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ネットワークストレージ・ソリューショで効率的な運用が可能に

特別対談
KPG(コダック ポリクローム グラフィックス)が提案するストレージ・ソリューション

コダック ポリクローム グラフィックス株式会社 製品統括本部 ソリューションズ ビジネス推進部 部長 加藤 晴康氏
社団法人日本印刷技術協会 研究調査部 主事 大久保 充

企業資産である情報データのやり取りがデジタルで行われるようになり,グラフィックアーツ業界,印刷業界各社におけるデジタルデータ量は加速度的に増え続けている。イメージファイル,印刷データなどのデータのコンテンツは,業界における最終成果物であるとともに,ビジネスそのものである。「情報は企業資産である」という認識に基づけば,増え続ける膨大なビジネスデータを安全に保存し,いつでも取り出せる容易さと迅速性が求められてくる。こうした対応には,多くの企業がNAS(Network Attached Storage)やSAN(Storage Area Network)といったネットワークストレージ・ソリューションを導入し,各サーバごとに分断されていたビジネス資産をネットワークで結び付け効率的な運用を果たすことを目指している。
コダック ポリクローム グラフィックス株式会社では,今夏,欧米で既に導入実績のあるNASプラットフォームソフトウエア「ExaStore(エグザストア)」を,グラフィックアーツ・印刷業界に向けて販売することになり,情報資産運用の課題解決に向けたソリューションの提案を目指している。JAGATでは,業界における重要性とそのポテンシャルの高さを伺うべく対談にご協力いただいた。

ますます高まるストレージの重要性
大久保 御社は,CTPやプルーフィング製品を中心にビジネス展開されている印象が強く,今回の取り扱い開始については大変興味深く捉えておりますが,なぜエグザストアの販売を開始されるようになったのでしょうか。
加藤 グラフィックアーツ業界において扱うデータ量が増え続けていることに着目したのが第一の要因です。例えば,A4サイズの340ppi,CMYKでTIFFのイメージデータの場合でさえ,A4サイズ1枚当たり65MB(メガバイト)のデータ量がありますので,A4サイズ15枚程度でも約1GB(ギガバイト)ものデータ量になります。当然,データ量は増え続けていくわけで,そうしたデータ量の蓄積に対してのソリューションが提供できないかと考えました。
大久保 印刷業界では,やはりCTPを核としたデジタルワークフローの中で,デジタル版下の取り置きも当然意識されていると思いますが。
加藤 もちろん,その背景にはCTPもありますが,そればかりではなく弊社の取り扱っている製品群がデジタル対応を基本としているからです。たとえば,プルーフデータに関しても,インターネットを介して,いつでも,どこからでも校正業務が行えるモニタ&リモート プルーフィングソリューションも近々登場します。つまり,印刷物に仕上がるまでの工程に紙を介さず,すべてデジタルで行うという考えを取っています。そうなれば,当然どこでデータを保管し,どうやって引き出し活用するかといったことが課題となってきます。それはまた,デジタルプリンティングへの対応にもつながっていきます。
大久保 つまりデータ製作の開始から終了まで,なおかつ製作終了後のデータの取り置きについてまでも,すべてのデジタルデータを管理するソリューションを提供できる「デジタルソリューション プロバイダー」としての強みでもあるわけですね。
ところで,従来のように社内だけで制作するといった閉じた環境では問題がなかったとしても,データをデジタル管理しネットワークを介してやり取りするとなると,情報セキュリティといったことも課題になるかと思われますが。
加藤 情報セキュリティに関しては,お客様の問題意識は高いですね。確かにデジタルプルーフや制作のコラボレーションといったことをネットワークで行うようになれば,ネットワークとシステムの両方のセキュリティが重要になります。セキュリティ機能は,個別ではなく全体で考えなければならない課題です。

特長はスケーラビリティとMac対応
大久保 印刷会社で取り扱うデータ量は,企業規模によってもばらつきがあるようですが,そうした規模別のソリューションについてはいかがでしょうか。
加藤 エグザストアの売りは何と言いましても,先進のモジュール化技術で非常に高いスケーラビリティを実現できることにあります。現状のNAS製品ですと,例えば「2TB(テラバイト)であればこのモデル」「3TB以上であればあのモデル」といったように,データ量ごとに各グレードのモデルがあり,企業規模やデータ量によって買い替えや新規サーバの追加購入が発生します。一方エグザストアでは,少ない容量から始めて容量が増えるごとに,内部構成を増強するだけで対応できるため,データ容量が増えたとしても,そのようなコストが発生しません。この点が,従来のNAS製品との差別化になっています。また,ベンダー独自のハードウエアの制限にとらわれず,市販の標準ハードウエアであるIA(Intel Architecture)サーバやRAIDストレージで構築できますので,将来優れたハードや技術が現れた時にも対応が可能です。また,エグザメッシュ(ExaMesh)という固有技術をもち,実践的には制限を気にせずストレージ規模を拡大することができます。
大久保 グラフィックアーツ・印刷業界では依然として,Macintoshユーザも多いのですが,OS X以来,Windowsのファイルサポートを共有してきていますので,将来的にはWindowsだけのファイルサポート体制に一本化していくといった見方もあるようですが。
加藤 確かに将来的にはそのような見方もされています。エグザストアの場合は,UNIXのNFS,WindowsのCIFS,MacintoshのAFPなどの各ファイルプロトコルに対応し,既存のシステム資産を有効活用しつつスムーズな導入が可能です。

欧米の印刷業界で多くの導入実績
大久保 御社では,グラフィックアーツ・印刷業界において「デジタル ソリューション プロバイダー」として実績がおありですが,コンピュータメーカーではない御社が,NAS製品を扱うということについてのお客様の関心はいかがでしょうか。
加藤 日本国内では,まだ販売を開始したばかりですが,おかげさまで,セミナーに参加されたお客様や営業部門からの声を聞きましても,既にほかのコンピュータメーカー様のストレージ・システムの導入を検討されている場合でも,(弊社の)話を聞かせてほしいという要望を頂いており,弊社の取り扱いに対するご関心の高さを実感しております。
大久保 海外では,エグザストアは既に多くの導入実績があると伺っております。その辺りをお聞かせ願えませんでしょうか。
加藤 導入実績ということでは,アプライド グラフィックス テクノロジーズ(AGT),ニューズウィーク,ニューヨークタイムズ,デイリーニューズを始め,多くの著名な印刷・プリプレス会社,出版社,新聞社で活用されていますが,最近では,中堅の印刷会社やプリプレス会社での導入例が出てきています。たとえば,2004年4月に導入したアメリカのマーキュリー プリント プロダクション(導入事例ご参照)では,既に彼らのワークフローに欠かせないシステムとして24時間フル稼働しており,業界におけるデジタル コンテンツ マネジメントに大きく貢献するシステムであるとの評価をいただいています。

デジタル化に欠かせないソリューション
大久保 日本国内で展開されるには,システム部門をもっているような企業であれば問題ないとしましても,SANやNASといったストレージ・ソリューションを,インフラではなくアプリケーションという捉え方をされてしまう傾向があるかとも思われます。また,会社によっては,依然としてデジタルデータをCDに焼き付けて保存するといった方式を取っているところも多く,ストレージ・ソリューションに対する認識については,まだ浸透していない感もあります。ただ製品筐体(きょうたい)だけお見せしてもご理解いただけないのではないでしょうか。やはり,まずデジタルワークフローがあり,デジタルデータのやり取りにメリットを発揮できることをお伝えになることが必要と考えますが。
加藤 お客様の膨大化するデータの蓄積量という点だけを見ましても,CDで保存したり,個々のサーバに保管したりといったやり方では,容量の限界をすぐに超えてしまいます。このような問題意識を持ってさえいれば,その先には当然,データ保存・共有・活用方法といった具体的な課題(機能要求)が派生するわけで,必然的にこうしたソリューションが必要になってきます。ただ,NASについては,他社様でも手掛けられている製品ですが,対象としておりますマーケットではまだよくご理解いただいていない製品ですので,長期的な視野に立って考えていきたいと思っています。
大久保 確かに,エグザストアという製品単体で捉えた場合はそうした見方にもなるかもしれません。しかし,その他の製品群との協調によって,あらゆるデジタル・ソリューションが提供できるわけですし,そうした意味では,コンピュータ専業メーカー様に対する差別化となるわけです。当然,対象とされるグラフィック・アーツや印刷業界の中での御社の実績は既に広く認識されているわけですから,御社で取り扱われることへの信頼感は重要なポイントになると思います。何と言いましても,スケーラビリティは企業規模に依存しないわけですし,システム部門をお持ちのような企業様ばかりではなく,小さなデータ量,例えば1,2TBからでも導入ができ,またその後の拡張時にも高額な導入コストが掛からないという点は,会社経営にも役立つことができるので,大いに知っていただきたいソリューションだと思います。

■問い合わせ先
コダック ポリクローム グラフィックス株式会社
TEL 03-5282-1568
URL http://www.kpgraphics.co.jp/


■ 導入事例 ■
マーキュリー プリント プロダクション Mercury Print Production(米国・ニューヨーク州 ロチェスター)
データアクセスとストレージの信頼性を大幅に改善

新しいデジタルテクノロジーを積極的に取り入れ,顧客の幅広いニーズにワンストップでこたえている著名な総合印刷会社,マーキュリープリント プロダクション社は,2004年4月にエグザストア システムを導入しました。同社の情報システム マネジャーTodd C, Knipe 氏は,エグザストア導入の成果について,次のように述べています。「われわれは,相当長い時間を掛けて,市場のさまざまなストレージ・ソリューションを研究し,エグザストアを導入しました。現在,エグザストアは,新しいワークフローに欠くことのできないシステムとして,24時間休みなく稼働しています。
ここ数年間,われわれのデジタルデータのストレージに対するニーズは,幾何学的な速さで高まっていますが,エグザストアは,ニーズに応じてストレージの能力を拡張させることができます。そのため,現在だけでなく,将来にわたって最適なストレージ・ソリューションを提供してくれます。
エグザストアは,デジタルデータを1カ所にまとめて保管し,われわれのワークフローをシンプルなものにします。そして,データの処理量と取り扱い効率を著しく向上させてくれます。私は,エグザストアは,印刷業界におけるデジタルコンテンツマネジメントに,大きな影響を与えるシステムだと思います」。

月刊プリンターズサークル2004年11月号より抜粋

2004/11/11 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会