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JDFをテスト運用している印刷会社の視点

JDFフォーラムジャパン会議ではJDFの普及を目指しユーザーの信頼性を重視した活動を行っているベンダーの実務者を中心とした会議であるが、第二回会議では印刷会社でJDFのテストを行っている京都・大平印刷(株) 生産本部 本田雄也様からJDFについてのユーザーの視点に立った話を頂いた。以下は要約である。

2000年drupaで初めてJDFに触れ大きな夢を持った。そして、これからは部分最適でなく全体的な効率化、ワークフローであるということで、2001年に10年長期計画を立てるにあり、中期計画でデジタルワークフローの取り組むことになった。 そこには、「社内の視点」としての工程管理、つまり物づくりとしての営業から最終納品までの流れの効率化と、「対顧客の視点」として受注しているお客様や協力会社との効率化を設定した。つまり社内的には、ミスロスを出さない、人手をかけない。社外的には、売上を伸ばそう。この2点で大きな絵を描いてプロジェクトを発足した。

プロジェクトで2001年から着手したのが、それまでの社内の価格体系がアナログ的な考えのままになっていたのを、もっと実際の工程ごとに区切ったデジタル的な体系への移行であった。これには、社内仕切り価格を設定して、その精度を半年ごとに見直し、早い段階でどれくらいの利益が出ているのかがわかるように、仕切り価格の精度をどんどん上げていった。

次は工程管理が、社内のどういう動きを把握していくかべきであるかの検討で、以前の工程管理は、基本的に印刷以降だけを管理しており、営業は入稿すると、直接デザイン工程やプリプレス工程やに渡して、下版になると工程管理にもってきて印刷以降を流すため、営業にとっては非常に手間がかかり、状況も見えにくかった。 そこで、基本的には営業から受ける場所は一ヶ所にして、そこからすべて工程管理する流れを指向して、現在はこれらがこなれて動いている。

JDFはMIS、プリプレス、プレスなど各メーカーに協力していただいて、去年6月から、社内でテスト運用している。当初、プリプレスが一番最初に動くと思っていて、それから1年近くたつが、プレスが一番早く動いている感じである。MISとプリプレスに関しては実際の細かい問題はいろいろあるが、今ではほぼ使える状態になっている。

プリプレスは、工程的には非常に複雑で、機械の稼動イコール人の動きというふうにならない部分が多いところが、むずかしいという実感をもった。できたら、デジタル価格体系の項目ごと実績を取っていきたいと考えている。今現在はJDFについては実稼動ではなく、社内テストが出来る環境を作ってやっている。

PAGE2004のD3セッションでも「JDFはメーカーさんやCIP4の中でどれくらい研究されて、どのような将来像が描かれているのか」を質問した。

実運用ではJDF対応した機械を買ってきて、社内ネットワークに受注をインプットして、さあ営業から流れていくのかというとそうではないと思う。今のところは印刷機メーカーは印刷とMISの接続を考えるし、プリプレスのメーカーはプリプレスとMISの連携を考えるようだ。

しかし、大平印刷はデザインもプリプレスもプレスもポストプレスもある、各メーカーのマシーンがある中で、それぞれがJDFに対応したといって、導入した我々が思うような運用になるかと言えば、現在まったくそのような姿が見えていないし、JDFもしくはCIP4の方から、われわれユーザーに対して何か形を提示されているか?というと、今一具体性にかけているなという感じがある。 現在はメーカー同士の互換性テストが行われている時期なので、そのような段階はまだ次かなという印象をもった。

具体的には、例えばMISがJDFに対応したとして、MISで受注入力たJDFはどこにできる?、どこに行く?、ということもある。1対1で繋がるのであれば最初の工程でJDFがプリプレスにいったとして、ではJDF対応したプリプレスの機械が、実際どうやって受け取るのかなどがある。

JDFによって作業指示書と原稿が全てデジタルデータになった時、それらをやり取りするのに、限りなく人を介在させないということを願っているが、そうなると、MISが全ての中心になってしまうだろう。 社内の視点だけならそれでよいが、経営からは、売上の伸ばす、利益を出すというところで、社外の視点が重要になっている。その社外の視点で考えた場合、MISが中心になるかというと疑問である。

社外の視点からは何かもう一つ別のものがいるのではないか、MISがあって各工程の生産機をコントロールするマシーンがある。その間にもう一階層入れて、社外の視点をまかなえるようなJDFのソリューションが必要ではないかと、我々は考える。 社外を考えると情報公開とか、ルーティン的な受発注を外部とやり取りするには生産機器のコントローラーのサーバーを直接外部に出すわけに行かないし、MISも外部に出すこと も出来ない。

サプライチェーンマネージメントができる仕組みをもう1階層、間に入れてやりたいということである。外部に対して、ビジネスという視点で捉えられるような仕組みが対応できるようににならないと、本当の意味でのわれわれのJDFの意義は無いのではないかと思う。もう一階層加えたその仕組みによって、MISと生産機器のコントローラーが一対一になるのではなくて、間に受け持ってそれぞれ対応していけるのではないかと言う事も考た。そのような仕組みは未だ紙の構想から若干出ている程度で本開発までは行っていないが、デモなどは作りたいと思っている。

また、スムーズにJDFを自動的につなげようと思うとやはり、同一ベンダーで揃える、もしくはメーカーグループをつくって、その同一グループの中だけのやりとりでないとスムーズに行かないかもしれない。 いずれにしてもユーザーに対しては、経営的な社内的な視点と、顧客の視点の両方に効果あるような絵を描いてあげないとなかなか導入に踏み切れないのではないかと思う。

以上が2001年ころからJDFに関わってきて、ユーザーとして感じた事、思っていること述べさせていただいた。メーカーさんにはもう少し具体的に落し込んだ提案をしていただければ、印刷経営者はもう少し、食いついてくる所ではないかなと考えている。

(第2回JDFフォーラムジャパン会議 2004年3月25日より、文責JAGAT)

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2004/04/28 00:00:00


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