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多色印刷の分版とスクリーニング

 オフセット印刷の分野も,従来のプロセスカラー印刷を超える6〜7色を使用した多色印刷による色再現領域を拡大する技術開発が進められている。
 ハイファイカラー(ederMCS+Super Fine Color)とこれを実現するための技術について,ハイデルベルグジャパンの木島明良氏にお話を伺った。

ハイファイ印刷を実現する技術

 ハイファイ印刷は,CMYKインキでは出ない色を,RGBインキ等を加えて印刷する方式である。また,スクリーン線数が350線以上の高精細の網点を使った場合も,ハイファイ印刷という。500線を超えると網点が見えなくなるので,FMスクリーニングと同じ効果が得られる。最近ではFMスクリーニングの新しい方式も出てきているが,20μm程度の網点になると,ほとんど目に見えなくなる。それをランダムに配置したFMスクリーニングが1つの技術として使われている。

 ハイファイ印刷のメリットは,RGBの2次色の色を鮮やかにする効果がある。また,印刷時に2次色,3次色が安定するというメリットもある。CMYKでは,2次色は掛け合わせで作るので,ドットオンドットで重なっている部分は非常に不安定になる。そのような部分でインキのバランスが崩れるとグレーが変わったり2次色の色が変わったりすることがある。CMYK+RGBでは,2次色がインキとしてあるので安定する。
 ハイファイカラーを実際に行うための技術として,マルチカラーセパレーションを行うソフトが必要であるが,その他にGCR(Gray Component Replacement)という色の持っている濁り,グレー成分から各色の色を取り除いてそれを墨に置き換える機能が必要になる。

マルチカラー・セパレーション「ederMCS」と「Super Fine Color」

 「ederMCS」は,CMYKの画像からRGBを加えた7色に色分解するソフトウェアで,4色の画像から7色に分版し,RGBの彩度をアップする。
 「ederMCS」では絵柄に効果のあるRGBインクを使用することができる。絵柄の持っている色に一番近いインキを使用すれば,特色やスポットカラーと同じような効果を出すことができ,絵柄に合わせてRGBインキの彩度や色相を選択することもできる。
 「ederMCS」は,たいへん簡単な操作で,基本的にはDCS形式にして貼り込みに使うような形になっている。また,GCRやインキの選択,またAMかFMスクリーニングのアウトプットの選択を行い,インキの色を設定することができる。フィックスカラーという決められた色や,場合によっては,ユーザで選択して色を再現することもできる。

また,今回開発した「Super Fine Color」は,ICCプロファイルを用いたカラーマネジメントをベースにした手法により,RGBデータの色分解を行うソフトウェアである。オリジナル原稿に近い再現ができるため,原稿を選ばないというメリットがあり,肌色やグレーがあっても,特に問題なく使用できる。
 「Super Fine Color」は,RGBのデータからRIP,すなわちCTPやイメージセッタにデータを渡し,網点を作る段階で色変換を行っている。従来は,最初に7色の画像データを作って,それをページに貼り込んで出力するという形であったが,このソフトは最終の段階でRGBから7色に分版するものである。

印刷に必要な標準化

 4色印刷でも必要な印刷条件の標準化について,ハイファイカラー,Super Fine Colorはインキや紙,印刷機も条件を固定しなければならない。それらが変われば,また変わった条件を作らなければならない。通常の4色と同様,常に一定した印刷をしようと思えば,インキの種類,ベタ濃度,紙の種類等の標準を決める必要がある。 印刷機が複数台ある場合は,印刷機の特性,ブランケットや印刷機メーカー,インキが違うこともある。合わせられるものを全部合わせたとしても,印刷機が違うと,やはり結果は変わってくる。

 印刷現場では,インキ壺の調整を行って色を合わせているが,時間がかかり非効率である。問題は,ベタを合わせると網が合わず,網を合わせるとベタの色が合わない点であり,印刷機はその両方を自由に合わせることができない。印刷機によって色調が合わないので,仕方なく印刷機を区別したり,紙の向きを変えたりする。

 また,CTPと印刷のキャリブレーションを考えた場合,印刷でできないキャリブレーション,ドットゲインのコントロールを版,即ち前工程で調整するという考え方を推奨している。製版で色をきちんと出したので,あとは印刷で色を合わせるというのが従来のやり方である。印刷条件が異なっても,色を合わせるというのは,どんな腕の良い印刷オペレータでも不可能である。印刷でも多少はコントロールするが,印刷で色を合わせるという考え方は,本来は正しくないと考えている。
印刷は,いつ誰が刷っても一定に刷れるのが一番よく,出力デバイスであるプリンターと考えればよい。色が合わないから,後工程で変えるという考え方は,プリンターの濃度をいろいろ変えるということである。

印刷を安定させる「Super Color Technology」

 Super Color Technologyの開発の背景には,印刷物の色調不統一があり,見本どおりに刷ることがたいへん難しい点である。標準印刷では再現不可能な色校正や,CMYKデータ入稿の場合,非常に困る。印刷機の数値管理ではなく,職人技で色合わせが必要となり,色を出すまで多くの準備時間を要する。
 また,デジタルカメラによるRGB入稿が増えているので,精度の良いRGB―CMYK変換が必要である。さらに,高付加価値化ということで,FMスクリーニングの第2世代のものが出てきたこともあり,ハイファイ印刷と組み合わせることによってオリジナルに忠実な新しいニーズに対応できる。印刷のコストを抑えるという方向で世の中が動いているが,7色を使用し顧客ニーズを満たせるということであれば,お金は取れる。

 CMYKデータを,CTPでそれぞれ出力して違うインキや印刷機で出すと,なかなか印刷結果は合わない。異なる条件下では,同じ仕上がりは望めないということである。
 理想的な印刷のコンディションというものは存在せず,いろいろな印刷条件によって出てくる色が変わってしまうというのが現状である。それらを補正する解決策が,Super Color Technologyである。
 効果としては,印刷を安定化させるという標準化がある。また,オリジナルに対して,画像の色が持つカラースペースを損なうことなく再現し,なるべくオリジナルに近い色を出力する。また,高精度色分解で忠実な色再現を行う。

 さらに優れたワークフローということで,これを運用するに当たって,絵柄1点1点色分解するのは大変なので,RIP出力時に一括して分解し,実用性が上がる技術を開発した。
 ハイファイ印刷を実現するには技術,ソフトが必要であるが,それに加えて印刷の安定性が非常に重要になってくる。そして印刷をコントロールするための技術が必要になる。印刷はアナログなので限度があるが,それをデジタルの工程である程度補正する。またFMスクリーニングを使うことによって,それらをより効率良く活用できる。さらに,Super Color Technologyという付加価値を生む技術を開発した。

(テキスト&グラフィックス研究会)

2004/07/05 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会