本記事は、アーカイブに保存されている過去の記事です。最新の情報は、公益社団法人日本印刷技術協会(JAGAT)サイトをご確認ください。

また大きな山に挑むドキュメントシステム

日本語ワープロが登場したときに、ワープロの機能は過去に比べるものがないとしても、ドット文字の文書の違和感があった。日本語ワープロ専用機からMicrosoftWordに乗り換えた時も、やはり見た目の違和感というものはあった。DTPであっても違和感の持たれた時代はあった。しかし、新たな文書システムの見た目の違和感というのは、時とともに2つの理由で乗り越えられていくものだ。
第1は見る側の慣れで、新たなシステムを使う人が常識を逸脱していなければ、見る人に合わせて見栄えの改良はされていくのは時間の問題である。第2の理由は、使って便利であるという機能性が「慣れ」をシフトさせる。システムの開発側は機能性の向上によって使わずにはいられないところまで改良を積み重ねなければ、既存のエリアに割って入ってビジネスはできない。

この2つの要素はともに技術革新によって時とともに新システムに有利になることは、冒頭の文書システムにおける近年の変化で理解できるだろう。ではこれから似たようなことがどんなところで起こるのだろうか? それはプリンタ出力が従来の印刷物と同等に馴染んだものになることと、自動組版・自動レイアウトによる紙面作りであろう。
すでに両技術とも我々の身近で使われている。プリンタの活用は今更説明の必要はない。しかし多くのオフィス文書は今はWordなどで手作業で作成されている。一方、自動組版・自動レイアウトはプロの世界で情報誌・カタログなどの分野で発達し、今それがDTPで再現されつつある。では両者がコンピュータの上で融合するときに何が生まれるか考えてもらいたい。

答えはバリアブルプリントで、これから紙面を発生させるツールが順次出てきて、定型化した文書は量の多少を問わずに自動作成、自動配信されるようになるだろう。オフィスで請求書をコンピュータで処理しても、郵送の段になると手作業という現状は奇妙なものであるが、当然ながら大量に請求するものは以前からバリアブルプリントされていて、しかもそれは「伝票」を送りつけるスタイルから、顧客とコミュニケーションをするものへと代わりつつある。それと似たものが一般化していくと考えられる。
しかし現在はバリアブルでDMをしようとしても、コストや見栄えでの競争で困難に思えることもあろう。冒頭のように見栄えの違和感は減っていく方向にある。だから見栄えに足をすくわれることなく、この技術が使われる背景を考え、その機能の必然性を理解して、バリアブルDMの企画をたてなければならない。

バリアブルDMはまだ急には動き出さないだろうが、逆に我々は動き出すまでに準備すべきことがある。その一つはバリアブルのデータ処理だが、それはそれでおいておいて、もう一つはプリント及び後加工に関する物的加工のノウハウである。オフィスのプリントは人間が1枚1枚見ながら、触りながら処理しているが、自動処理をするとなると、ミス・ロスを防ぐ方法や管理能力が必要になる。印刷会社などプロとしてバリアブルプリントの運用・管理する場合は、従来のオフセット印刷機に関してさまざまな知識やノウハウがあるように、プリンタに関しても新たな知識やノウハウが必要になる。

今日のバリアブルプリントに使われているプリンタの機構やその特長、またインキ・トナーの特長、使用できる用紙、後加工の方法などについて、また作業の流れの中で起こりえるトラブルや、その対処法などを今のうちに総合的に知っておくことが、バリアブルDMのビジネスに際して必要であろう。
JAGATでは、来る11月5日に「バリアブルDM製作・加工のポイント」に関するセミナーを開き、オフセット印刷の知識がある方を対象に、オフセット印刷および加工と対比して、バリアブルDMを製作するさまざまな出力機の機構的な特長、その用紙やインキ・トナーの特長、用途と出力機の選択、トラブル対策と品質管理、さらに後加工工程について知っておくべき事項を採り上げる予定である。
バリアブルのデータ処理に関しては印刷業が独断になることはないだろうが、見栄えの違和感をなくしていくことと、紙の加工に関するノウハウに関しては、やはり他の産業よりも断然有利な位置にあるので、今後も高精度なサービスを提供できるだろう。その土台はそろそろ着手しておかなければならない。

2004/10/11 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会