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意識改革としてのDTPエキスパート

たつみ印刷株式会社 取締役 新 道行

 
はじめに
ちょうどMacintoshが広まりつつあり,Illustrator,Photoshop,QuarkXPressが「3種の神器」と教えられたのを覚えています。DTPという言葉自体が何だか時代の先端といったイメージがあったのです。まだ私は業界に入ってまもなくの時でしたから,毎日が研修の日々でしたが当時研修先の社長が『プリンターズサークル』を教えてくれましたので「これは良い」と思い購読しておりました。まだそのころは今のものと違い,内容もDTPの初心者向けのことが多かったのではないかと記憶しています。その中にあった(今もありますが)DTPエキスパート認証試験対策講座は興味があったのでチェックしながらも別に参考書というよりは「知っとくと便利だな」という感じで目を通したくらいでした。その後急にデジタル化は進み,数年でデジタルワークフローの時代に変化していきました。
私自身は営業ですので現場での対応というよりは言葉で対応してきているのが現状でしたが,社内でのデジタル化が進み,顧客の入稿状態も変化してきた環境において,営業マンの個人差が大きくなっている問題を感じていました。営業からデータ入稿という形で内部に流されますが,中身が分からないままにプリプレス担当が苦労している状況が多く見られました。営業に関しては若干実務を研修したものもいればそうでない者もいて,社内のみの経験が多くの知識である状態でした。
何か共通知識の材料がないかと感じていたところ,DTPエキスパートはどうだろうか,と思い始めていたのです。ただ,噂でかなりハードだと聞いていましたので,まずは私が受けなければ分からないと思い,そろそろDTPエキスパートを受けようかどうしようか迷いながら実際に受験したのは2002年でした。

自分の経験
2002年8月の「第16期DTPエキスパート認証試験」に向け勉強をスタートしました。会社にも受けることは言いましたが,ごく数名のみにしておきました。社内に資格取得者はいなく,この時に受験したのは,私のほかに妻が「私も受けようかしら」と乗ってきましたので2人での勉強でした。彼女におきましては,印刷業界でデザイナー・オペレータとして現場経験豊富で非常にたくましく見えたのを思い出します。
さて,実際に始めてみると営業職の私にとってはつらい日々の始まりでありました。もちろん知識面でもほとんど覚えなければならず,また時間においてもなかなか自由に確保することが下手くそだったからです。その当時出版されていた参考書をほとんど購入し読んでみましたが,いまいち問題につながる覚え方ができないと感じたので,過去問題と今までの『プリンターズサークル』に出ていた問題を解くことから始めました。
まるで英単語を覚えるような感じで,問題を解くというより覚えていったというのが感想ですが,試験日がお盆休みの後でしたので,この期間は集中し,おそらくほとんど家から外出しなかったのではないかと思います。何しろ1カ月前に受けた模擬試験がありましたが,問題の量とマークシート用紙での回答にけっこう戸惑いました。この時までにけっこう勉強したと思っていただけに結果にも不安があったからだと思います。
そうして迎えた試験でしたが,長い1日が終わった帰り道は大きな不安と疲労感でいっぱいでした。
妻に「どうだった?」と聞くと「後は結果を待つしかないじゃないの」とけっこう割り切っていましたが,私は女々しく悩んでいた記憶があります。しかし,そんなことは関係なく今度は課題提出がプレッシャーを掛けてきましたので,やれることはやっておこうと,気分を切り替え製作を始めました。この課題製作が私にとっては難関であり,有資格者から課題について情報をもらったり,妻にチェックしてもらったりしながら,確か期限ぎりぎりの課題提出でした。
そうして何カ月後かに書類が届き,無事第16期DTPエキスパート認証試験合格となりました。

試験を終えて
この試験を終え,私はこの試験が非常に意味のあるものだと感じ始めました。この試験によってDTP作業のプロになったわけでもなければ,営業売り上げが格段に上がったわけでもありません。しかし,この過程で覚える知識は印刷業界の共通のベースであり,印刷業界内の共通言語なんだと私は感じております。また印刷業界人としての意識向上にも役立ったと感じています。そしてこの試験は,営業こそ受けるべきものであり,勉強する内容であると思った私は,弊社社長に「どうだ,DTPエキスパートは?」と聞かれた時に「全営業マンに知識の底上げとして必要かと思います」と意気込んで答えました。
18期におきまして,社長の号令の下,57名の受験者が集い,3カ月間,土曜日曜を勉強会にしてスタートしました。だいぶ営業からはブーイングもありましたが,結果として20名の合格者が出ました。受かった者,足りなかった者も勉強をしたことによるレベルアップをしたことは間違いなく,おのおの自信をもてる,もてないはあったかと思いますが,確実にお客様との原稿のやり取りや内部への入稿に関してスムーズになっています。続く20期におきましては9名受験し2名合格,そして22期には4名受験し2名合格しております。
営業・管理・プリプレス・プレス分野までの取得者・経験者がいることによって,プロセス間の共通言語・共通認識としてDTPエキスパートが役に立っていると思います。また,社員間でのライバル意識も出てきましたので社内も良い雰囲気にもなってきていると思います。

これから
現在,印刷業界は非常に厳しい時代であり,激しい競争も繰り広げられています。営業も内部ももっとプロ意識をもつべきだ,と弊社社長は言います。ではプロ化とは何なのか? 一人ひとりが自分の仕事を自覚し責任と誇りをもってまい進することが大切だと思うのです。
そうでなくても印刷業としての枠が印刷専門であれば別として,他業界にも広がっています。営業はより一層幅広い知識を求められますし,内部はより新しい技術を求められます。何か一つのアクションを起こす時,これまでの経験や知識といったさまざまな引き出しの中から選択・アレンジし,判断し,行動しますので,より多い知識があるほどより早い判断ができるのも事実でしょう。
そんなさまざまな知識の一つにDTPエキスパートの内容が社員のベース的な知識としてあればよいと考えています。これからも次世代を担う新人を含め,DTPエキスパートにどんどんチャレンジしていきながら,情報加工産業のプロフェッショナルを目指します。

 
(JAGAT info 2004年12月号)

 
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2004/12/08 00:00:00


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