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ワンストップデジタル印刷サービスを提供

デジタルプリントならではの本来の役割は,データベースに収められている可変情報の印刷ができることである。それによってパーソナライズした市場の開拓が期待できる。
今回は,可変印刷の特長を生かし,デジタル印刷ソリューションとワンストップデジタル印刷サービスを展開している株式会社オーピーエス代表取締役林護氏にお話を伺った。

IBMのビジネスパートナー
オーピーエス(本社・神奈川県横浜市)は,デジタルプリンタを中心にしたデジタル印刷サービスプロバイダーとして2001年11月に設立された。前身は1996年に開所した日本アイ・ビー・エムのプリンティング・システムズ事業部PODセンターであり,運用業務をアイメスに委託したことに緒を発している。その後,アイメスの横浜事業所閉鎖に伴い,PODセンターの運用業務を継続する会社として同社が設立された。
ただし,現状は日本アイ・ビー・エムとは資本関係はなく,あくまでも主要取引先であり,またビジネスパートナーとして関わっている。プリンタビジネスに深く関わりのある製紙会社,用紙処理機器製造販売,メール機器販売会社などと若干の個人が同社に出資している。
「IBMが600dpiのプリンタを製造していると言っても実物を見ていただかないことには,お客様にはよく分からない。当初はショールームとしての役割があった」と言うように,元はIBMプリンタの高機能性を実践する場としての意味合いが強かった。
業務はIBMのマニュアルのオンデマンド印刷からスタートした。英文マニュアルを手掛け,翌年には邦文マニュアルの印刷を開始した。オンデマンドであるからコストを下げ,在庫を減らすことになった。その後マニュアル印刷をIBMのマニュアルを統括している部門に移管した関係で,残った設備で印刷に参入することとなった。

IBM高機能プリンタを駆使したソリューション
現在の業務内容は,プリンタ,関連機器およびソリューションの販売,印刷関連ソリューション・ソフトウエア開発,プリンタ関連ソリューションのコンサルタントなどである。
主なソリューションは,(1)圧着はがき印刷,(2)EAN-128バーコード印刷,(3)ノーカーボンカット紙印刷,(4)オンデマンドプリントサービスになる。データ入力から帳票設計,印刷,メール業務まで大量一貫処理,原稿の入力やスキャンから,編集,印刷,製本,発送まで一貫サービスなど,ワンストップデジタル印刷サービスを提供している。
(1)圧着はがき印刷
上流の工程から印刷,さらに封入・封緘や発送までも請け負う。
サービスの特色は,紀州製紙,日本アイ・ビー・エムと共同開発の圧着用紙を利用したことであろう。定型サイズ以外にも同社仕様の変形サイズにも対応している。例えば従来のA4版Z折りの圧着はがきの場合,210×297mmの定型A4サイズでは1枚につき1通しか印刷できず,なおかつ不要部分が出てしまう。同社仕様のカット版2面取りZ折り圧着はがきサイズは,305×297mmの変形サイズで1枚当たり2通印刷ができ,不要な部分が出ない。一度に2通印刷することで,時間当たり約46%のスピードアップ,コスト面で約15%削減できる計算になるという。
(2)EAN-128バーコード印刷
日本で広く普及しているバーコードは,JANコードと呼ばれるものである。これはある特定の会社の特定製品を示すものである。EAN-128バーコードとは,国際EAN協会が中心となって商品コードから商品関連情報までをバーコードに盛り込めるようにデータの項目,桁数,バーコードの種類などについて標準化を図ったものである。国際的な標準化が制定されているので,物流管理などでの世界的な流れになっている。この新しいバーコード規格として注目されているEAN-128であるが,コンビニエンスストアでの公共料金などの料金代理収納に利用される。2006年6月までの猶予期間を設け,新コードに切り替わる。
EAN-128バーコードは,記録密度が高いため最新の印刷技術と規格が必要になる。同社ではこの新しいバーコードの印刷技術を開発して印刷サービスを行っている。印刷後にバーコード読み取り検証機を利用して,その正確性も確認できる。
EAN-128バーコード印刷を検討中の自治体・法人にも推奨できるという。同社では,このEAN-128バーコードの需要はこれから急速に増えると見込んでいる。
(3)ノーカーボンカット紙印刷
3枚複写のノーカーボンをカット紙で印刷して糊付けした。1枚目はフォーム印刷で色着けされているが,2枚目以降は白紙のオーバーレイである。カット紙でもOCRレベルの正確さを誇る。
損害保険の加入申込書など可変情報が生かせるもの,少量他品種に向いている。
(4)オンデマンドプリントサービス
・カラーオンデマンド
パンフレット,カタログ,名刺,名前入り絵本などバリアブルプリント。
・モノクロオンデマンド
帳票や各種マニュアル,書籍の印刷も行う。
・オンデマンド出版
原本のスキャニングから印刷・製本・発送をトータルでサポートする。
日本出版販売およびブッキングとのパートナーシップを組み,オンデマンド書籍の製造を行っている。個人向け出版などオフセットでできないものを扱っている。
ユニークなものは,子供の誕生日やクリスマスに贈る個人名入りの絵本の作成である。文中の登場人物を指定した名前に差し替えて載せることもできるので,世界でただ1冊の本が実現できる。これなどは隠れたベストセラーであるという。
個人本の場合,1冊のみの出版というケースが圧倒的に多いという。今までやりたくてもできなかったという需要に取り組んだ形になっている。
用紙に関しても書籍用の上質NIP紙のほかにアート紙や厚紙など幅広い用紙を利用できる。

価値観をどう高めるかが課題
2003年8月より日本アイ・ビー・エムのビジネスパートナーとしてIBM高機能プリンタの販売も開始した。同社がこれまで培ってきたノウハウ,帳票設計から印刷,メーリングまでの業務を一貫したソリューションとして販売提供している。またIBM以外のポストコンピュータのデータからデータ変換ソフトを使って,印刷することも可能である。
同社では,今後ともデジタル印刷サービスプロバイダーとしてさまざまなソリューションとサービスを提供していきたいとしている。
「プリンティングの'P'はプレゼンテーションの'P'でもある。表現の方法が多様化していくことによってプレゼンテーションも対応していく。価値観をどうやって高めるかが課題になる」。
印刷ビジネスにおけるコンテンツの重要性が改めて問われるゆえんである。

JAGAT info 2004年11月号より

2004/11/15 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会