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電子書籍と印刷物を製作プロセスから考える

電子書籍・電子カタログの普及

eブックなどと呼ばれる電子書籍は,話題が先行する割に普及していないと見る向きが多いのではないだろうか。特に電子書籍端末については,多くの人が一家言を持っており,大きさや重量・画面の見易さ・価格,さらには提供されているコンテンツの種類など,まだまだ発展途上と見るか,充分に使えると見るか,意見の分かれるところであろう。

電子書籍といっても,専用のリーダー端末用のもの,PDAやパソコン,携帯電話用,また電子辞書といった組み込み型のものなどを含めると,意外とその恩恵に浴していることもある。最近,オフィスで辞書を引かなくなったという経験はないだろうか。Webサイト上では,国語,英語,漢字,カタカナ語など各種の辞書検索サービスが手軽に利用できるようになっている。また,代表的な辞書の出版社では,薄型辞書の売行きが芳しくないというが,電子辞書の影響が小さくないことが推測される。
オンラインショッピングやWeb通販は,インターネットが普及する前には存在しなかったものである。テレビショッピングを除けば,通信販売のすべてが印刷物による販売であった。
また,以前は商品カタログが唯一の商品情報の伝達手段であったが,現在ではあらゆる分野の製品紹介がWeb上で閲覧することができ,取り立てて電子商品カタログと呼ぶことも多くはない。

デジタルコンテンツの製作方法

印刷物の制作は,DTPの導入以来デジタル化が急速に進んでいた。当初は,Web上の商品カタログや電子書籍,辞書といえば,既に作成された印刷物のデータからWeb用のデータへと流用することが一般的だった。しかし,更新の頻度や,再利用の度合い,様々な形式に対応するには, あらかじめ多目的のデータベースを構築し,その上で印刷物とデジタルコンテンツを製作することが増えて来ている。

そのために必要な技術として代表的なものがXMLである。電子書籍の編集フォーマットや辞書の検索サービスは,内部的にXML形式のデータ管理をおこなうことで,効率的なデータ再利用が可能になっている。また,コンテンツ管理,組版レイアウトの自動化,ワークフロー管理等の技術も重要となってくる。

電子書籍,辞書サービスのためのデータ製作

ソニーの電子書籍端末「リブリエ」は,新開発のE-INK方式電子ペーパーの採用や,インターネット上の貸本屋方式による低価格のコンテンツ提供などで,未来の本として話題になっている。
またソニーでは電子書籍端末用にXML形式の中間フォーマットを規格化し,この製品に採用している。中間フォーマットにXMLを採用していることで,任意の箇所へのジャンプや検索機能,文字の表示サイズの変更,音声や画像の埋め込みなども簡単におこなえる。さらに,この中間フォーマットでは,ルビ・柱やフォント・文字サイズ禁則処理等,紙の書籍の表現も可能にしているという。
このフォーマットのデータを作成するには,専用のオーサリングツールである「Book Creator」が必要で,インポート機能、編集機能、端末エミュレーション機能、書き出し機能、印刷機能を兼ね備えている。

三省堂では,大辞林をはじめとしたWeb上でのWeb用の辞書検索サービスをおこなっている。この検索サービスは,膨大なコンテンツをWeb上で瞬時に検索できるXMLデータベースを構築することで実現した。ごく近い将来の印刷物としての辞書は,このようなデータベースを活用することにより,大幅に効率化されて製作されることになる。

多目的のデータベースから,このような電子書籍用のXMLデータへ変換したり,Web用のデジタルコンテンツを製作したり,印刷物用のデータを製作する機会は大幅に増えていくことであろう。


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印刷物とデジタルコンテンツの製作プロセスの進化
−書籍・辞書・商品カタログ等で加速するクロスメディアパブリッシング−

2004/08/24 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会