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環境問題対応について思うこと

最近、安易に環境ISOの認証取得ができるような仕組みが増え、それを利用して取得する動きが増えていることには疑問がある。得意先からの要請、あるいは入札条件をクリアするためにという理由でとにかく認証取得をしなければならない、といった企業の事情はわかる。実際にそのようなことで認証取得した企業で、以降きちっとした対応を継続している企業もある。しかし、ネットを使って通信教育を受けるような形で簡単に認証取得できるということが良いことなのか? そのようにして認証を取得しようとする企業は、環境ISOをシステムとして本当に会社に根付かせるつもりなのだろうか?

認証取得の過程で印刷の素人であるコンサルタントの指摘の中にいままで気づかなかった発見をしたり、社内での議論の中で積み重ねられてくるものが重要であり、与えられるものを一方的に受け入れるだけで意味のあるものが出来ることはないだろう。内実を伴わない認証取得が増加していけば、認証自体の有効性も失われかねない。

環境問題対応の具体的方法についても見直しをしなければならない点がいろいろある。 再生紙を使う、大豆油インキを使うといったことは既にかなり行われている。今後は、単に材料単体について考えるのではなく、例えば、UVインキで印刷する場合、作業や製品として問題がない最小限のエネルギーで乾燥させることができる装置の開発といったことが課題であろう。しかし、これら資材に関しては意見は出せても自分たちで開発出来るわけではないから、印刷会社としてできる範囲には自ずと限度がある。ゴミの排出も年々の目標を設定して削減していくことはできるが、打ち抜きカスをゼロにすることはできない。言い換えると、このような視点での環境対応の活動だけではどこかで行き詰まってしまうことになる。

また、再生紙を使っていれば「環境に優しい」といった単純な見方についても見直す必要がある。例えば、一時期教科書の表紙にPP貼りはしないという方向が打ち出されたが、現時点ではPP貼りになっている。実際に小学校低学年の子供の教科書の扱いを見ていると、製品寿命の観点を加えてトータルで見ればPP貼りの方が良いように思う。単行本で考えれば、返品に関わる要素はあるとしても、表紙にカバーをつけるといったこと自体を変えていくことの方が大切である。
つまり、部分的に見るのではなく、視野を広くとって全体として見直していくことがこれから重要になるのではないだろうか。

それなりの活動をしてきた経験を踏まえて環境問題対応を集約して言えば、収益性を確保する、あるいは増大させるための改善行動を続けていくことが、自ずと環境問題対応になるということである。このような視点で取り組むならば課題が尽きることはない。清水印刷紙工では、経営課題になっている事柄は全て環境ISO14001の目的、目標の中に組み込んでいる。具体的には工程短縮をする、ヤレのような無駄をなくすといったことであり、どんぶり勘定ではなくきちっとコストを計算し利益の状況を把握して改善を考えていくことである。そのことによって、無駄な電気、材料を使うこともなくなり、排出するゴミも削減できる。

重要なことは自分で考え、自分で答えを出すことにチャレンジしていくことである。ISO9000ではなく14000シリーズに取り組んだのは、「こうしなければならない」という「管理」ではなく、「皆でこういう方向に進んでいこう」という形で「リード」していける性格が強いシステムだと判断をしたからである。

(JAGAT info 2004年5月号)

2004/05/24 00:00:00


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