフラの再検討をしている印刷会社も多いと思われる。昨年のIGAS展くらいから日本でもCIP4/JDFの声を多く聞くようになっているが、この背景には印刷業務をネットワーク上で流れることが前提にもなっている。

PAGEコンファレンスで取り上げたD5「業務からみた社内ネットインフラの向上」セッションでは、印刷会社が考えるインフラの背景として次の3つの視点で取り上げた。パネラーには、株式会社ドリーム・トレイン・インターネットマネージャーの山下多佳志氏、株式会社ビジュアル・プロセッシング・ジャパン代表取締役社長の三村博明氏、町田印刷株式会社システム室長の並木勝美氏の3名に参加頂いた。

セッションの視点

制作環境をどうするか
制作コラボレーションという視点で、今まで社内だけで閉じていた流れを、素材の入稿、デザイン情報の共有、外注とのデジタルデータの交換、リモートプルーフ、CTPへの出力と言ったデジタルワークフローをどう見直しインフラ整備を行うか。
管理環境をどうするのか
管理情報のデジタル化で関連部門や関連企業間で情報共有を行うにはそうするか。
顧客とのビジネス環境をどうするか
制作情報の共有(進行、校正、過去のデジタルアセットなど)から受発注のデジタル化までをどうするのか。

このような視点で検討した場合、今見直しに必要なキーワード4つとそれぞれの課題は次のように考えられる。
ブロードバンドネットワークの活用と課題(安くて早いネットワーク)
・低価格で高速で運用保守が簡単なのは
・ADSLは使えるのか?(上りと下りで速度が違う、例 下り8M、上り1M)
・光はすぐ使える環境になるのか(ケーブルが来ているか)
・インターネットはセキュリティが無い
セキュリティ対策(データを改竄されたり盗まれたりしない)
・セキュリティのコストを検討する ・セキュリティのための技術があるか、また運用コストは
・インターネットならばインターネットVPNを使う
データ管理(関係する人以外はアクセスさせない)
・ユーザ管理、アクセス制御、デジタルワークフロー
・情報共有、制作コラボレーションの中心
・プライバシーマークとの関係も
・運用コスト
運用コストをどう下げるか
・社内要員(人件費と技術力)
・保守費用
・アウトソーシング
・OSを含めてアプリケーションの動作環境(費用が変わってくる)
これらを考えながら社内インフラ整備を考える必要がある。

制作環境がネットワーク上にシフト

DTPサーボサーバの運用をみながら、今実際にどのような利用が増えてきているのかを、導入した企業の利用例でみてみると、実際には3割くらいが外部にデータ公開をしていた。これは制作する流れの中に外部が関わってきており、そして外部と何らかの理由で情報共有するようになってきているかがある。
情報がデジタル化されブロードバンドネットワークを活用することで、生産性の向上もあるがより情報としての付加価値が求められるようになってきていることがある。

データ公開サービスを利益として点でみてみると、リモートプルーフでは制作サイクルの短縮、営業活動の効率化、さらには顧客の囲い込みなどができる。これは顧客先にプリント装置を置きそこにデータを送ってプリントしてしまう。最終校正には使えないが初稿や再校などに利用することで営業経費を減らしスピードを上げるという利用が多い。
コンテンツデリバリということでは、制作環境を統合することで、入稿、デザイン情報の共有、顧客からの利用などが可能になり、入出稿サイクルを短縮することができる。
Webを利用したサービスへの活用としては、Eカタログへの展開やeコマースとの連携、コンテンツ販売など新規ビジネスへの糸口として利用が可能になる。
導入ユーザではこのような利用が多いが、運用するにはセキュアなネットワーク運用が前提となってくる。認証パスワード、ユーザ単位での利用の制限、VLANやVPNの構築が必要である。

セキュリティ対策のポイントとしては次のような点がある。利用回線の選択、VPNをどうするかである。オープンかクローズか。認証パスワードの運用方法。ユーザの利用制限。管理者のログ管理。ファイヤウォールの構築とオーバーヘッド。これらを検討しながら導入を進めている。
基本的にはVPN装置とファイヤウォールを組み合わせて構築する。セキュリティはリスク対策でとユーザフレンドリィは使い勝手を良くし利益につながるわけでこの両方を考えながらシステム構築及び運用を行う必要がある。


インタネットVPN導入の基本パターン

従来の専用線で構築した社内ネットワークを、昨今普及が進むブロードバンド回線を利用した新たなネットワークサービスが通信事業者から数多く出ていている。インターネットVPNサービスはその一つでカプセリング、暗号化技術を用いた安易かつ低価格に導入できる注目のサービスである。新しいサービスであるので、採用するにあたり留意しておかなければならない点がある。
形態及び展開には、3つの形が考えられる。キャリアにサービスを任せた形で運用する。システムインテグレータに構築や保守を依頼する。自社構築、自社運用にするがある。

接続する形にも、4つの種類がある。まず1拠点を中心にそこと他の拠点を結ぶスター型は、本社を中心に支社から本社にアクセスできるようにする形態である。この場合には、通信の管理がセンターで一元管理され、各拠点の負担が軽減されるが、逆にセンター側の障害ですべてが止まったり、またセンターの機器に負荷がかかる。対策にはセンター側に信頼性の高い回線や装置、また低価格なバックアップ回線を考えるなどがある。

次にハブアンドスポーク型は、拠点とセンターの通信もできるがそれ以外に各拠点間でも通信できるように、センターの機器をハブのようにしてそこを経由して拠点間も通信できるようにする。

これはセンターで通信を一元管理できるのと、拠点間の通信量もセンターで把握できるなどの長所があるが、やはりこれもスター型と同じでセンター側の障害ですべて通信が止まる。

これに対してセンター側にすべてを集中させないで拠点間でも直接通信ができるよに設定するメッシュ型の接続がある。これは各拠点の装置同士が勝手に接続できるので、どこかが故障していてもそれ以外は通信できる。この接続は一見便利であるが、課題は拠点の追加や削除に対して常に全装置の設定を変える必要があるので、保守運用面で負荷が高い。また各拠点の管理の負担も増えるので、体制作りが必要である。
これ以外にリモートアクセスをサポートする接続がある。携帯などから接続して社内情報が参照できるようにする。在宅や営業が外から利用する形態である。
このような特長を考えながら、インターネットVPNの導入を検討する必要がある。


印刷業務に必要なインフラを考え上で

印刷業務を考えたネットワークには次のような視点が必要になる。コンピュータの基幹業務処理や生産管理処理。DTPやCTPシステムとのデータ連携。取引先とのインターネットによる作業連携。各種作業情報その他関連情報の共有。業務の効率化。これらをどうするのかを考えながらメールやグループウェア、データベースシステム、インターネットサービスを導入しシステム化を進めるかがある。

考えるポイントは、通信速度は遅くないか、セキュリティやウイルスの問題、通信コストの問題、取引先とのデータ連携をどうするかなどがある。また最近クルーズアップされた問題として、機密保持やプライバシー保護、著作権管理などがある。さらに今直面する問題として、低単価による売上低下、短納期、品質管理、電子入札などへの対応なだあり、手間もコストもかけられない現実がある。
このため作業、システムの相対的な見直しが必要になっている。そのためネットワークだけでなく、製造に関わる生産基盤全体を考える必要があり、管理業務と作業を見直し、そして情報ネットワークと作業の連携を見直す。これには入稿から印刷までの作業の流れの中で作業の管理や情報の管理も含め、何を管理し情報を流すのかを考える必要がある。

作業の見直しとネットワークインフラの見直しを同時に考えていくことが必要で、その結果、情報システムを中心としたデジタルワークフローの構築とデジタルデータの流れにあったネットワークの構築となってくる。顧客や関連企業との間ではインターネットVPNをどう組み、またインターネットサービスになる機能はWebホスティングで実現するのかなどが解決方法として出てくる。そしてここでのポイントはTCO削減を考えたシステム化であり、投資や運用保守も含めていかにコストを下げて、効率を上げて行くかが必要になる。

印刷企業では、特にシステムの保守や改訂作業のために多くの人材や費用を投入できない。そのためにはTCO削減を目指したシステム化が必要であり、その上で先を考えた投資が必要になる。
このためには、やり直しが無いように、しかも保守運用にコストがかからないようにネットワークインフラだけでなく、アプリケーションのためのインフラでありデジタルワークフローのためのインフラであることで、2度手間が無く再利用も可能にできる視点が不可欠である。


MISページ
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2004/02/18 00:00:00


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