日本ではケイタイ電話がインターネット人口を押し上げる働きをしたが、それはパソコンが使えなくてもケイタイなら使えるというインタフェース上の利点があったからだと考えられる。ケイタイのインタフェースが分かりやすいのは、表示や操作面の物理的な制約があって、インタラクションをシンプルに組み立てざるを得ないからだ。
Webは紙の紙面デザインに比べて制約があるというものの、大変豊にデザインされるようになってきて、目移りがするし、クリックするところだらけであったりで、初対面の画面に向かった時に、利用者が適切なアクションを起こせずに、パスしていってしまうこともある。しかしこれはWebとかパソコンの画面のせいでもない。
思い起こせば10年前のモザイクのブラウザ画面は非常にシンプルなものであった。コンテンツの表現がシンプルであるだけでなく、ブラウザの機能自身もシンプルで、今の電子書籍に毛が生えた程度の直感的に扱えるものであった。パソコンのアプリでもversion1.0から使っている人は覚えるのに苦労した記憶はあまりないだろうが、アプリが進化してから学ぼうとする人は戸惑わされることが多い。
何でも進化すると共に複雑化して結果的に使いにくくなるのは高機能化の競争があるからで、その中でリッチにすることが自己目的化してしまい、利用者を置き去りにしがちであることがわかる。Webもその例外ではなかったわけだ。だから究極のWebデザインという技法があるわけではない。
初心者から常連までスキルの違いや利用目的の違いのある人たちの要求を1種類のインタフェースで満たすことは難しいが、ユニバーサルデザインの考え方を導入して考えてみるのがいいだろう。ケイタイ電話は工業デザインでもあるので、単なる画面のWebよりもユニバーサルデザイン的によく考えられている点もあるようだ。
TVを使ったインターネットは今までのところうまくいっていないが、液晶のような文字の読みやすいデジタル画面とデジタル放送やブロードバンド環境の充実とともに、もう一度茶の間からのアクセス獲得に挑戦してくるであろう。ケイタイとパソコンとTVの中で、インタラクションのインタフェース技術も更に練られていくだろう。
通信&メディア研究会会報 VEHICLE 184号より
2004/07/25 00:00:00