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標準資料が不可欠になるこれからのMIS

本稿では、今後の全体最適化にも対応するMISの姿として、「標準手順を軸とするMIS」を提言した(「標準手順計画を軸としたMISの骨格に関する試案」「標準工程手順を軸としたMISの具体化に向けて」参照)。この「標準手順を軸とするMIS」は、それ自体が利益の水漏れを防ぐという現在の課題を解消するものであるが、「標準工程手順」と「標準工数」という標準資料を媒介として「部門別利益管理(PMP:Profit Management forPrinter)システム」(「代表的利益管理方式それぞれの得失」参照)と連動するものである(図)。


「標準手順を軸とするMIS」が全体最適化に対応できるのは、一般的には工程管理のベテランが頭の中で一緒に処理している日程計画の内容を「手順計画」と「スケジューリング」に分解して、出来る限り自動化を図るからである。具体的には、入力された製品仕様を元に、各社の標準資料としての「標準工程手順」を参照して「手順計画」を自動生成する。スケジューリングについては、最低限、各工程負荷の山積み計算までを自動化する。出来ればスケジューラーを繋げて日程計画をシミュレーションすることが目標である。各工程への負荷の山積み、あるいはスケジューラーによるスケジューリングのシミュレーションのためには「標準工数」が必要になる。

一方、「標準手順を軸とするMIS」は、上記のように製品仕様から生成する「手順計画」を使った見積もり計算のシミュレーション機能を持つ。各営業マンが見積もり金額を算出するときに、その仕様を入力することによって各社毎に決めておいた「標準工程手順」に基づく「社内仕切価格」あるいは社内仕切価格を元に作る「社内事前売価」をコンピュータが自動算出する仕組みにする。各営業マンは、ここで出された価格を元に「Pricing」によって見積もり価格を決める「『ing思想』に基づく経営管理の基本的考え方」参照)。したがって、各営業マンがたとえ正しく積算をしても、その根拠(手順計画)が異なるために利益を失うような数字を最初から排除することができる(「見積もりを考える」)参照)。
ここで使う「社内仕切価格」の設定には、先に説明した「標準工程手順」と「標準工数」が使われる。ここにおいて、「見積もり」と「日程計画作成」の自動化を目指すMISは、図に示すとおりJAGATが提唱している部門別利益管理システムと連動することになる。

JAGATの部門別利益管理システムでは、「社内仕切価格」が重要な役割を果たす。社内仕切価格とは、各現場にとっては、営業に売り渡す価格であり、営業にとっては生産各現場から仕入れる価格である。この価格は、一定期間(通常は1年)は変更しない価格であり、その期間においては、どのようなケースでも基準値として一律に適用されるものである。この仕切価格は、三つの資料から作れられる。ひとつは、部門別予算を元に作る、各生産部門の単位当り(1人1時間、あるいは機械1台1時間等)に産出すべき価値(売上高または加工高)である。あとのふたつの資料が、先に触れた「標準工程手順」と「標準工数」である。
図に示すとおり、社内仕切価格は、「単位当り産出目標価値」と「標準工数」を掛け合わせて産出する(社内仕切価格=単位当り産出目標価値×標準工数)。ここで、各生産部門が産出すべき単位当り価値は部門別予算から設定する。標準工数は、「標準工程手順」に対応する「仕切価格項目」毎(難易度別)に設定する。標準工程手順に社内仕切価格項目が対応するということは、標準工程手順に含まれる項目は、すべて社内仕切価格表に記載されているということである。逆に、社内仕切価格表に記載されていても、必ずしも標準工程手順にその項目はなくても良い。このようにして設定した仕切価格の一覧が「仕切価格表」である。
実際に行なった仕事のデータは、「標準工程手順」、「標準工数」の妥当性チェックに使われる。当時に、予算へもフィードバックされ、「社内仕切価格」に反映されることになる。 このフィードバックを含めてPDCAサイクルが回されていくことになる。

以上のように、「標準資料」をシステムに組み込むことによって、PDCAサイクルを仕組みとして含み、利益の水漏れを防ぎ、全体最適化に対応するMISを構築することができる。ポイントは「標準資料」である。
印刷業界で「標準」というと机上の空論であるといった見方が圧倒的であり、本稿の読者にもそのように考えている方は多いのではないだろうか?そのような方々には、本稿で紹介した参照ページ以外に、「スケジューラ利用の問題点」「全体最適の視点から見直すべき見積もりソフトの利用」等もお読みいただきたい。

MISページ
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2004/10/27 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会