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メディアビジネスは1日にして成らず

印刷業がマルチメディアに手を出し始めたのは1980年代中ごろからであるが、それは印刷ビジネスという母屋がしっかりしている間に次の投資をするという考えであった。それは今も変りはないが、母屋があることの有利さは絶対的なものではなかった。しかしないこともなかった。これまでずっとデジタルメディアで儲からないといわれてきたが、今日ではこのビジネスは印刷業の中に随分広がって、絶対金額では少なくとも黒字部門になったところは珍しくない。

印刷業は母屋があっただけ、白紙でデジタルメディアに取り組んでいる会社に比べて逆に意識が薄れるところもある。それはすでに会社としては成り立っているのでリスク管理のプレッシャーが少ないのと、デジタルメディアに半信半疑的な点があるのでビジョンやロードマップの構築などの詰めができていないことである。

新ビジネスを育てて利益が出るようになるまでにはいくつかの節目がある。それは、世の中の認知、ビジネスの足場固め、ビジネスの拡大、などのフェーズと考えても良い。最初の認知の段階は投資の段階でもあり、サービス提供者の利益とは関係なく、世の中に受け入れられるために努力しなければならない。トントンなら御の字で、関連業者と連合して成果第一に考えると共に、内部作業の最適化の模索をする。

足場固めの段階は、独自ノウハウ化を積み重ねて利益構造を作り出す段階で、よその物まねではできない。特にそのビジネスに関する内部の管理力向上が鍵で、トップの意識がその新ビジネスに集中している必要があるが、そこが印刷業の弱みといえるかもしれない。この先にやっとマーケットの拡大をして利潤を上げる段階が来る。ITの進歩は続くので内部作業の効率化の努力も怠れない。つまり実戦の活躍の場まで予選を勝ち抜くように自分を引き上げることが必要である。

過去を振り返るとデジタルメディアも徐々にではあるが、やはり約束どうりに物事は進んでいることがわかる。母屋の下で惰眠を貪っていても、ビジネスが進まないことに苛立っていても目標には近づかない。少し長い目でビジョンを作り、いつも少しづつ状況に合わせてビジネスの計画を立て、継続して管理する能力がデジタルメディアでのビジネスをも成功させるだろう。

通信&メディア研究会会報 VEHICLE 185号より

2004/08/30 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会