本記事は、アーカイブに保存されている過去の記事です。最新の情報は、公益社団法人日本印刷技術協会(JAGAT)サイトをご確認ください。

印刷発注を効率化するオンラインDTPソリューション

2004年8月のテキスト&グラフィックス研究会では,印刷の発注元向けのソリューションを開発している株式会社レゾロジックの代表取締役,池野 弘明氏に話を聞いた。同社のソリューションは,顧客サイドで特別な設備やオペレーション技術なしにレイアウト編集をおこない,印刷発注をおこなうもので,顧客サイドのトータルなワークフローを改善することができる。

LayoutMagicの概要

株式会社レゾロジックは,元々製図プログラムのCADを開発していた会社である。2次元CADの市場が縮小してきた時に,大日本印刷の営業からCADの精密なレイアウト技術があれば組版のようなことができるのではないかと言われ,SVGを使ったレイアウトを提案して採用された。それがきっかけになり,オンラインのDTPソリューションを30数システムくらい作ってきた。それが,LayoutMagicで,近々パッケージ化して発売する予定である。
XMLによるベクターグラフィックス記述規格のSVG形式データをWebブラウザ上に表示する方式を採用している。フォントはアウトライン化してWebブラウザ上で表示される。したがって,Webブラウザだけでレイアウト作成や編集を可能とし,離れた環境,異なったコンピュータ環境での共同作業を実現することができる。そしてPDF作成機能を用いて出力したPDFを,印刷会社に入稿する。発注者であるユーザ企業とデザイン会社,印刷会社の3者のインターネットでのコラボレーションを実現し,従来のレイアウト編集・印刷工程のプロセスを改善するものである。

基本的な仕組みは,インターネット上にDTPを行うようなサーバを1つ立てる。Webブラウザ越しにドキュメントを表示するが,SVGというフォーマットを使っている。画面表示にはAdobeが無償で提供しているSVG Viewer3.0というプラグインを利用している。このViewerを利用して,エンドユーザが文字を記入したり,素材を貼り込むといったレイアウト操作をおこなう。フォントはサーバ上にあるフォントをリアルタイムにクライアント側に見せるというテクノロジーを持っている。

サーバ上でレイアウトした結果,プレビュー用の低解像度PDFと印刷用の高解像度PDFを作り,ユーザ企業がOKなら,印刷会社でそれを吸い上げて印刷にかけるという流れになっている。

Web上で組版を行なうシステムには,凸版印刷の「Webチラシ」や,大日本印刷の「DNPカスタムドキュメント」というサービスがある。両方とも同様のコンセプトで,Webブラウザ上でチラシのレイアウトをおこない,テキストの文字を変更するということをしているが,最大の問題は,プレビューのとき,顧客の環境にないフォントを再現できないことである。LayoutMagicでは,フォントのライセンスはその都度必要になるが,サーバ上にある商用フォントをリアルタイムに表示しながらの編集が可能である。

世の中には,さまざまな組版,製版の支援システムがあるが,これはエンドユーザが使うという点で,少し趣が違う。従来はQuarkXPressにエクステンションを入れて組版を楽にするとか,制作側が楽になるツールが多かった。それを少し裾野を広げ,文字の入力等はエンドユーザに責任校正してもらい,最終データを作ってもらうという考えである。ただし,きちんと印刷でき,文字詰めにも対応し,商用フォントを使ったPDFでなければならないというところは守っている。

各社の事例

全国規模のスポーツクラブのチラシで,店長が自分の店に合うようにレイアウトし,印刷会社に入稿するというものがある。新規作成とすると,縦型のチラシや横型のチラシのテンプレートが出てくる。基本的なデザインは広告会社がおこなっており,バリアブルに変更する個々のパーツのレイアウトは,印刷会社のデザイナが基本デザインを流用してIllustratorでおこない,サーバ上のマスターに登録している。テンプレートを選択すると,SVG Viewerによってプレビューが表示される。
次に編集可能な部分の指示を与える。パーツをはめ込むレイアウトの場合は,一覧を表示してパーツを選択し,置いていく操作である。データベースから素材を引き出して,貼り込むという簡単な流れである。この結果がどのように印刷されるか,低解像度のPDFによるプレビューで確認する。レイアウトが完成すると印刷申請のワークフローへ回す。「これを5,000部印刷する」という伺いを次の管理者に送ると,承認待ちの状況になる。管理者には「承認申請があった」というメールが届く。管理者は承認のためのサイトにログオンする。まず,申請の合ったチラシを低解像度のPDFで見てみる。内容を確認し,問題なければ承認し,ワークフローにゴーの指示を出すと,印刷会社に正式の発注がかかる仕組みになっている。
テンプレートや素材パーツは,予めIllustratorで作り,SVGにしてマスターに登録している。次に,それをどう入れ替えさせるかという設定をおこなうオーサリング環境も合わせて提供される。

POSレジスターを製造販売している電機メーカーでは,流通情報ポータルサイトを運営している。その中にレジスターのユーザである飲食店が自分の店のメニューやPOPの印刷発注が簡単にできるというサイトを運営している。飲食店の店長が使うので,パソコンに疎い人でも使えるようになっている。自分の好きなデザインを押してボタンを押すというだけの作業になる。あとは文言をワープロのように入れるだけである。

ある家電メーカーの4,000の加盟店がOne to Oneのチラシを作り,自分のところのレーザプリンタで印刷したり,印刷会社にPDFで送るというシステムがある。単品チラシからプライスカードまで,いろいろなテンプレートがある。集合チラシを作る場合,メーカーの商品データベースと直結しており,売りたい商品を選択する。オープンプライスなので自分で値段を決めてOKボタンを押す。

ある飲料メーカーのキャンペーンのチラシがある。キャンペーンを打つ先は,ファーストフードチェーンや飲食店などである。そこで何種類ものドキュメントが発生する。ボトラーは20以上あり,その下にファーストフードチェーン店の顧客がある。各チェーンごとに,少しずつキャンペーン内容が違っているので,チラシも違うものを提供しなければならない。それを一気に片づけるということで,これはボトラーの営業が作っている。
キャンペーンを展開する店によって,当り賞品はA賞だけでいいとか,コーラではなくジュースがいいというようなことがある。それに合わせて毎回印刷会社と校正したり段取りするのは大変なので,全てWebで行う。文字入力については編集ボタンを押すだけである。最大のポイントは,このシステムを作る時間である。これは4月1日に初めて構想が立ち上がり,6月には印刷が終わっている。2ヵ月で立ち上がった。

レンタル会社では,レンタル用品の戻し品を再販するカタログがある。40ページを,レイアウト制作作業なしで,この会社の営業が作っている。
従来は年4回作っていたが,印刷した時点で,既に在庫と噛み合っていないカタログであった。今はリアルタイムにデータベースを参照して作っている。結果的に,年21回印刷することになった。このシステムを入れることによって印刷が増えたことになる。

2004/11/18 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会