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鮮やかな品質と機能性を両立したプリンタの技術

 現在,よく使用されているプリンタには熱転写方式,インクジェット方式,レーザ方式などがあり,一般コンシューマ用からプリプレスの校正用途,大型ディスプレイ,ラッピングバスなど,その特性に合わせ広範囲な用途に活用されている。

 大判カラープリンタを活用して,ポスターなど1枚からの出力サービスは,さまざまな業界が手がけている。早くから手がけていたのは看板屋さんやDTPの出力ビューローであるが,CADや青写真業者,カラーコピーなどを行っていたオフィス向けサービス,写真屋さん,そしてとりわけ看板に近いところにいるスクリーン印刷や,販促に携わる商業印刷会社も盛んに取り組んでいる。

 大判カラー出力機は,いろいろな機種があるが,主流はインクジェット方式である。インクジェットは,人間の目では確認できないレベルのインク粒子(数ピコリットル,ピコは1兆分の1)を吹き付けることにより印刷を行なうもので,表面が平滑でなくてもよいので,さまざまな素材にプリントでき、用途を広げ普及してきた。
 大判といってもA全やB全ではなく,幅は1m超,長さは数十mまで対応できる。オフセット印刷などと比べると出力速度は比較にならないほど遅いが,オンデマンド機として商売になるケースも多い。

 現在,家庭用のインクジェットプリンタでは主に染料インクが使われている。染料は,色材が水に溶けて分子の状態で存在する。色材は水と共に紙の繊維に染みこんで発色する。よって,染料インクは比較的耐久性が乏しく,外気と遮断し直射日光が当たらない場所に保管しなければよい耐久性は得られない。

 これに対して顔料インクは,色材が水に溶けず粒の状態で水に混ざり,紙の表面に貼り付いて発色する。ひとつの分子の形で色材が存在するのではなく,たくさんの分子がついた粒になっている。分子レベルでは,光などからのダメージを受けやいが,顔料インクは粒表面の色材が劣化しても奥にまだ色材が存在するため,粒のすべてが退色するまでに時間を要する。また,顔料インクは,水に溶けていないためにじみにくいメリットもある。
 この顔料系インクの採用により屋外広告へ進出し,バスのラッピング,ビルの外壁面,フロア,工事現場の仮囲い,シャッター,電飾看板,懸垂幕・横断幕など,サービス範囲は一挙に多様化した。

 このような多様な用途には,それぞれに適した素材を使わなければならないが,顔料系インクは被印刷材選択の幅が染料系インクより広い。光沢(つや・グロス)紙,マット(つや消し)紙,紙の雰囲気がありしかも破れないユポ紙のような合成紙,繊維,電飾用各種フィルム、またシールタイプには長期使用目的の永久粘着と,自動車ボディなど貼った痕跡を残さないために再剥離タイプがある。
 以上のように,インクジェットプリンタを中心としたデジタルプリントシステムによる広告手段は,周辺技術や対応メディアの進化とともに多様化し,いろいろなシーンで目にする機会も増えた。今後もクライアントのニーズに応えるような新たな広告展開が期待されている。

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2004/04/13 00:00:00


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