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美粧ダンボール「マイクロフルート」への高品位印刷を実現

環境問題の重要性はますます高まり,その中でも特に急務を要するゴミ問題解決へ向けて,人に優しい素材が求められている。贈答箱や個装箱などに用いる高さの低い小さな段(マイクロフルート)の「美粧ダンボール」製造と印刷の開発に努め,世界的に見ても高品位な段ボール印刷をけん引している企業がダンボールメーカーでもある株式会社クラウンパッケージである。
今回導入した「ローランド900」(A倍5色+チャンバーコータ)によって,今まで果たせなかった「段をつぶさず洗濯板現象もない」Gフルート(G段)への高品位なカラー印刷が完成した。9月24日に奈良・橿原神宮にほど近い大阪事業所で開催されたオープンハウスで代表取締役社長 佐光守藏氏のお話を伺った。


(写真:左/佐光社長、中/ローランド900A倍判片面5色+チャンバーコータ、右/同社が製造する美粧段ボールなどの印刷物)

美粧ダンボール<マイクロフルート>を追求し続ける
クラウンパーケージ(本社:愛知県小牧市)は関連会社8社を含むグループ全体では1300人規模,年商285億円のダンボールメーカーである。1962年創業以来,Aフルート(A段,以下同じ)は1平米も生産したことがなく,当然,A式カートンも1個も生産していない。E段をベースにした美粧段ボールを開発し,さらにF段,G段と薄さを追求し続け,「同じ仕様の板紙に比べて2割軽く,環境にも優しい」マイクロフルートの専業者として市場をけん引している。全国の7工場において年間3億6000万平米の段ボールを生産しているが,3割がマイクロフルート(F段,G段)であるという。
美粧段ボール印刷を目指す同社にとっての悩みが,段ボールへの印刷にとって宿命とも見える洗濯板現象の解消であった。中芯が波打っている段ボールでは波の山と谷に当たるところでは当然印圧が違ってしまい,中芯の山谷が印刷でスジ目なってしまう,洗濯板現象が悩みの種であった。これを解消しようと内外の印刷機械メーカーと交渉した結果,ドイツのローランド社とKBA社が開発協力の手を上げてくれた。結果的にはローランド社との共同開発が始まった。7年に及び社内で生産したマイクロフルートと,日本のインキをコンテナでドイツに送り,エンジニア3名を1カ月滞在させることを毎年繰り返し,段をつぶさない「ローランド900-MFP」を完成させた。

最薄のマイクロフルート「Gプリント」がレベルアップ
同社ではマイクロフルートの中でも最薄であるG段への高級印刷をGプリントと呼んでブランド化している。最近の容器包装への顧客ニーズは,(1)環境対応,(2)品質,(3)価格という順で要求されるので,Gプリントは営業的には2桁の伸びであるという。このGプリントのレベルが「ローランド900-MFP」の導入でさらに高まったと言える。
なお,機番に付いているMFPとはマイクロフルート・パッケージの略である。印刷の技術的なポイントは,まずは用紙を比較的平らな状態で紙送りできるようになっているローランド機の設計思想と基本性能によるところが大きい。さらに紙粉除去のためにオキシドライを追加,そして最も大きな貢献を果たしているのが共同開発によるコンチェア社特製の超ソフトな専用ブランケットだろう。ローランド社と独占契約を結んだコンチェア社から提供されるブランは,全体の厚さが3mmもあり圧縮層のミクロスポンジは2mm弱もある。クラウンパッケージでは,従来から使用しているオフセット印刷機でマイクロフルートを印刷する時には洗濯板現象を出さないように,1胴目でわざと段をつぶして2胴目以降で印刷するという,印刷品質重視の方法をとっていた。当然ながら段ボールとしての特性が弱まってしまい,品質とのジレンマが付きまとっていたようだ。しかし,新規導入した「ローランド900-MFP」では段をつぶさず洗濯板現象も出さずに印刷できるようになり,印刷品質と段ボール品質の両立が確立できたと言える。同機はA倍5色+チャンバーコータの組み合わせで,厚膜のUVニスや水性ニスが使えるようにUVとIR両方の乾燥ランプを装備している。
同社は今までも,営業的には脱ギフト市場を目指してきたが,Gプリントの完成で,板紙印刷の中でも550g以上のコートボール,ノンコートボール市場への参入にも自信をもっている。しかし,同社の基本は段ボールメーカーなので,パートナーとなるべき紙器パッケージ関連の印刷会社に対しては,さらにGプリントのノウハウ提供も積極的に行っていくという。
Gプリントの成長と安定のための専門会社として,別法人として株式会社クラウンプリオ印刷が本年4月に設立されていて,「ローランド900-MFP」を中核マシンにしながら,経営ノウハウは印刷業70%,段ボール業30%という新しい業態の会社の創造を狙っている。新会社は段ボールの経験も印刷の経験も浅い30歳前後以下のメンバーで編成したということで,次世代を願う経営者の思いが伝わってくる。

グループにはショップ展開企業も
「紙に関する商品の企画立案から配送までをトータルにプロデュースする」を目指すクラウングループの一つに,生活者と直接ラッピング用品,包装資材の販売するためのショップ,株式会社包む(本社:東京都渋谷区宇田川町)がある。本社を若者が集う渋谷において,さまざまなラッピングアイテム,レター,ギフトカードなどの各種販売,店内での来店客へのラッピングサービス,さらに包むの延長として紙で作る収納家具(ラパピエ)への展開など,「包むもの 包むことを通して楽しさと豊かさをお届けする」を企業コンセプトに,さらに「ラッピング業界No.1の誇りをもち贈る人,贈られる人に/包むもの,包むことを通して喜びや楽しさのある/心のゆとりをプロデュースする会社」という企業理念で運営されている。首都圏は渋谷本店,新宿高島屋店,東武池袋店,相模大野店,大泉店,関西は高島屋京都店,八尾西武店,またJR名古屋タカシマヤ店などにショップ展開している。

注:段ボールの波形部を構成する段(フルート)はA〜C段の3種類がJIS Z 1516外装用段ボールで規定されている。
E〜G段のいわゆるマイクロフルートにJIS規定はない。
段の種類 段の数/30cm 段の高さ
A段 34±2 約4.5〜4.8mm
B段 50±2 約2.5〜2.8mm
C段 40±2 約3.5〜3.8mm
E段(マイクロフルート) 約95 約1.2mm
F段(マイクロフルート) 約120 約0.6mm
G段(マイクロフルート) 約177 約0.5mm

JAGAT info 2004年10月号より

2004/10/12 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会