本記事は、アーカイブに保存されている過去の記事です。最新の情報は、公益社団法人日本印刷技術協会(JAGAT)サイトをご確認ください。

Webサービスのコンテンツサービスへの応用

Webサービス(XML-Webサービス)は、ECのためのインフラになるのではないかと非常に注目されていたが、まだなかなか立ち上がって来ていない。まだブレイクするまでは時間がかかりそうだ。しかし今はこのような状況だが少しずつアプローチは進んでおり、その中には実用化され始めている事例も出てきている。
Webサービス技術は、アプリケーションの一部をネットワーク上にある他のアプリケーションを自動で利用しひとつのアプリケーションのように見せる。例えば従来はアプリケーションが別だとその間でデータの取り込み操作が入ったりしていたが、それが自動で連携されるなど使い勝手をよくするための技術である。今まではすべてのアプリケーションを開発していたものを、利用できるWebサービスがあればその部分を連携し組み合わせて簡単にひとつのソリューションにでき、開発時間が短縮できるとか低価格化ができるなどが特長となる技術である。

XML技術を利用したSOAP、UDDI、WDSLと呼ばれるものが基本にあり、ネットワーク上のどこにアプリケーションがあってもそれを利用できるようにすると言ったアプリケーションの連携技術である。しかし現実には自社内のアプリケーション間や、既存のアプリケーション間を接続するために利用されていることが多い。
初期のころ言われていたECへの活用については、例えば他社の見積ソフトや受発注ソフトを自社システムと連携して自動で見積や発注を行えるようにすると言った構想で利用する例はまだ聞かない。
またWebサービスはASP(アプリケーションプロバイダーサービス)事業のサービスアプリケーションを実現するインフラとしても使えるので、これからのアプリケーション開発の基本技術として利用されていくことは確実と思える。

PAGEコンファレンスのD4セッションでは、Webサービスのコンテンツ配信へ利用している現状について行った。

地図情報のコンテンツ配信への活用事例

今回のセッションでは、東京ガスが進めているGeOAPというサービスを紹介した。これは地図情報システム(GIS)をシステムとして導入するのではなく、地図情報の中で欲しい情報だけを切り売りを行うサービスで、その情報配信にWebサービスを利用している。すでに米国ではマイクロソフトが手がけており、1日1000万トランザクションとも言われかなりの額のビジネスになっている。地図情報の中でユーザが必要な部分だけを要求すればそのデータが得られる仕組みである。この要求する部分と結果として地図情報を返す部分をSOAP技術のWebサービスを利用している。
例えば、ある地区の地図そのものもあるが、2点間の距離を自動で計算して返すとか、いろいろな使い方ができる。これを1トランザクションでいくらという課金で利用させるサービスである。しかし実際にはその値付けが難しく、地図情報そのものと2点間の距離情報が同じ課金でいいのかという課題がある。このためビジネスとしては課金の値付けを今試行錯誤している状況のようだ。
このようなサービスが出てくると、今まで何千万というGISが1トランザクション何円かで利用でき、例えば月に1000回利用しても何千円という金額になるので、これではGISが売れなくなってしまう。これはビジネス的には課題もあるが、導入する側では自社システムの中に組み込めしかも費用が安く保守が不要であるため、使い易いシステムになってくる。
東京ガスの社内利用の実例では、交通費の支給のためのバス経路の距離計算を自動で行うとか、出張距離を自動で算出して手当に変換できるとか、またそこで地図を見たければ住所からすぐ地図が出てくるなど社内のシステムと自動連係させているそうである。

辞書検索サービスのコンテンツ配信への活用事例

また辞書検索サービスもある。XML高速検索エンジンを利用して辞書から必要な情報を取り出してサービスできる。(株)イーストが開発したこのシステムはBTONICと呼ばれ、性能・機能評価をしたければhttp://www.asahi.comの左上の「辞書」を選択して、「大辞林」と「全文検索」をチェックする。入力窓に「青森 温泉」、「ドイツ 犬」などand検索ができGoogleと同じ心地よさを体感できる。
このサービスを利用しているものには、三省堂のe辞林、小学館では二点の辞書をWebサービス方式で配信している。自由国民社の現代用語の基礎知識、日経BP社のデジタル大事典などがある。基本的には必要な情報を検索して結果が得られる検索システムとなっているが、この仕組みにWebサービスを利用している。
辞書がWebサービスになっていることは、社内で利用するアプリケーションから辞書検索を行えることになる。他のアプリケーションを開いて辞書を検索してというのではなく、例えば文書の内のある用語から自動で用語辞典に飛ばすなどが可能になる。
このサービスの課金は、基本的に地図情報が従量制に対して定額制となっている。

コンテンツ配信にはWebサービスが有効か

Webサービスでコンテンツを提供する考え方は、システムで販売するのではなく情報を切り売りすることができ、しかも得られる情報を自分のシステムの中に組み込める点が非常に有効となる。
地図情報システムの場合、従来はシステムをそっくりコンテンツと一緒に導入するため初期費用が高いという問題があった。しかもコンテンツは更新する必要がある。またこのシステムから情報を取り出すにも、いろいろとシステムにより方式が異なるので、情報連携が大変であった。
これがWebサービスとなれば、基本的にはSOAP、WDSLといったXML技術を利用するため、マイクロソフト環境ならば.NETで簡単に取り込める。UNIX環境でも同様に開発環境が整ってくるので開発が楽になる。しかも、必要な情報だけが取り出せるので簡単に利用できる。
初期の頃はECへの活用という声が大きかったが、現状ではこのようなコンテンツシステムからの情報連携や、またデータウェアハウスのような基幹システムから必要な情報だけを取り出して利用するなど、必要な情報コンテンツを得るためのインターフェースとして、今Webサービスが少しずつ利用され始めている。

コンテンツホルダーにとって、コンテンツを切り売りするのはいろいろな課題もあるが、利用する側からは必要な情報だけで課金されるので、導入が非常に手軽になる。ただしコンテンツをXML化することが必要になる場合がある。
このため、コンテンツ配信サービスを行う仕組みとしては、Webサービスは非常に強力な仕組みとなってくる。

2004/03/21 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会