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進む自動車のユビキタス化

カーナビはすでに普及しているが、その機能はいろいろなものが付け加わって、まだまだ進化し続ける様子である。そのひとつに車がいつどこを走ったかの記録をつけているという機能もあるだろう。これは業務上ではすでに使われているものである。自動車の中にコンピュータを置いて、携帯電話のような無線通信とGPSのような位置情報を組み合わせることで、今まで考えもしなかったことができるようになるので、自動車のユビキタス化が応用技術の開発のフロンティアになりつつある。

自動車がインテリジェントになることは以前から指向されていたが、それは主に運転する側をサポートする工夫であった。しかしインターネット自動車という名で出てきたときに、道路を走行中の自動車をセンサーにして、降雨や道路の混雑に関する情報を集めるという発想があった。これらは時々刻々と変化するものであり、しかも固定点における観測ではなく面的な広がりをもつものなので、従来は捉え得られなかった情報である。

当然この情報の用途も静的なものではなく、リアルタイムに加工して必要な人が利用できるようにしなければならないが、それはネットワーク社会ではどこからでも容易にアクセスが可能になっている。例えば交通事故が起こったところや通行規制があるところはすぐに分かるようになるだろうし、その影響でどのような迂回路を取るべきかも分かるようになるだろう。それだけではなく、自動車の急ブレーキがいつどこで多くかかるかがわかれば、事故の起きやすいところや起きやすい時間帯も予測できることになり、その区域に入るときに警告を出すようなこともできるようになるだろう。

今インターネット、GPS、カーナビなどについてタクシーでいろんなIT化実験が行われている。自動車に盗難対策の装置をつけておいて、盗難されたときにどこを走っているかをつきとめるとか、それを追跡する仕事を空きのタクシーに行わせるとかいうのは新しいビジネスを興すことになる。冒頭のタコメータによる運転記録や、あるいは運転者ごとの運転癖も情報として捉えられるようになると、運転適格者の評価もコンピュータで行うようになるだろう。

これらほとんどが官製のITプロジェクトとは関係なく行われていて、しかも日進月歩であり、世界でeJapanが中進国程度にしか評価されないのと対照的に、ユビキタスは日本の得意な分野といえるかもしれない。将来に人がコンピュータを着てユビキタスになる前段階として、自動車のユビキタスによって社会の情報インフラが作り変えられる段階があることが予想される。

通信&メディア研究会会報 VEHICLE 186号より

2004/09/30 00:00:00


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