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CTPの最新動向

CTPの普及
CTP化率をPS版とCTP版材の平米比率で見ると,CTP版が1/4を占めるまでになり、半裁以上の刷版を使用するところには,CTPがかなり行き渡ってきた。CTPによって刷版や印刷の時間短縮と品質が向上した,外注費が削減されたなど,入れて良かったというところが多い。これからは半裁,4裁といったサイズの印刷機を使うところへの普及が始まってきている。小ロット印刷ではアルミ版のCTPが必ずしも要るかというと,また違うこともあろう。最近はCTP導入にそれほどノウハウが必要なくなってきている。経営者がコストダウンの大きな手段はCTPだと認識しているところはCTP化が進んでいる。

CTP技術
現在普及しているサーマルCTPにおける開発の最終目標は無処理型CTPである。機材展などでもそれに近い製品や技術が,いろいろ発表されるようになってきた。製品化されているコニカミノルタのSimplateProは,PETベースの機上現像タイプであり,アグフアのAzuraは露光後,ガミング処理を施すだけでケミカル処理不要,10万部の耐刷力を兼ね備えた非アブレーション方式である。参考品であるが富士フイルムのプロセスレス(無処理)CTPはフォトポリマー重合という方式で,通常のサーマルCTPに近い100〜150ミリジュールの高感度を確保して現行のCTPレコーダーで製版できる。コダック・ポリクローム・グラフィクスのサーマルダイレクト・ノープロセスプレートは現像や水洗が一切不要のサーマルCTPプレートで,版上の残膜は印刷機の湿し水やインキで除去する機上現像タイプ200線で1〜98%の解像度をもつ。海外で材料ビジネスに参入し始めたクレオのClarus PLは砂目を出さないスイッチャブルポリマー方式である。また,drupa2004では三菱重工業がアルミ板の代わりに繰り返し使用するスリーブ状の版を使う画期的なCTPシステムであるPRS-X1(機側製版装置)を技術発表した。装置内部でアルミの版胴(スリーブ方式)に直接,プリマー塗布→イメージング→現像し,これをカットオフ長のAB切り替えができる専用オフ輪にセットして印刷,スリーブ版を再びRPSに戻して→クリーニング→再利用するというものである。

バイオレットCTP
半裁以下の機種では露光光源にバイオレット(紫外線)レーザを用いたCTPが各種発表されるようになってきた。海外では中小ロット向けに普及しているが,日本でもやっと注目され始めた。三菱製紙はアルミプレート用のVIPLASと,フレキシブルプレート用のFREDIAがあり,大日本スクリーンにはPlate Rite 3055Vi ,同2055Viがある。大床製作所はCTPのしにせクラウゼ社のLS-110V,日本エーエムには小型セッタで定評のあるECRM社のMAKOシリーズCTPがある。最初にバイオレットCTPを発売した日本アグフア・ゲバルトからは新たにPalladio 30Mが投入された。バイオレットCTPには民生用のDVDレコーダに使用されるレーザを使用し,しかも構造がシンプルな内面ドラム方式であるため,装置やメンテナンスコストの低減と長寿命が両立できるという特徴がある。しかし,開発当初のレーザ出力5ミリワット時代には高感度の銀塩タイププレートしか選べなかったが,現在は60ミリワットクラスが搭載されてフォトポリマーCTPプレートの露光も可能になった。さらに近未来に300mwレーザが実用化されると,バイオレットCTPでPS版を露光することが夢でなくなるかもしれない。

感光性による分類
版材を大別すると、可視光レーザーに対応する「光モードタイプ(ビジブル/バイオレット)」と赤外線レーザーに対応する「熱モードタイプ(サーマル)」に分かれる。

●光モードタイプ(ビジブル/バイオレット)
低〜中出力(数mW〜100mW)レーザーを用い高速スキャンニング露光するので、版材の感度は従来PS版の1,000〜10,000倍が必要である。感度の高い順(出力機のレーザーパワーが小さくて済む順)で光モードのプレートを並べると次のようになる。
(1)ハロゲン化銀(銀塩拡散転写法または銀塩とジアゾの複合系)
(2)電子写真法を利用した版材
(3)フォトポリマー

○銀塩DTR型プレート
超高感度(約1-10μJ/cm2)であり、数ミリワットの低出力レーザーのセッターでも書込み可能であること、アルゴンイオンレーザーから長波のredLDまで各種波長のレーザーに対応した品揃えが可能なこと、および解像力は300lpiが可能など特徴があるため、広く使われている。アルミニウム支持体の内型拡散転写(DTR)方式とポリエステルまたは紙支持体の外型拡散転写(DTR)方式とがある。当初は耐刷力が不十分だったが、現在ではかなり改良されてきている。

○電子写真型プレート
高感度(数μJ/cm2)であり、数ミリワットのLD780レーザーで紙またはフィルム支持体上の酸化亜鉛を光導電体とする電子写真感光層に露光する。

○フォトポリマー型プレート
中感度(100〜200μJ/cm2)で、数十ミリワット以上の中出力レーザーが使われる。処理システム、印刷適性,廃液処理などが従来のPS版とほぼ同等であることで、低解像度から高解像度(1,200〜4,000dpi)まで対応可能である。解像力はスクリーン線数で200lpiまで実用されている。

●熱モード(サーマル)
いずれも反応が遅く、光モードより3桁ほど低感度(100〜200mJ/cm2)なので、高出力(数W〜数十W)赤外線レーザーとの組み合せで使用される。3種類のシステムがある。
(1)熱反応タイプ:赤外線吸収による発熱で架橋反応などの化学反応を起こさせて現像液に対する溶解性を変化させる
(2)アブレーションタイプ:強力なエネルギーで照射部分を焼き飛ばす
(3)相変換タイプ:熱で親水性物質を親油性に(またはその逆に)変化させるだけの無処理となる

○熱反応型プレート
次のように画像形成が行われる。
(1)赤外線レーザー光を赤外線吸収色素が吸収して発熱する
(2)その熱で酸発生剤が分解して酸を発生させる
(3)次のプレヒート工程(約140℃30秒程度)の加熱と発生した酸の触媒作用によりレゾール樹脂を架橋硬化させる
(4)非硬化部を現像で除去して刷版を得る。露光部分が画像となるタイプだからネガタイプである
処理機器としては、プレヒートを行うオーブンおよび自動現像機が必要である。現像液は通常のポジPS版用に類似のアルカリ水溶液である。 プレヒートタイプは,画線部の強度はプレヒート工程で形成されるので、版面全体の均一な加熱が重要で、現像ラチチュードも従来のポジPS版よりは狭い。感度は低い(〜150mJ/cm2)ので大出力レーザーが用いられるが、1,200dpiなどの低解像度・高速書込用途には不向きである。
プレヒート不要なタイプが主流になっているが、耐刷性や高解像度への有利さからプレヒートタイプが中々捨て切れないメーカーもある。

○アブレーション型プレート/デブリ処理要・不要
高出力レーザーで照射部分を焼き飛ばす(アブレーション)方式、焼き飛ばしにより親水性層が除去されると親油性層が露出して、湿し水使用タイプの刷版となる。また、シリコーン層をこすり取って水なし平版とする、水無しタイプもある。 課題は、焼き飛ばしのゴミ(デブリ)の処理で、オンプレス型では版上のデブリを手で拭き取る、またCTPレコーダーでは内部にバキューム装置が必要になる。 オンプレス用途では、印刷機上で湿し水などによる表面処理を行ないデブリ処理が不要なタイプが出てきた。

○相変換型/無処理タイプ・簡易処理
特殊な親水性ポリマーで相変換またはスイッチャブルポリマーと呼ばれている。IRレーザーで描画すると親油性部分と親水性部分からなる画像ができる。LD830nmの赤外線レーザー対応で、露光のみの未処理であるが、砂目が出ない。

環境対応
CTPプレートが露光されるところまではデジタル技術であるが,プレートそのものや現像廃液,印刷インキの残肉,湿し水タンクの戦場廃液,各種洗浄剤,ウエスなどについての環境対応が需要になっている。富士フイルムのCTPプレート現像システムのデジタル・スタブロンでは,LCA(ライフサイクル・アセスメント)のCO2(二酸化炭素)換算濃度で,7年間自現機を稼働させた時に使用されるエネルギーから排出されるCO2を,従来機種の45パーセントカットを実現しており,設備選択において環境のキーワードが見逃せない視点になってきた。

●関連情報:JAGAT トピック技術セミナー 2004

2004/11/19 00:00:00


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