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UV・金・銀インキはリサイクルを阻害しない

現在、日本の古紙利用率は世界でトップ水準にあるが、2005年度における古紙利用率60%達成を目標にいろいろな取り組みが行われている。既に、段ボールなどの板紙の古紙利用率は約90%に達しているので、古紙利用率60%達成には、新聞、雑誌、印刷情報用紙などの「洋紙」の古紙利用促進が大きなポイントになっている。しかし、「洋紙」に要求される品質特性は非常に厳しく、古紙リサイクル阻害という観点から、印刷インキ、光沢加工材料にはより厳しい条件が課せられる。

この点に関して、エコマークでは、UVインキ、発泡インキ、金・銀・パールインキ(エコマーク認定インキを除く)を古紙リサイクル阻害要因として明記する一方、認定基準の解説において、「UVインキおよびPP貼りなどのラミネート加工などについては、リサイクルの阻害要因にならないとの意見があるため『印刷インキ』および『紙製品』の認定基準見直し時に全体的な関連から再度検討する」とされている。つまり、上記のようなインキ、表面加工材料が古紙リサイクルの阻害要因か否かの判断はグレーのまま残されていた。

日本印刷産業連合会は、平成15年度の調査事業として、オフセット印刷用金銀インキ、グラビア印刷用金インキ、UVハイブリッドインキ(完全硬化型)、UVハイブリッドインキ(酸化重合型)およびPP貼り等について、それらの材料を使って印刷、加工された紙の洋紙原料としての適性評価を行い、その結果を「古紙のリサイクルにおける阻害性要確認資材等のリサイクル適性試験に関する調査報告」としてまとめた。

同報告書によれば、オフセット用金インキ、オフセット用銀インキ、ハイブリッドUVインキ(完全硬化型)、ハイブリッドUVインキ(酸化重合型)の4種類については、印刷物として3%程度の混入率であれば、洋紙向け製紙原料としてのリサイクル適性に問題ないことが確認された。3%の混入率とは、実際に想定されるよりも相当高い水準である。また、これら4種類のインキの脱墨率については、白色度、ダート個数、ダート面積率の数値から、オフセット黒インキと同等又はそれ以上と評価できるとしている。
一方、グラビア用金インキは、洋紙向け原料としてのリサイクル適性は不可と判断された。しかし、グラビア用金インキの用途が、紙製容器包装(板紙)がほとんどであり、現状において紙製容器包装が洋紙向け原料に回ることは事実上考えられない。また、PP貼りについては、PPフィルムの微小原料裂片が多数検出されたため、洋紙原料向けのリサイクル適性は不可と判断された。ただし、板紙向け製紙原料としての利用は可能である。

上記報告書は、今回の適性試験の結果に基づいて、以下のような提言をしている。

1.オフセット印刷サービスグリーン基準の内容改定
日印産連グリーン基準の購入資材の項では、「金、銀、パールインキ等を使用しないこと」と明記されているが、この部分を今回の試験研究結果を反映した内容に改定する。

2.エコマーク「No.120紙製の印刷物」Version.2.2 の古紙の阻害要因の改定
エコマークでは、「UVインキ、発泡インキ、金・銀・パールインキ(エコマーク認定インキを除く)」を古紙リサイクル阻害要因として明記しているが、この部分について試験結果を反映した改定をする。

3.各社バラバラなリサイクル対応型紙製商品の評価手続きの一般化

4.リサイクル対応型紙製商品の受け入れ可能な工場拡大のための支援施策の具体化

5.リサイクル対応型紙製商品であることを表示する仕組みの整備

6.リサイクル対抗型紙製商品の必要性、意義等についてのユーザー等への普及啓蒙活動の実施

(「JAGAT info 2004年9月号」より)

2004/09/20 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会