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電子書籍は約束されているが、ビジネスは…

電子ペーパーを表示に使ったソニーのリブリエの登場など、このところ電子書籍の話題は再び盛り上がっている。ソニーがわざわざカラー表示を捨てて、紙に近い見栄えのモノクロ携帯ビューアを作ったことは、電子書籍のビジネスを考えている人々にとっては大きなエンドーズメントだろう。

小さいデバイスを作ることにかけて日本は多くのリソースがあり、発明でライセンス商売をするのとは違って、新技術をさまざまな商品に展開させながら育てていくことができる。文字を読むデバイスも、これからは市場が増えるだろう。既にコピーなどのOA機器はマニュアルが内蔵されて操作パネルですべてが分かるようになっているが、取り扱い説明書の分野は、家電品などにもデジタルで内蔵させて、文字数を多く表示できる液晶などで読ませようという話もある。

さらにユビキタス社会に近づくに従ってリブリエのようなデバイスがあちこちに組み込まれたり、あるいは個人に携帯されるデバイスがいろいろなマニュアルの代わりになるとか、業務用の電子書籍もどきが増えていくだろう。今はまだ業務用は立ち上がっていないが、長期的に見ると、動画もカラーも必要なくただ本のように見やすいことを望む分野はあるので、電子書籍というデバイスの活躍の場は約束されているともいえる。

このようなユビキタスの流れはゆったりした変化であるので、デバイスの開発に乗じて書籍コンテンツの電子化による新たなビジネスを興そうとしても、タイミングの取り方が非常に難しい。電子ペーパーの表示や電子書籍のユーザインタフェースなどデバイスに馴染むことと、日常生活の中でコンテンツを電子ビューアでみる習慣と、買う気を起こさせるコンテンツという三要素をどこかの企業が単独で一気に仕掛けることは容易でないだろう。

しかし青空文庫のように無料のコンテンツが増えていくことは電子書籍の追い風となる。民放のTVがタダ見を常識化し、WEBがタダ読みの世界を作ったように、デバイスを先に売りたければコンテンツはタダというのが常套手段である。その先に有料化できるコンテンツが何であるのかを議論するのはまだ早計なのではないか。

通信&メディア研究会会報 VEHICLE 181号より

2004/05/06 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会