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デジタル家電でメディアのフロンティアが拓けるか?

日本の高度経済成長期に家電の三種の神器とか3Cとかが話題になった時は、日本が「アメリカに追いつけ」の時代であり、まだマーケティングも何もしないでも人々の基本的な欲求が分かりやすかった。紙メディアにおいても百科事典や全集物が売れるなど、「所有したい」という要求をベースにビジネスがなりたった時代であった。しかしそのような人々の欠乏感に根ざしたモノ作りの時代は終わり、いくら「あれば便利」そうなものを作っても、ヒットしないとか、ヒット期間が短いということで、国内的にはニーズの不明確さに苦しむ時代となった。

しかし日本の家電は世界の工場としてビジネスは拡大していった。一方日本のコンピュータメーカーは世界を征服することはできず、また世界のコンピュータ部品工場は東南アジアにシフトして、日本はAV製品開発に特化するような形となった。それはデジカメからビデオカメラ、放送機器、CD・DVD、フラットディスプレイなどで、日本の経済の牽引力としても期待されているが、これらは次第にコンピュータ化していくために、IT企業や東南アジアの板ばさみになって、競争は更に厳しくなっている。

そういった状況の打開のために日本の産業振興政策としては、日本の開発しているAV製品の上に、コンテンツ産業を育成したい意向があり、「コンテンツ振興法」(コンテンツの創造、保護及び活用の促進に関する法律)が平成16年6月4日公布・施行(一部、同年9月4日施行)され、資金調達や流通、権利侵害への対応、海外展開、公正取引、中小企業・消費者への配慮などを講じる国家戦略がかかげられた。実は韓国は2年前に同様な立法をし、もっと前から戦略化をしていて、すでに中国などにもコンテンツの提供者となっている。日本は従来は成り行き任せでアニメなどの輸出をしてきたが、コンテンツを軸にデジタル情報ビジネスを考えようとしている。

遅ればせながら日本がコンテンツ産業へのテコ入れをしようとしているのは、ポケモンや千と千尋の神隠しなど、世界的に評価を受けヒットしたものがあり、すでに世界のアニメの6割が日本製で、しかもその原作も日本の漫画から来ていることが多いように、日本にはこういったポップカルチャーのコンテンツを産みだす基盤がすでにあるからである。しかしコンテンツのビジネスに携わっているところは前近代的な経営をしていて、企業としての体力を高めることができないという泣き所があり、ビジネス面の改善を後押しすることも国の大きな課題になっている。

また技術的にはアメリカの映画がCG・デジタル化している面でも、日本の映像技術を振興する必要もある。国内の人材の底上げ、人材の発掘、コンテンツ新ビジネス支援、海外の海賊版対策などと、上記の経営面の改善など総合的な施策をすると、欧米の水準から考えて日本のコンテンツ産業は倍増できる余地があるとふんでいる人もいる。コンテンツビジネスというのは、別にインターネットやゲームなどのデジタルメディアだけでなく、紙媒体、音楽、放送、映画、キャラクター関連グッズなど、その関わりのある分野は広い。当然今日の印刷産業も経産省ではその仲間に入れられている。

日本は家電の工場としてだけではなく、コンテンツも含めて産業政策を考えるべき段階に来た。これらの業界にとっては、広がるデジタル家電を新たなメディアとして捉えて、健全な企業経営のもとにデジタルコンテンツのハンドリングの能力を高め、また今までにないビジネスモデルを考えてフロンティアを切り拓いていくチャンスがあるといえるのではないだろうか。

◆関連情報:JAGAT トピック技術セミナー2004 特別講演:「デジタル家電の現状と将来」

2004/11/23 00:00:00


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