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技術革新が続く印刷機械

さまざま効用を生み出す直接駆動技術

オフ輪では、紙のインフィード部、印刷部、冷却部、ウエッブパス部、折機それぞれに駆動モーターを付けて各部を個別に動かす「シャフトレス」機構の採用がメリットをもたらしている。その効果は、従来のような印刷スピード向上や準備時間短縮といったことだけではなく、ブランケット洗浄後の洗浄液汚れによる損紙削減や電力消費量、メンテナンスコストの削減あるいは騒音の低減などにも及んでいる。そのような意味で非常に大きな技術革新である。
オフ輪の先例を追って、紙の搬送を担っている部分はシャフとギアで駆動しながら、版胴を単独駆動する枚葉印刷機が登場した。このことによって同時版交換が可能になって準備作業時間を削減できるし、DI機に採用すれば、版に画像を焼き付けるために版胴を高速に回転させている間に圧胴やブランケット胴の洗浄作業を行うことができ、準備作業時間を短縮することできる。

ME化がもたらす新たな成果

枚葉印刷機では、薄紙から厚紙への対応を謳う印刷機も増えてきた。印刷機を汎用的に使うことは仕事の切替えに時間が掛かり過ぎること、厚紙を刷ったあとのブランケットの変形、あるいは紙の特性や厚紙と薄紙を主に使う印刷物それぞれの絵柄特性に合わせた各部の調整の必要性など問題が多かった。しかし、印刷機械のME(マイクロエレクトロニクス)化によって各部の調整が簡易化、自動化されて、少なくとも作業時間の点での障害は排除されつつある。
枚葉印刷機の給紙機構では、一本の幅広のベルトで紙を運び、紙の位置はエアを使って決める給紙方式が発表された。この方式は、全く新たな方式を採用してさらなる高速化と自動化への対応を図ったものである。これも印刷機のME化のなせる技である。

オフ輪のふたつの革新的変化

カットオフ長を変えられる商業用オフ輪が出された。三菱重工のバリアブルオフ輪「Diamond16MAX」はシリンダのスリーブを交換することによって、A判,B判いずれのサイズの印刷も可能にしている。折寸法の変更はシャフトレス機構によって自在に可能である。スリーブといっても非常に軽量で、各スリーブの交換に要する時間は2分程度である。また、版のスリーブは印刷機から取り外し「機側製版装置」によって印刷した感光材を洗い流し、新たに感光材を塗布して画像を形成、現像して印刷機に取り付けて次の印刷ができる。ローランドのDICOウエッブは、印刷機上で画像を形成し、印刷後、その画像を削除して再び新たな画像を作って印刷ができるオンプレスCTP方式のDI印刷機だが、同機でも異なる直径のシリンダーを交換してカットオフ長を変更できるという。
胴周でサイズが固定されるというオフ輪の性格が、お互いの機械を有効に活用するという取引の形を作ってきたが、バリアブルオフ輪の普及はその形にも影響を与え得るものである。

オフ輪と枚葉機の棲み分け

オフ輪の小ロット対応はさらに進み、3種のチラシ各2000部の印刷を、毎時6万回転で印刷、15分弱で完了できるまでになった。一方、枚葉印刷分野では4/4色印刷でも両面機が一般的となり、ページ物向けには4倍版の大型機が装いを新たに登場してきており、少なくとも技術的な観点からは、枚葉機とオフ輪の線引きを単なるロットの大小で行うことはできなくなりつつある。
基本的には、オフ輪の小ロット対応が進んできているので、枚葉機はオフ輪が出来ない分野の機能を拡大する方向に進んでおり、枚葉印刷機の4色以上の多ユニット化、インライン・コーティングはもはや当たり前のものになった。コーターはチャンバー方式が一般的になった。さらに、多色機でパターン箔押しができるもの、ミシン目入れ、筋入れ等の後加工がインラインでできるシステムも出てきている。
このような「加工度」を高めることによって「高付加価値」化を狙うということだが、顧客側がそれを「価値」として認めるには、単に加工度を高めるだけではなく、その効果を引き出すデザイン等のソフトをうまくかみ合わせることが重要である。

品質管理のための新たな開発

印刷機各部の調整の自動化が進む中で、湿し水のコントロールの自動化が大きな課題として残されてきた。湿し水コントロールの方式は、当初は版面の水の量を計測する方式が試みられたが、平版印刷における品質安定の最大要因の一つがインキの乳化状態の安定化であることに注目し、運転中の印刷機のインキ乳化状態を判断して湿し水量を自動的にコントロールする方式が開発された。凸版印刷が開発したものである。大日本スクリーン製造は、そのDI印刷機において、絵柄全面をスキャニングしてインキコントロールにフィードバックするとともに、湿し水コントロール専用の管理用チャートを読み取って湿し水量も自動調整する機能を持たせたという。いずれの方式も、2004年8月時点においてその詳細は明らかになっていない。
本刷り中のクローズドループでの品質検査・自動コントロールは、オフ輪では少しづつ導入が進んできたが、枚葉印刷機においては、紙のばたつき等の問題から実用化が進まなかった。しかし、圧胴上で印刷物を検査するための用紙咥え尻安定機構を開発して読み取り精度を上げ、高感度カメラと特殊な照明を使って高いコントラストで画像を取り込み淡い汚れの欠陥でも安定して検出できるようにしたシステムが発表された。

DI印刷機の位置付けと求められる性格

Drupa2004でのDI(Direct Imaging)印刷機の発表は前回に比べて数は少なくなったが、かえってその特徴、位置付けが鮮明になった。
ドルッパ2004で見られたDI印刷機の共通点は、例えば「2540dpi」、「300線」、「FMスクリーンにも対応」というように、高精細な版を使うようになったことである。品質面で通常の平版印刷機の水準を持つことが必要条件であるということだろう。

DI印刷機は、印刷機上で刷版製版をする印刷機だが、刷版を内蔵したDI印刷機と印刷の都度、刷版を取り付けるDI印刷機とではその意味が大きく異なる。今後の印刷物生産が向かうCIM(Computer Integrated Manufacturing)では、日程計画、作業指示情報に基づいて生産設備を自動運転することが目標となる。この場合、版の取り扱いが必要な機械では作業者の介在が不可避だが、刷版を内蔵したDI印刷機の場合には、デジタル印刷機と同様の自動運転も可能になるからである。DI印刷機の独自性が最も光る使い方であろう。
そのように考えると、DI印刷機はデジタル印刷機レベルの自動化機能を持つことが望ましい。そのような意味で、インキコントロールに関してはアニロックス・ローラを使ったキーレス方式を採用することは当然の選択である。また、過去の3本ローラを使ったキーレス・インキングシステムにおける経験から、キーレス・インキング機構に水なし刷版を組み合わせることも自然な選択である。また、同じ水なし平版でもプロセスレスの方が方式としては望ましい。Drup2004では、以上のようなDI機の方向が明確になった。

2004/08/29 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会