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デジタルカメラが主流になる日

JAGAT情報レポート
VOL.6 No.3

2005年2月20日

社団法人日本印刷技術協会・テキスト&グラフィックス研究会

印刷におけるデジタルカメラのデータ入稿は,どこまで浸透していくのか。2003年12月のテキスト&グラフィックス研究会では,DTP・印刷の現場で急増しているデジタルカメラのデータ入稿の現状と課題について,ラボアルファチャンネルの伊藤哲氏にお話を伺ったので,概要を報告する。

●印刷上の問題点と撮影上の注意点

デジタルカメラの画像の特質から,印刷に良くない影響がある特徴としてはゴースト,フレアー,スミア,色飽和,ホワイトバランス精度の問題がある。カメラメーカー各社はさまざまな対策を取って,影響を軽減しつつある。またカメラのグレードによっても差異がある。
デジタルカメラと銀塩カメラの撮影上の違いで特徴的なものに,焦点距離,画角,CCDサイズ,被写界深度がある。
CCDサイズの小さなデジタルカメラだと,ピントの合う範囲が非常に広い。これは被写界深度が広いということである。CCDサイズが大きいデジタルカメラや,35mmフィルムは,ピントの合う範囲が非常に小さい。一部分しかはっきりしないで,後はみんなボケる。しかし,背景をボカして前景を浮き上がらせた,被写界深度の狭さを利用して写真を撮るようなカメラマンもたくさんいる。 また,デジタルカメラには,デジタルズームという拡大機構がたいてい付いている。しかし,デジタルズームは,実質的には解像度が低下するというのを承知して使う必要がある。
ほかに,デジタルカメラには液晶モニタが付いているため,非常に使いやすい。昔のコンパクトカメラでは光学式ファインダーしかなく,ファインダーの視野が不正確だった。デジタルカメラになって,一眼レフでもないのに液晶モニタが付いたことによって,視野が非常に正確に把握できるようになった。廉価なデジタルカメラでも正しい撮影範囲が確認できる。しかし,液晶モニタは撮影エリアは正確だが,色合いを確認できるほどの性能ではないし,暗い所に弱いという欠点もある。
デジタルカメラのホワイトバランスというのは,銀塩でいうとフィルムを取り替えているのに近く,どんどん色味を変えてしまう効果がある。
最近のデジタルカメラでは,Exifフォーマットが標準になっている。このフォーマットを使うと,どういうホワイトバランスで撮影したかが,後からでも分かるようになっている。マニュアル,オート,それ以外のモードでホワイトバランスを取ったのか。それによって,撮影者の意図が分かる。ところがオートで撮った場合,それはカメラマンの意図したものである場合と,カメラがバランスを合わせるのを失敗し,その色になってしまった可能性とがある。

●データを入稿する側の注意点

現在,デジタルカメラマンの団体や印刷・製版の団体の方と議論して,今後のデジタル入稿,RGB入稿に向けた参考書,冊子を準備している。そこでは,データの受け渡しをフォーマット化したいと考えている。検討している項目を挙げてみる。

  • 受け渡しするファイルのファイル形式,データサイズを伝えること。圧縮や加工の有無などのチェックになる。
  • 加工の有無とファイル作成ソフト名。どのようなソフトで作られたのか。受け側でも同じアプリケーションが必要になる。
  • ICCプロファイル。
  • 照明条件,ホワイトバランス設定。これは撮影方法である。デジタルデータの受け渡しだと,フィルム原稿と違い,カメラマンの意図が分からない。どういう意図でホワイトバランスを効かしたのかも必要である。
  • 撮影内容,撮影意図。カメラマンの意図を伝える必要がある。
  • 色見本。色見本によって意図している色合いが製版,印刷側にも伝わる。せっかく,デジタルになったのに,今さら色見本が必要かという論議も確かにある。カラーマネジメントをして正しい環境で確認をすれば,色見本は不要だが,実際には,理想的な環境が常にあるわけではなく,色見本を付けることが無難だろう。

●デジタルカメラデータを受け取る側の注意

現在,場合によってはRAWデータが入稿されてくることもある。RAWデータは,中級以上のデジタルカメラで採用している形式で,加工していない生の画像という意味でRAWと呼んでいる。製版,印刷側では,RAW画像を受け取っても,カメラマンの意図は分からない。また,RAW画像はデジタルカメラ固有のアプリケーションでないと開けない。受け取った側にそのメーカーのアプリケーションがあるとは限らないため,RAW画像での入稿はすべきではない。
デジタルカメラの画像データを受け取った時,ファイルの各属性を確認することが大事である。カラースペースは,sRGBなのかAdobeRGBなのか。コンパクトデジタルカメラでは,Exifフォーマットが使われており,sRGBだと分かるのだが,中級以上のカメラだとAdobeRGBやその他の色域なり,プロファイルを指定して広い色域を指定して渡すことも可能である。
受け取った側で間違って開くと,色がシフトして違う色が再現されてしまうことになる。 ファイル形式を確認することも重要である。生のデータなのか,レタッチされたデータなのか。TIFFフォーマットでPhotoshopのファイルになって来たとすれば,これはPhotoshopでレタッチをしたということが分かる。また,Photoshop上で解像度や,カラースペース(AdobeRGBかsRGBなのか)を確認することが重要である。

●デジタルカメラ入稿と今後のワークフロー

RGBのセパレーション(CMYK変換)は,どこでどうやるべきだろうか。
一般的にはRGB/CMYK変換にPhotoshopを使う。Photoshopでは,どの設定にするのか。Japan Standard V2を使うのか,それともそれ以外のプロファイルを使うのか。プリプレスメーカーからはColorGeniusや,F社からもデジタルカメラ専用の色分解アプリケーションが発売されており,それらを使う手もある。それによって色の確認法もマスキングの仕方も変わってくる。
デジタルカメラの多様性に対して,だれがどのように良い画像を作る保証をしていく必要があるのだろうか。有効な解決法としては,カラーマネジメントである。ただし,各カメラごとにプロファイルを作ろうとしても,1つのプロファイルでは絶対にカバーできるわけはなく,何千何万というプロファイリングが必要になり,現実的ではない。それの共通解としては,AdobeRGBやsRGBという環境になるだろう。それに満足できるのかという話は,かなり深い話になってくる。
カメラマンに話を聞くと,とにかくデジタルカメラはこれからどんどん使うというのが,主流の考え方である。コストメリット,時間メリットに勝るものはないということである。
デジタルカメラ本体の価格は高いが,銀塩フィルムを浪費している時に比べれば,すぐに元が取れる。当然RGBデータ渡しが日常化していくということになる。なかには,自分で色分解して製版側に4色データを渡すというカメラマンもいるが,実際には,ほとんどの場合RGBでもらったデータを製版,印刷側で処理することになる。
製版,印刷側では,RGB入稿が増加しているが,現状ではまだまだ試行錯誤の段階だと思う。RGBのハンドリングも未成熟で,どうやってうまくこなしていくかというのが大きな課題である。

2004/11/30 00:00:00