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クリエイティブな作業以外は自動化できる

クロスメディア時代において,Webは外せないメディアになった。印刷物と違い,画像やテキストをすぐアップロードしてパブリッシュできるのがWebの利点だが,今,毎日のようにパブリッシュされる大量のコンテンツをいかに効率的に管理・運用し,表現力豊かなメディアとして位置付けられるかどうかが問われている。
PAGE2004【C5】コンテンツ管理の重要性セッションでは,Webコンテンツ管理システムの技術の紹介と利用例を取り上げながら,効率的なWebサイトの運営について考えた。

■Webサイトの更新を解決■
ブレイクビーンズ・インコーポレイテッド プレジデント・CEO 桜井通開氏

CMS(コンテンツ管理システム)は,簡単に言えば,Webサイトの更新を解決するソリューションである。Webの更新はいろいろ大変だと思われるが,CMSを導入すればアップロード,公開はシステム的に可能なのでそれほど大変ではない。
サイトのCMS度チェックでは,ブラウザでサイトにアクセスできるくらいの人が更新できるようであれば,そのサイトはCMSになっていると言える。
CMSで言われるコンテンツとは大容量の画像や動画のようなファイルではなくWebコンテンツを指す。
世の中には様々なCMSがあり次のような「アルファベットスープ」と呼ばれるものがある。
〔広義のCMS〕
・WCM - Web Content Management⇒狭義のCMS
・DM - Document Managament
・DAM - Digital Asset management
・LCM - Learning Content Management
・ECM - Enterprise Content Managament
CMSと言われる製品は大きく3つに分けることができる。
□商用CMS
ハイエンドなものにVignette,Interwoven,Documentum,Stellent Fatwire,Rhythmyx,MS Content Management Server CityDesk,Manillaがあり,数百万からインテグレーション費込みで数億円するものである。
□自作CMS
今,主流のひとつになっているものは,自分たちで必要なものを組み上げるものがある。
□オープンソース
第3の波と言われ,注目されているオープンソースCMSには,Zope, Midgard, OpenCms, Bricolage, Tikiがある。

商用CMSはコストが高い,変更しにくい,ややこしいという面を持ち,自前CMSは,属人的,メンテが困難,変更しにくい側面がある。
各種オープンソースCMS連合(OSCOM)のPaul Everittが「もはや,自分でWebサーバやデータベース,ワードプロセッサを作ろうという人はいない」と言っているが,これは「CMSを自分で作るべきではない」と暗に唱えている。
オープンソースCMS活用を成功させるコツは主体性,興味を持ち,すべて人任せにしないことである。「魔法の杖」はないがうまく活用することで「無駄なコストと手間を省く」ことができるのである。

■沿線情報発信の新たな形■
阪急電鉄株式会社 グループ政策推進室 @Hankyu編集チーム 編集長 藤井裕志氏

沿線情報を一般の方から発信するという形を取っている。これまでは紙メディアで宝塚,大阪,京都,神戸エリアに『TOKK』という無料情報誌を月2回発行してきた。しかし印刷物を作るということは企画,編集,印刷という作業が発生する。また,地元住民でない人間が記事を作るため地元に密着しきれず,発信エリアも自社線内に限られてしまっていた。
そこで沿線を1番よく知るのは実際に沿線に住んでいるお客様であるという考え方から,ネットの利点を活かした発信方法を模索したのが「バーチャル駅長室」の発進点である。

バーチャル駅長室

2000年4月に阪急電鉄のホームページをリニューアルしたときにバーチャル駅長室を立ち上げようということになり,同年の7月から「バーチャル駅長室」をスタートさせた。情報発信のエリアを全84駅(2003年3月は85駅)に分け,10名のバーチャル駅長が情報発信を担当する。バーチャル駅長は,一般のお客様から応募,選出され任期は1年である。任務としては貸与するデジタルカメラで撮影した画像と日誌形式で沿線情報を紹介する。一般のお客様とのコミュニケーションスペースとしてグルメ情報・スポット情報の投稿スペースを設置した。
このように一般の人でも記事の公開や画像のアップロードなどがスムーズに行えるようにバーチャル駅長室のコンテンツ管理システムには「Zope」を採用した。コンテンツは阪急電鉄社内の承認なしに,バーチャル駅長が書いた文章,撮影した画像がそのまま公開される仕組みになっている。そのため人選はかなり重点をおいて慎重に行い,名刺の作成など取材活動や教育などのフォローにも気を配った。おかげでいまのところ問題は起こっていない。
WebアプリケーションにZopeを採用したことで開発期間が短縮され,運用作業が簡略化された。一方デザイン部門との連携が思ったより難しいなど問題点もある。

■開発期間削減+コストダウンを狙ったシステム構築手法■
株式会社リクルート FIT1部戦略グループ 米里仁孝

Webサイト開発における課題と手段

リクルートでは情報サイトである「ISIZE」を自社で開発し,運営している。ネットの成熟に伴うシステム利用者の増加や社会的責任の増大に伴う高品質の必要性,商品機能の追加など様々な要因でシステムは複雑化・肥大化しシステム関連のコストが増大傾向にある。
システム規模や実装機能に制約はあるが,短納期・低コストのシステムでは機動力重視型開発を目的としている。具体的にはビジネスの立ち上げ段階における試行錯誤をサポートし,既存ビジネスのフィジビリティ機能,追加商品をスピーディにサポートするといったことである。
そこでアプリケーション開発において,開発生産性の向上を計るため,開発支援の仕組みを持った開発ツール(Zope)を利用することになった。Zopeを採用したポイントは,コストのかからないオープンソースだからである。

オープンソース利用時のポイント

オープンソースを採用することはメーカーに頼れず,責任の所在が不透明になってしまう欠点がある。ただし商用プロダクトを採用し,保守契約を結んだ場合でも問題を解決できないケースはあり得る。そういった不具合発生時に運表でのカバーやアプリケーション機能による回避が必要となるリスクを覚悟する必要がある。
オープンソースのメリットとしてソースコードの解析を行うことが可能であり,さらに独自にソースコードのカスタマイズを行うことが可能である。

■でじたるマンガサイト「まんがたうん」について■
毎日新聞社 総合メディア事業局 サイバー編集部兼まんがたうん編集長 猪狩淳一氏

毎日新聞社はデジタルマンガの発進拠点を目指し,2003年4月よりインターネットでまんがを発表。販売,読者と作家の交流などができるWebサイト「まんがたうん」を開設した。現在は36の作家・グループがオリジナルのデジタルマンガを公開している。
まんがたうんは再考1日11万6000PVで2004年1月現在,約1200人の会員を保持している。サイトの主な内容は作者紹介付きの作品閲覧,イラストも可能な感想投稿,投稿されたまんがや画像の公開,販売などである。販売については2003年10月末より東芝が開発したデジタルコンテンツの著作権保護システム「マルチキュービック」を利用してマンガなどデジタルコンテンツの実証実験を開始した。

豊かな表現のために

まんが,ニュース,読者からの感想などさまざまなコンテンツが日々蓄積され,効率的な運用をするためにはコンテンツマネジメントが必要だと感じる。作品そのもの,付帯するデータ,作家のデータ,それに対する読者の感想のようなコンテンツは相互に関連しており,データベース化によって一体的に管理することができる。表現技術の進化によりHTMLだけでなく,Webでのさまざまな表現技術が提案されているが,すべてデータベースとの連携による表現が中心である。次々と現れる表現に対応するためにもコンテンツマネジメントとデータベース化は必須と言える。

2004/03/03 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会