本記事は、アーカイブに保存されている過去の記事です。最新の情報は、公益社団法人日本印刷技術協会(JAGAT)サイトをご確認ください。

社員教育に成果を上げたEMSの導入事例

エコステージに取り組んでいる葛寳Vは、魚屋から出発し、料理屋、バーの経営を行っている30名の企業である。魚新の3代目、現取締役会長四分一勝氏は「エコステージでやる中身は、昔、親父や板前修業でついた親方が言っていたことと同じようなものだ」と話した。
同社がエコステージに取り組んだ最大の理由は教育支援ツールとして使えると考えたからだ。魚屋にしても料理屋にしても、その原点は「清潔」である。四分一氏は、魚屋を継ぐ前に父親から「人が店の前を通ったときに、魚屋だと気がつかないようにきれいに掃除をしろ」と言われそのとおりにしてきたし、板前修業をしていたときに、料理人の親方は、朝、調理場に出てきたときに、流しに一滴でも水滴があれば怒鳴ったという。そのように、日々顔を付け合せて仕事をしていく中で、商売の上で重要なことを学び受け継いできた。
しかし、世代が代わって父親が怒鳴るような時代ではなくなり、店が年中無休になって交替で休みを取るために全員が顔を合わせることもなくなってきている。したがって、若い料理人の教育にエコステージを使うことと決めたという。ちなみに、同社の「板前さんチーム」のエコステージ宣言の1項目に「素材の有効活用」がある。その内容は、@魚のあらや野菜の皮や軸などを料理やまかないに利用、A仕入れの段階で無駄をなくす、Bすべて食べられる料理の工夫、である。

従業員数33名の自動車部品製造業の有限会社白石製作所は、デンソーの仕事を受けている京三電機株式会社を主要顧客としており、その求めに応じてエコステージに取り組み始めた。すでにエコステージ1の認証を受けて1年が経ち定期評価も受けたが、大きな成果があったと述べた。最大の成果は社員教育に有効だったことである。
同社がエコステージを立ち上げ、必要な活動、処置をするために使った費用は168万円であった。一方、得られたプラスは104万円であった。初年度の収支は64万円のマイナスということだが、前者は最初の1年に限定される費用であり、後者は2年目以降も継続するプラスだから、単純な収支だけでも2年目以降はプラスになる。しかし、エコステージを始めることによって、従来から行っていた改善提案の件数が2倍になったり、地元で行われる花火大会の後のゴミ拾いといった地域環境活動に社員の1/3が自主的に参加するなど、社員の意識が向上したことが大きな成果で、それを加味すれば初年度もプラスと考えられると述べた。環境負荷の軽減が、コストダウンや品質向上に直接的に結びつくという実感を持てるようになった。同社の環境方針の第一項には、「従業員一人一人が力をあわせて継続的改善に取り組む」という言葉が記されている。そのために、33名の役員、社員全員が環境目標と作り、毎朝の朝礼時に各人の環境目標を読み上げるといったことを行ったという。
「既に環境問題対応の活動をやっているから、改めてEMSを取り入れる必要はない」という声に対しては、「システムとして取り入れることによって、部分部分の改善ではなく、全体を見ての改善ができ、持続的に活動ができること、そして社員教育に有効である」ことを認識すべきだと述べた。

(東京エコステージ研究会TEL;03-3572-9030, E-mail;ecotokyo@ecostage.org) 

(「JAGAT info2004年8月号」)

2004/08/05 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会