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印刷色再現の新たなチャレンジ

高品質のデジタルカメラの普及に伴い,AdobeRGBなどの広い色域の画像データが流通するようになった。また,6色印刷等により色域拡大を実現しているインクジェットプリンタなど,プロセスカラー印刷を超えるデジタルカラーが広がっている。これからの印刷は,より広い色域を求めてどんな技術・手法にチャレンジするのか。
PAGE2004コンファレンス・グラフィックストラック【B1】セッションでは「印刷色再現の新たなチャレンジ」をテーマに
 ■コニカミノルタテクノロジーセンター 洪博哲氏
 ■セイコーエプソン 荒井佳文氏
 ■サカタインクス 建入実氏
からお話を伺った。

3色を超える色再現

色材を付加するメリットとして,分光再現,高彩度部の色域拡大があるが,デメリットもある。色材の組合せによりキャラクタライゼーションが複雑になること,色材の量に唯一解がないこと,色材量の上限設定が必要,不安定性の増大などである。
Hifiプリンタ(6-7色)を想定し色材量を決定するには,全色域を3次元色立体の組合せとする分割法を基にして,色材量制限関数,「Max:Hifiカラー,Min:Hifiカラー」をコントロールする方法がある。またHifiカラーの色材は,重要色相で2次色付近の高彩度色を選択することが基本である。Hifiプリンタ+分割法の特徴は,Black/Hifi色の混ぜ方が選択できること,色材量の上限設定,色材数を拡張出来ることであり,プリンタ色域を拡大する有力な方法である。

多原色化による高画質化技術 −インクジェットプリンタ,PX-G900で採用されている技術−

PX-G900では,写真並みの長期保存性を実現するために耐オゾン性,耐光性を向上させた顔料インクを採用した。また通常の顔料インクでは光沢性に劣るため,高光沢性の実現のための顔料のカプセル化技術を改良した。そして,sRGB,AdobeRGBなどの色再現域を確保するために多原色化としてCMYK+Red+Blueという6色を採用した。
sRGB とJapan Colorのガモットを比較すると,Japan ColorはsRGBに対して暗部のBlue方向が狭くなっており,再現性が良くない。またエプソンのPM-980(7色)でも,暗部のBlue方向,暗部のRed方向が狭くなっている。このような問題を克服するためにPX-G900ではRed,Blueを追加した。PX-G900では,高彩度のRed,Blueを採用しており,sRGBと比較しても暗部のRed,Blueが広くなっている。
内部の分版処理では,赤が多い場合にはRedをより多く使う,青が多い場合にはBlueを多く使う設計になっている。

多原色化により生じる技術課題

プリンタの入力値がRGBでもLabでも3チャネルで256の3乗である。6色に出力するには,256の6乗であり,1に対して1670万通りの選択肢があることになってしまう。その中で最適な分版方法として,階調性の劣化を避ける方法と,光源依存性を減少する方法がある。
実際の入力値がRGBだった場合,CMYに変換し,CMY値からGCRのような方法でKの成分を発生させる。Red,Blueは,単純化して言うと,シアンマゼンタからBlueを発生させ,イエローマゼンタからRedを発生させるることができる。ただし,そのままでは階調性が劣化し,トーンジャンプが多発するので,エプソンではある技術で階調性を向上させている。
カラーインコンスタンシーとは,1つの出力物をある光源と別の光源で見たときに違いが出ることである。反射率の形状が違っていることで起こるため,反射率の形状を制御する技術が必要である。各光源ごとに評価をしてチェックし,対処している。

3次元で見る色彩領域と高品質印刷の可能性

オフセット印刷でも多色印刷が注目されるようになってきた。対マーケットとしては,差別化,技術アピールのため,また印刷環境の変化として,デジタルカメラの普及,CTPによる網点再現性の向上,8色印刷機の普及による。
印刷業界でもデジタルカメラからの入稿が増え,AdobeRGBのような広い色再現領域をもった画像の入稿が増加している。これを再現するには,プロセス4色ではなく,多色印刷によって色再現領域を広げることが望ましい。多色印刷には,現在2方式がある。パントン(PANTONE)社のヘキサクロームは,CMYKのほかに,オレンジ・グリーンが使われた6色印刷である。ederMCS(Hifiカラー)は,CMYK+RGBまたは任意のカラーの組合せによる7色である。

ヘキサクロームは、CMYKモードに変換せず、RGBモードのままCMYKOGの6色印刷技術である。色再現領域が広くなる。グリーンとオレンジで必要以上に色を掛け合わせる必要がないので、鮮やかさを再現できる。今まで再現しにくかった蛍光色を使った被写体の印刷物には、一層再現性が高くなる。4色プロセスとヘキサクロームのガモットを比較すると,ヘキサクロームではオレンジ・グリーンの部分が広くなっている。

多色印刷は,FMスクリーンの併用が効果的である。ディテールの忠実な再現,版数が増えるので通常の網点ではモアレが起こってしまうためモアレの回避,FMスクリーニングによる中間調の彩度向上のためである。

多色印刷用インキの問題点としては,需要が少ないためインキの価格が高いこと,色換えが面倒,またヘキサクロームの場合は蛍光顔料のため濃度が出にくい,耐光性がない,印刷適性が劣ることなどがある。
オフセット印刷における多色印刷は完成されたとは言えない技術であり,インキメーカーとして,印刷適性の向上,FMスクリーンとのベストマッチングの追及と提案等に努めたい。

2004/03/04 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会