質問:環境対策のための経営活動によってコストは下がるものなのか?
回答者A:実際には大変にお金がかかるものである。しかし、法律が存在しているからそれにきちっと対処しなければ企業自体が存続できない。まずは必要経費である。 もちろん、ゼロ・エミッションを目指す中で、生産工程でロスになる部分を減らす、分別排出によって従来の廃棄物を有価物にするなど、金銭的なマイナスを減らしてプラス面を増やすことはできている。
回答者B:今まで会社を支配していたのは金勘定で、はっきり言えば「効率のようなもの」が会社を支配をしていた。そのために各部分毎にそれぞれで最も効率が高いやり方で仕事をしてきた。
しかし、たとえばLCAの観点から全体としてのエネルギーロスをなくす、あるいは全体的に何が快適なのかということからあるべき製造の姿を描いて、それを部門最適を重要視してきた現実の事業所の姿と対立をさせてみることによって、余計な物は買わずムダなものは出さずに環境負荷を下げるという設計図を作ることはできる。しかし、現実的にはいろいろな部分で衝突が起こり、理屈どおりにはなかなかいかない。
効率良く物を生産するために個別のパーツを組み合わせた工場で環境問題への対応を進めようとすると、手間が多くなったりムダな行動が多くなり、余計にお金がかかるというのが現実である。したがって、現時点において「あるべき論」として描いた事業所の姿を実現した事業所は1つも無い。
しかし、おそらくそれほど遠くないうちに、本当に環境に配慮した事業所では、必ずコストは下がると認識している。
質問:環境問題対応のコストは会社が存続するために絶対に必要な存続コストであり固定費に近い。大手企業では固定費配賦の懐が広いからかなりのコストでも吸収できるだろうが、規模が小さくなるほど難しくなる。それでも避けて通れないコストだとすると売価吸収を考えなければならないが、その可能性をどのように考えているか?
回答者A:包装分野では、容器1個にかかるリサイクル費用はだんだん上昇してきている。現状は生産の中でそのコストを吸収している段階だが、今後はそのコストを転嫁して販売するようになっていかざるをえないだろう。
質問:安全に廃棄できるならば、現在の売価にプラスアルファのコスト分が上乗せされても消費者として許容するということが理想的だが、今ユーザーにそういう雰囲気はあるだろうか。環境対応コストとして、100円の物を105円で売るようなことを流通業界全部が受け入れるだろうか?
回答者B:環境対応に掛かるコストに関しては、直接的に見れば吸収できない企業のほうが多いと思う。当社でも吸収しきれない部分がある。各部分単位で見れば赤字になるところもある。印刷業界全体でみれば廃業せざるを得ない会社も出てくるかもしれない。
そのような苦しい中でISO14001というマネージメントシステムを導入することは、環境に配慮しているというビジネスライセンス以外に、切りつめるところを切りつめていく、あるいはもっと効率的に物を買うといったことをみんなで考えていくことで利益を作り出すことに有効である。規模の大小による苦しさの差がないとは言えないだろうが、このへんが1つの糸口になるのではないだろうか。当社でも、以前と同じやり方をしていればとっくの昔に解散していただろう。しかし、いろいろな試みを重ねてくる中で、遅まきながらも少しずつ効果が出てきている。
(「JAGAT info 2004年3月号」より)
2004/03/27 00:00:00