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デジタル一眼レフカメラのポリシー

デジタルカメラと画像生成の進化

従来のプリプレス工程と違い,デジタルカメラではカメラ内部でRGBデータまでを作成することになる。したがって,カメラ内部の偽色やエッジ処理などの画像生成のしくみは,出力データを扱うカメラマンや製版・印刷会社にとって重要である。
PAGE2004グラフィックトラック【B4】では,デジタルカメラの画像生成についての特性や今後の方向性について各メーカー第一線の開発者である
 ラボ・アルファチャンネル 伊藤氏(モデレータ)
 オリンパス株式会社 樋口氏
 キヤノン株式会社 杉森氏
 株式会社ニコン 芝崎氏
 富士写真フイルム株式会社 竹村氏
からそれぞれお話を伺った。

デジタルカメラとワークフロー

 デジタルカメラデータの活用によって,製版・印刷会社のワークフローも変わっている。従来,ドラムスキャナで色補正(演色)や強力なアンシャープマスクなど,高度な処理が施される場合が多かった。しかし,新たなワークフローでは,その高度な処理部分がなくなったため,色補正やシャープネスの処理方法が変わっている。
 デジタルカメラでは,スキャナオペレータ並みの内部処理ができるものは無い。また,アンシャープマスクレベルのシャープネスは期待できない。よって,デジタルカメラ出力データの画質への不満があるのも事実である。

 デジタルカメラの基本カラーは,Exif(DCF) でsRGBが原則である。その色域はインキに比べやや狭い。しかし,印刷に有効なAdobeRGBを選択可能なデジタル一眼レフも数多く登場している。それらの中には,ユーザの利便性を考え独自にプロファイルを組み込んでいるメーカーもある。また,新しいExifではsRGB以外のカラースペースも許容されるようになってきた。

 印刷の要求とデジタルカメラの性質を考えた場合,印刷では強い演色とシャープネスが必要である。モニタは,弱い演色とシャープネスであり,印刷のための色再現性とモニタのための色再現性はマッチしない。よって,そのままでは利用できないので必ず後処理が必要となる。

フィルムとデジタルの違い

 リバーサルフィルムと言っても数十種類以上製品化され,独自に進化している。例えば従来,赤,緑,青に感じる層だけであったが,シアンに感じる層や緑に感じる層など多数登場した。
 銀塩カメラを使うときには,リバーサルかネガにするか,白黒にするか,あるいはISO感度100,400,800,1600の中から選択する。ISO感度100の中でもいろいろな種類がある。デジタルカメラでは,このようなことをカメラ内部またはRAW現像の中でできるので非常に便利である。

 デジタルカメラは,高速連写やフィルムを入れ替えなくても,ISO感度200から1600まで撮れるなど,ユーザに撮る喜びを提供し,撮影のチャンスを拡大してもらという趣旨で開発してきた。
 フィルムとデジタルの色評価は,マクベスだけで比較している分にはそう大きな差はない。色再現も出そうと思えば近い色が出る。問題は,どのフィルムにどのように合わせるのか,どこを狙ってカメラの設計をするかということが多様化していることである。

デジタル一眼レフカメラのポリシー

 デジタル一眼画像設計のポリシーは,プロから初心者まで,幅広いユーザ層をカバーし,撮影者の想いを忠実に再現する画作りにある。同じデジタルカメラでも画質設定によって得られる画像データは大きく異なる。

 例えば,エッジ処理については,画像の使われ方が分からない段階で,安易に処理しない方向にしている。また,ノイズ処理は,解像度を下げずに偽色低減処理を行う技術が重要である。したがって,可能な限り色の階調性を残す画像処理を追求している。
 得られる豊かなセンサー情報から,素材性を活かした画像設計を施し,腰の強い画像すなわちレタッチしても劣化しない画像生成を目指している。

デジタルカメラの今後

 デジタル一眼レフカメラの目指す絵作りは,カラー傾向が選択可能になり,嗜好と用途の多様さに対応する機能の充実である。画質設計思想は,各メーカーの志向や想定ユーザのレンジごとに変わっていく可能性がある。
 また,デジタルカメラの画素数は次第に増している。400万,500万画素は当たり前になって,民生用でもそれ以上の製品がある。そこで,画素数は一体どの程度まで行くのかという実験も試みている。

 デジタルカメラの出力データはよりきれいな画像処理を目指している。細部の色再現と偽色はトレードオフであるが,それを高いレベルで両立する画像処理の実現を追求する。しかし,撮影後の補正量は小さくなる傾向がある。
 業務用で使用されるデジタルカメラの画像処理は,高速化していく現像アプリケーションが主流になり,スループットの向上とレタッチソフトとの連携を高める。
 レンズの光学特性を有効に使用し,写真としての表現力も豊かにする。また,フィルムでは不可能であった表現もデジタルカメラでは実現できる可能性がある。

2004/02/28 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会