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XML Webサービスによるコンテンツ配信サービス

従来のWebでは,コンテンツを見せることはできるが,コンテンツを自由に利用することは難しい。このためコンテンツをHTMLではなくXMLで配信することが求められる。XML Webサービスは,Web技術を利用してソフトウエア機能をネットワークで利用できるようにする。コンテンツ配信に特化したものではなくWebを利用してソフトウエアの機能自体のサービスを提供する。そのためコンテンツをどうサービス提供できるかが一つの課題である。

WebアプリケーションとWebサービス

今までのASPと呼ばれたものも含めてWebアプリケーションは,ユーザがブラウザを介して提供する機能を使っていく形態になる。
XML Webサービスは,部品となっている機能を提供するというサービスになる。それは「メソッド&データ」として,コンテンツ,データと一体になった部品群を提供する。このためユーザサイドは,それぞれの目的に応じてメソッドとデータを使いアプリケーションを構築できる。柔軟な開発ができ,それがWeb上で利用できる。Webサービスは固有のアプリケーションを使うのではなく,自らカスタマイズして利用できる違いがある。
アプリケーションでは,最初に業務で使う場合に,パッケージのまま使うと物足りないとか,使い勝手が悪い部分が出てくる。Webサービスはその業務に適した自らの目的に合わせて,部品を使って構築できる。これがWebアプリケーションとWebサービスの違いである。

所有から利用へ

「ソフトの所有から利用へ,オブジェクト指向からサービス指向への転換」ということで,オブジェクト指向のアーキテクチャから,最近SOA(Service Oriented Architecture)と呼ばれているサービス指向への転換が言われている。
これまでは,多くのソフトを購入,開発してきたが,その維持管理に費用が掛かり,新たにシステムを再構築できないという事情から,かなり時代遅れの古いシステムが残っている。そのためハードが壊れるとソフト自体が使えなくなるという事態も起きてくる。OSも2,3年で完全に互換性がなくなってしまう。これからは「所有」から「利用」に変わらなければ先へ進めなくなる。

Webサービスを活用したコンテンツビジネス

Webサービスを活用したコンテンツビジネスは,これから大きな市場を形成してくるであろう。それぞれ得意とする分野のコンテンツやサービスの提供を,Webサービスを介して一般の利用者あるいは会社に提供することが可能である。
Webサービスを構築すると,サービスの検索機能であるUDDIに登録して検索ができる。そして,目的とするWebサービスを検索し,それを利用することができる仕組みである。コンテンツやアプリケーションをサービスし,エンドユーザはそのまま直接使うこともできれば,業務システムと連携した利用方法も考えられる。この手のサービスを利用して,もっているコンテンツとかアプリケーションを有効活用できる。

代表的なWebサービスの事例としては,AmazonのWebサービスやGoogleなどがある。また東京ガスが始めた「GeOAP」という地理情報サービスがあり,XMLのWebサービスを利用した地理情報サービスとしては国内で初めてである。似たものに,米国向けにマイクロソフトのMapPoint Web Servicesがある。
地理情報サービスには,スターバックスやマクドナルドの店舗紹介,NTT関係がiタウンページで「きらきら広告」という広告を展開しており,それを参照した人が,広告主の周辺にどのくらいいるかを広告主にフィードバックするサービスなどがある。

コンテンツ提供者の位置付け

こうしたWebサービスの中で,コンテンツ提供者の位置付けはどうか。
コンテンツとアプリケーション,Webサービス,ミドルウエアが一つのWebサービスであり,後,課金システムが用意されている。この中で,コンテンツ提供会社は得意とする分野のコンテンツをこのWebサービス上で提供していく。利用者はそれに応じて,必要なものを利用していくことになるが,アプリケーションを開発する会社は,得意なアプリケーションをこのようなコンテンツを利用しながら開発して,利用者に提供していく。課金としては,その利用者から使用料を取り,コンテンツ提供者やアプリケーション開発者に,その利用量に応じた支払いを行うといったようなビジネスモデルになる。

コンテンツそのものをパッケージとして売るのではなく,利用者が使いたい部分だけ,使いたい量を使って,その部分に課金されるので,コンテンツの部分販売が無理なく行えることが一つ挙げられる。
チャネルについても,無理なくチャネルが増えるので,コンテンツの購買機会の拡大になる。こうしたサイトでそれぞれもっているコンテンツがPRされ,その意味でもメリットがある。同様に,アプリケーション開発を行ってサービスを提供する場合にも,アプリケーションの購買機会とかPRの面でも有効であり,アプリケーションの機能を部分的に切り売りできる。

地理情報のWebサービス「GeOAP」

地理情報を処理するために必要な機能をWebサービスで提供している。今までGIS,地理情報システムのエンジンを購入しアプリケーションを開発すると,エンジンのライセンスも本格的なもので数十万円から数百万円掛かり,またクライアント数によりライセンスの費用が変わってくる。インターネットで不特定多数に利用させると,まずエンジン部分でかなりの費用が掛かり,数百万円から数千万円の負担となる。地図データも同様で費用が掛かる。Webサービスで提供すれば,安価に目的としているサービスの提供ができ,その機能を使い地理情報に関わる新たなアプリケーションあるいはサービスの提供ができる。

このWebサービスの利用は,マイクロソフトのOfficeにマクロコーディングで,自分の会社で使えるようなアプリケーションを作れる。あるいは社内のアプリケーションの中に,「GeOAP」の地理情報Webサービスのメソッドを利用できる。もちろんWebのブラウザの中で使うこともできる。
現在提供している地図のコンテンツは,アルプス社,昭文社,国際航業,それから国土地理院の数値地図の利用が可能である。後は目標物のデータで,バス停,病院,コンビニなどといったコンテンツも用意され,例えば,ある住所付近の目標物を検索してくることがユーザサイドで,自由に簡単にコーディングし利用できる。

GeOAP(http://www.geoap.jp/)のトップページに「体験コーナー」がある。ブラウザで行う場合と,アプリケーションで利用する場合,Excelで利用するメニューになっている。「開発の手引き」も,すべて公開している。
このサービスの課金方式は,それぞれのメソッドにポイントが設けてあり,例えば単純な地図を出力すると1回当たり10ポイントで,地図のプロットは1点当たり1ポイントとか,スクロールは3ポイントなどと決まっている。Aプランで1万2千円で5000ポイントが使える。超過分は1ポイント3円で,月ごとに何ポイントでいくらという請求を行っている。(通信&メディア研究会)

出典:社団法人 日本印刷技術協会 機関誌 JAGAT info 2004年11月号

2004/11/07 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会