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ITとパートナーシップで築くトータルサービス
「PAGE2004」概要報告

JAGAT情報レポート
VOL.6 No.3

2004年12月28日

社団法人日本印刷技術協会・テキスト&グラフィックス研究会

JAGAT主催のプリプレス総合イベント「PAGE2004」が,2月4〜6日,東京池袋・サンシャインシティコンベンションセンターTOKYOで開催された。「ITとパートナーシップで築くトータルサービス」をテーマに,出展者数122社,3日間の来場者数は合計で6万1520人と盛況のうちに終了した。今回は,新たな試みとしてDMビジネスショー「ポスタルフォーラム2004」との同時開催となった。また,PAGE2004では,各社単位の一般展示のほかに,印刷業界から新しい価値を生み出す可能性のあるテーマを集約したMIS/JDF,XML Publishing,先端技術の3つのテーマに沿ったZONEが設けられ,来場者の関心を集めていた。

●パートナーとともにバリューチェーンを築こう

印刷業界は,顧客の注文に応じて印刷物を製造し納入する立場であったし,現在もそれが主流である。しかし,顧客サイドでは,印刷物をソリューションの一部分であると認識し始めている。例えば,顧客がカタログやチラシを発注し印刷する目的は,商品の販売を増やすためである。編集・印刷のデジタル化,ネットワーク化によって,情報発信の手段が多様化しており,関連する業界もボーダレス化が進んでいる。印刷業界に対する期待も,印刷物を納入して終わりではなく,本来の目的をどれだけ満足させたかが問われるようになりつつある。このような視点で,パートナーとともに印刷のバリューチェーンを築いていこう,というコンセプトでPAGE2004は開催された。印刷機器ベンダーは,かつては新しい機器の提案が中心だったが,現在はソリューションという,形の見えにくいものの提案が増えていることも,その現れである。

●ポスタルフォーラムとの共同開催

ポスタルフォーラムは,2003年より発足した日本郵政公社が,ビジネス分野の郵便サービスを強化する目的で,JAGATのほか,日本ダイレクトメール協会,日本メーリングサービス協会との共同で開催したものである。従来,DPS(データプリントサービス)と言えば,高速モノクロ・レーザプリンタによるものが多かったが,カラー化・バリアブル印刷によって,付加価値の高い印刷が可能になってきた。またDMは均一化された内容から,大規模な顧客データベースに基づく個別な内容が要求されるようになってきた。これらを実現するオンデマンド・バリアブル印刷が注目されており,印刷業界とも密接に関連した内容となっていた。

● 活発な議論が交わされたコンファレンス

基調講演「変容する市場とビジネスモデルの再定義」では,ITを活用して新たなビジネスモデルを創設した事例について話があった。
PAGEコンファレンスは,各テーマに沿って先進的なチャレンジを取り上げ,共通する課題などについて議論が交わされている。グラフィックス,クロスメディア,MISの3トラックに分かれ,印刷業における課題を3分野から提示し,ディスカッションが行われた。
グラフィックス・トラックでは,多色印刷,デジタルカメラの画像生成技術,Unicodeをテーマとした技術動向について議論されていた。また,コンテンツ管理と自動レイアウト,Office2003によるXML生成,バリアブル印刷による教材制作のセッションでは,パートナーとの協業によって成果を生み出した事例の報告とディスカッションが行われていた。
クロスメディア・トラックでは,電子書籍,電子カタログビジネス,ナレッジマネジメント,コンテンツ管理,Webユーザビリティをテーマに技術動向や先進的な事例の紹介,議論が行われた。また,eラーニングやバリアブル印刷のセッションでは,学校,専門資格の取得教育,通信教育の現場において,均一化された紙の教材による教育だけでなく,クロスメディア,バリアブルプリンティング,Webを活用した取り組みが,パートナーシップとともに進められていることが紹介されていた。
MIS・トラックでは,印刷業におけるMIS,ネットワークによる顧客との連携強化,CIP4/JDFへの対応について,問題提起とディスカッションが行われていた。

● 差し迫った課題のためのセミナー

PAGEセミナーでは,印刷業界における新しい技術への取り組みについて,参加者が身に着ける場が提供されている。コンファレンス以上の大変な活況であった。
最も人気を集めていたのが,ISOで規格化され,広告業界を中心に注目されているPDF/Xである。印刷発注サイドにとっても,受け入れる印刷会社にとってもメリットが多いPDF/Xについて,さまざまな立場・観点からの検証と今後の課題について,示唆に富むものだった。
PDF/Xは,PDFの設定を制約することにより信頼性を高めるという現実的な発想によるもので,これらのセミナーの盛況ぶりから,今後の普及が急速に進むことが予想されるものである。 また,デジカメデータ入稿とRGBワークフロー,それに伴うカラーマネジメントに関するセミナーも同様に盛況であった。カメラマン・製版会社・印刷会社・撮影スタジオなどの立場から議論されていた。こちらも,今後の急速な普及が予想される。
また,印刷会社に求められる情報セキュリティというセミナーが盛況だった。そのほか,プロの組版品質,Windows出力のためのPDFワークフロー,クロスメディアでもうける,といったテーマでセミナーが行われていた。

● CIP4/JDFがもたらす印刷の近未来

コラボレーション・トラックでも,CIP4/JDFが取り上げられた。EFI社JDF担当シニアディレクターで,CIP4のマーケティング担当委員でもあるジョン・フェルマン氏が来日し,「CIP4/JDFがもたらす印刷の近未来」として,MISなど経営管理と生産機器の双方向接続によって,生産管理面では工場全体の最適化から,印刷取引全体の最適化までを目指すという方向性について話があった。全世界に共通した印刷業界の今後の方向性を示すものだった。
一般展示,JDF/MIS ZONEにおいても,主要プリプレスベンダーやMIS(経営管理システム)ベンダーから,多くのCIP4/JDFをベースとした印刷業務の効率化が紹介されていた。ハイデルベルグでは,JDF/CIP4対応のPDFワークフローの構築,PDFの作成からプリフライト,カラーマネジメント,トラッピング,面付け,出力までプリプレスの各処理を自動化し,仕事の進捗状況の正確なモニタリング,さらにオリーブ社の経営管理システムとの連携で受注管理データを直接機械へ伝えたり,機械上での仕事の進捗状況をMISへフィードバックすることを紹介していた。大日本スクリーンでも在庫管理・仕入れ発注・受注処理・顧客管理などを行うJDF対応の制作業務管理システムを紹介していた。クレオでは,Synaps InSiteといったWebのリモート校正システムとJDFによるワークフローRIPの連携を紹介していた。
DTPやCTPといった生産方式のデジタル化が完成に近づき,次のステップは生産・管理システムの統合による印刷業務全体の効率化,無駄の排除である。そのための手段がJDF/CIP4であり,drupa2004でも中心的なテーマとして取り上げられるだろう。これらは,単に製品の導入で実現するものではなく,経営管理手法そのものであり,製造業としての生産管理システムの構築が必須となる。

● 次世代のレイアウトとは

QuarkXPress6JはPAGE2004で初公開となり,多くの関心を集めていた。クォークジャパンのスポンサーズ・セミナーは超満員で,QuarkXPress6Jの開発コンセプトとして,生産効率の向上やクロスメディア対応が重視されていることが説明された。また,出荷時期が本年第2四半期であることが明言された。引き続き行われた説明とデモによると,QuarkXPress6Jは,MacOS X,Windows2000/XP上で動作し,新たに複数のドキュメントを総括して1ファイルとして扱えるプロジェクト機能や,高解像度プレビュー表示,レイヤー機能,表組み機能やマルチUndo機能,単独でのPDF書き出し機能などが追加されているという。最も大きな機能追加はクロスメディアパブリッシング機能で,ドキュメントを作成しながら同時にHTMLファイルを書き出すための機能が装備されている。また,組版エンジンには変更がないとのことだった。展示会場でも,終日人だかりが絶えなかったようだ。

一方,新世代DTPソリューションZONEでは,アップル,アドビシステムズやユーザである印刷会社の報告などのセミナーが開催されており,大勢の人を集めていた。アドビのInDesign CSは発売直後ということで特に関心を集めており,操作性や表示速度が大幅に改善されたことや,PDF/Xによるデータ入稿をアピールしていた。
そのほかに,キヤノンシステムソリューションズが,OS XとOpenTypeに対応したEDICOLOR7.0を発表していた。方正では,チラシ・情報誌向けのレイアウトソフトFounderFITとWeb入稿,情報誌制作の関連,および新聞組版ソフトMegalithを紹介していた。シンプルプロダクツでは,複雑なバリアブル編集が可能なツールForm Magicと,XMLデータをプログラムレスでレイアウトできるXML Automagic,また三菱電機と共同開発した製品カタログ制作ソリューションを紹介していた。各社ともXMLとの連携,クロスメディアソリューションの対応が中心になりつつあるようだ。
フォント製品では,OpenType形式の新書体が紹介されている。フォントワークスでは新シリーズの筑紫明朝,イワタは,弘道軒清朝体,イワタ宋朝体を紹介していた。モリサワは,従来フォントのOpenType版として,フォーク,新丸ゴを紹介していた。

● サーバ・面付け・出力関連

ビジュアル・プロセッシング・ジャパンでは,コンテンツデータベースソリューションとして,WebNative/Ventureを中心としたソリューションを紹介していた。三菱製紙では,定番の面付けソフトFACILISのVer4.0としてOS X,Windows2000/XP対応版を紹介していた。恒陽社の面付け職人は,QuarkXPressやInDesignのドキュメントレベルで,面付け設定を行う。プリプレスベンダーでは,PDFワークフローの内部に面付けが位置付けられているが,専用ソフトに対する需要も根強いようである。山櫻では,名刺ハガキ用の小型プリンタCARDMATEシリーズを紹介していた。また,富士フイルムグラフィックシステムズでは,オンデマンドプリンタのColorDocuTechシリーズとPPMLに対応したRIPのXcellentによるバリアブル印刷への対応や,専用インライン中綴じ折り製本機との接続を紹介していた。

● RGBワークフロー

スキャナの出展がほとんどなくなり,それに代わるのがデジカメデータ入稿を前提としたRGBワークフローである。大日本スクリーン,富士フイルムグラフィックシステムズ,ハイデルベルグではRGBの段階で画像を最適化し,用途に応じて色変換していくというRGBワークフローの提案が行われていた。前述のセミナーと同様に差し迫った課題として,関心を集めていた。

● テーマZONE

先端技術ZONEでは,さまざまな手法・技術による3D技術が紹介されていた。そのほか,先端技術としてはICタグの技術紹介,電子ブックデバイス,2次元コード,大サイズディスプレイの出展があり,注目を集めていた。このようなデバイス・技術は一見印刷業界と関連性が希薄なようでもあるが,将来的にコンテンツの品質向上や評価によって大きく普及するかどうかが左右されることなど,印刷技術とも共通している。

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見学者からは,画期的な新製品が出展されていないという声も少なくない。一方で新たなソリューションやパートナーとの協業によるビジネス拡大を模索している人たちにとっては,多くのヒント・示唆が得られたPAGE2004だったのではないだろうか。

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2004/11/29 00:00:00