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情報発信に有効なツールとは

今利用されている情報伝達手段では,なかなか確実に情報を伝えるのが難しい。DM,チラシ,雑誌広告などの印刷物,ホームページ,メールマガジンなどの情報がはんらんしており,その中に必要な情報が埋もれてしまい,なかなか必要な人に情報が伝わらない状況がある。
今インターネットの利用はブロードバンドということで,家庭でも企業でもかなり高速な環境が利用できる。このような背景もあり,高画質で見やすいレイアウトで情報配信を行うツールが出始めている。一度作成した印刷物用のデータを再利用するなど,コストを掛けず的確に情報を印刷物のような見やすい形で伝える情報配信ツールで,通販カタログや定期的な商談用情報提供などに利用され始めており,その効果が期待され始めている。

情報配信の課題

情報配信を行う場合,いかにユーザにコストを掛けずに確実に情報を届けるかが大事である。印刷媒体にはDM,チラシ,雑誌の広告があり,またテレビ・ラジオなどの電波広告がある。しかし,このような媒体を確実に見てもらえるかと言えば,そのまま捨てられたり,見てもらえないケースが多い。時間的なゆとりがないと丹念に探さない。
これらの仕組みは,一方的に情報を押しつけるため,欲しい情報が的確に得られない。
ホームページも非常に情報過多で欲しい情報,目的の個所にたどり着けない。メールマガジンも,1日20〜30くらいが一方的に送りつけられる現状では,ウィルスの問題もありなかなか見てもらえない。
ホームページは,お気に入りのところに登録しておけば簡単に行けるが,お気に入りが多くなるとどれが目的のものか探すのが大変になる。
検索サイトの画面も,細かい文字がたくさん並んでおり,あの中を読んでそこに行くということは,実際にはなかなか行われない。
また情報を提供して見てもらう側でも,見てくれるのをずっと待っている形になる。一度見ても,継続して見るわけではない。お気に入りに登録しても毎回見るということはあまりない。
その上ホームページでは,商品や情報を視覚的に伝えられず,伝えたい情報をリアルタイムに確実に伝えらず,独創的なサイト作りができない点もある。

印刷物の問題点

印刷は,紙代,インク代が必要なので,どうしてもコストが掛かる。印刷部数が少ないとコストが安くなるかと言えば,部数が少ないと1部当たりの印刷コストは高くなる。また,通販のカタログなどは,切手を貼ったり宅急便を頼むので,輸送コストが掛かる。
スーパーの周辺で新聞の折り込み広告のチラシを出しても,買い物に来た人が折り込み広告を見て来ているのかが分からない。スーパーの広告担当者には,印刷物の中身,折り込み広告の中身を良くすることでの反応など費用対効果を把握できない。
多くのDMの中のDM,多くのチラシの中のチラシとなり埋もれてそのまま捨てられる。
もう一つは,今すぐ伝えたい情報が印刷物ではなかなか伝えられない。特売のチラシを作るのでも,最短で3日,4日掛かりタイムリーではない。また印刷物では意見を聞くこともできない。

有効な情報配信ツールとは

最新情報や欲しい情報がパソコンの画面を開けてクリックしたら出てくる。通常の雑誌のようにカラフルに工夫した形で楽しく見たい。
アクセスしなくても,中身が新しくなったことが画面に出れば楽である。例えば雑誌なら新刊を発行したというメッセージが伝わればよい。
もう一つは,過去の情報が選べる方法として雑誌で言えばバックナンバーがある。すべてのコストが削減でき,一度囲い込んだユーザを放さない仕組み作りが必要になる。見に来てもらうのではなく,こちらから確実に届けられること,読んでもらえることが非常に重要である。タイムリーに短時間に的確に相手に伝えられるかである。ブラウザの制限にとらわれない,独創的な表現ができることも重要である。

報配信ツールの開発

このような背景から新しい情報配信ツールが複数出てきた。ここで紹介する「Pibros」もその一つで次のような機能がある。まずすぐに見てもらえる方法としてアイコンを用意しクリックするだけで見せたいところに接続する。指定日に情報をユーザのパソコンに新しい情報が来ているというメッセージを渡せるようにする。
画面のコンテンツのあり方は,それぞれの用途に従って自由自在な大きさ,形ができるようにする。大容量の動画,画像は,インデックスタブという形であらかじめ組み込んで送ってしまい,回線のストレスを外していく。
印刷物では,商品カタログなら色違いで,どこの部分か見やすいように作られている。その考え方を取り入れたインデックスを作る。
Webブラウザを使うと必ずURLが表示されるが,場合によっては見せたくない時もある。URLを表示しなかったり,プリントできないようにしたりすることを可能にしている。
デザインについてもカスタマイズできるようにして,プロしか作れないのではなく,通常のホームページが作れる人なら簡単に作れるようにする。従来わざわざ印刷物と別途に費用を掛けてホームページ化していたのを,もっと簡便にできるような方法を取る。
また,一度送ったものはバックナンバーという形でいつでも見られる。リンクは当然,問い合わせ,掲示板,チャット,データベース検索などホームページでできることはすべてできるようにしている。その中には動画も画像も音楽も入れられるようにしてある。
課題は専用ソフトをインストールすることだが,専用ソフトをインストールすれば必ず読んでもらえる。マーケティング機能という形で,場合によってはだれが中身を何回見たかということももたせることができる。
CD-ROMを配りそれをインストールするか,もう一つは一度ホームページの中身を見てもらい,そこからダウンロードしてもらう方法ができる。

利用事例

このツールの利用方法には,具体的には,既存雑誌のデジタル版として,趣味・娯楽・カルチャー・コミックス・エステ美容・モータースポーツ・キッズ・育児などの雑誌を,印刷と並行して出す利用になる。販促ツールとして,中吊り広告的に本の紹介や,通販カタログ,PRカタログ,各種パンフレットもできる。
パンフレットの事例として,今進行している計測機器メーカーの例がある。この商品カタログは,非常に厚く細かい字で仕様が書かれており,写真も非常に精度が高い。そのため顧客に配るカタログは,重さが1冊3キロくらいになる。顧客のほうはそれを嫌がり,例えば,必要な部分の資料だけ抜き取って送ってほしいという要望になっている。そのため印刷部数を少し減らし,浮いた費用でこのツールを作ってデジタルデータで顧客に配布する。必要に応じてそこだけ印刷できるようになっている。
企業の広報ツール,会社案内や社内報,リクルート,その他,会報誌やファンクラブ通信,利用明細書,音楽配信,動画配信,画像配信,ゲーム配信,ライブ中継などにも利用できる。
(通信&メディア研究会)

出典:社団法人 日本印刷技術協会 機関誌 JAGAT info 2004年6月号

2004/06/08 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会