デジタル印刷システムの現状の問題点は、何と言っても1枚当たりコストの高さである。ゼロックスは、ドルッパ2004において、「iGen3」のカウンター料金を、オフセット印刷によるコストとの境目が2000枚程度になるようにすると発表したと聞く。もしそれが全てのコストを含めて2000枚ということであれば、印刷業界から絶大なる歓迎の意が示されるはずである。
1枚当たりコストというときには、単に印刷工程だけにおけるコストだけではなく、ページ単位のデータが出来てから印刷物として完成、必要なところに届けられるまでの全てのコストを含めた比較でもよいはずである。ドルッパ2004では、JDFワークフローの中にデジタル印刷機を位置付けたり、後加工との連携の展示が見られたが、上記のような視点からは当然のことである。
一方、従来、グラビア印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷で印刷されていた特殊印刷分野での利用は拡大しつつある。Drupa2004では、UVインキを使用したインキジェットプリンターが注目された。ただし、従来のグラビア印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷が担っていた大量印刷を代替するのではなく、小ロット印刷に新しい選択肢を加えたということである。
グラビア印刷の最大の問題は何といっても環境問題である。UVインキが使えないためにVOC対策としては水性グラビア化が大きな課題となっており、その研究開発、導入が進められている。
しかし、7年間かけて水性グラビア比率を60%強にまで高めたコンバータが「水性グラビアは油性グラビアの代替ではない。全く別の新しい印刷技術であり方法である」というように、ハードルはかなり高い。乾燥性の問題、被印刷体との濡れ、インキの潤滑性などに直接関わる要因が複雑に絡み合うからであり、インキ、版、被印刷体、印刷機それぞれの改良が必要になる。また、技術的な問題の解決とともにコスト高の問題にも対処しなければならない。
「埼玉県生活環境保全条例」をクリアすることが当面の目標と思われるが、ハイブリッドインキやアルコール量を30%以下に押さえたインキを使いながらVOC量0%を目指していくことになるようだ。現時点における水性グラビアの到達度は6合目当たりというのが業界人の評価である。
現時点でのグラビア印刷の水性化率は5%未満と推測されているが、利用者の声は概ね良好である。水性グラビア印刷の採用例は食品パッケージで圧倒的に多いが、「臭気」がないことに大きなメリットを感じている。品質についても問題ない。あとはコスト高の問題が残されている。
フレキソ印刷が日本で伸びない最大の要因は品質である。軟包装の印刷では、技術的には200線での印刷も可能だが、総合的にみると120線が推奨のようだ。グラビアに対する解像度、グラデーションにおける品質差は否めないだろう。ただし、品質に関してはもともとオーバースペックが要求され、エンドユーザーの目から見れば品質的に十分といえる分野は多いはずである。もうひとつ、製版資材のコスト高という要因もあるが、これについては市場の伸びともに薄れていくだろう。
いずれにしても、環境問題への対応がより深刻な課題になることは間違いなく、グラビア印刷に対してはUVインキや電子線硬化型インキを使えることは有利である。また、水性フレキソ印刷も目指される。ヨーロッパでは、段ボール印刷で100%、紙器印刷で47%が水性インキで印刷されている。したがって、紙器印刷や段ボールの印刷では水性フレキソインキ、フィルム印刷ではUVインキや電子線硬化型インキでのフレキソ印刷になるとみられている。
2004/08/31 00:00:00