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エリアマーケティングとプロモーションの一元化

通信販売や広告媒体において,印刷物と同じものが電子カタログや電子チラシの形態で見られることはもはや当たり前のことになってきている。Web通販カタログで買い物をすることに抵抗のない人も増えてきているだろう。
今回は,コンテンツ技術を利用して販売支援サービスを行っている事例を紹介したい。折り込み広告とインターネットをミックスしたビジネスを展開しているセブンネット株式会社デジタルコミュニケーション事業部の梁木孝次氏と三山庸和氏にエリアマーケティングビジネスについて伺った。

折り込み広告で全国エリアに展開
セブンネット(代表取締役社長 高取順一氏)は,1957年の創業以来,新聞の折り込み広告を中心に地域における広告・販売促進をサポートするため各種媒体の取り扱い,マーケティングサービスの提供を行っている。現在の主要業務は,折り込み広告,マーケティング,デジタルコミュニケーション,広告・SP・コンサルティングである。
首都圏に対しては,自社の配送センターから直接折り込み広告を配送している。また,全国折込ネットワークにより,折り込み可能な新聞であればすべて自社から出稿でき,地方新聞社やその系列の折り込み広告社とも強い信頼関係を築いている。関連会社のアイデムでは,業界最大約3800万部の新聞折り込みの求人紙を週刊で発行している。
事業の拡大化を図った時に,アナログとデジタルを融合した広告サービスを提供する目的で,デジタルコミュニケーション部門を開設した。戦略的なプランニングからASPサービスなどシステムソリューションを含めたマーケティングサービスを提供している。
パンフレットやチラシといった印刷物の折り込み広告による配布が中心であったが,インターネットの普及により,さまざまな仕掛けやコミュニケーションが可能になってきている。

電子出版制作サービス「EBook AD」を提供
折り込み広告で培ったエリアマーケティングのノウハウを基に,エリアマーケティングとエリアプロモーションの一元化を図っている。エリアに最適なプロモーションを実施し,そこで得られた媒体の効果測定や顧客データ把握をフィードバックする。地域情報や生活者動向,商圏を必要とする販売促進や新規開拓などのエリアマーケティングを行い,エリアに対し,エリアプロモーションとして,折り込み広告,DM,カタログ,パンフレット,タウン誌などがあり,その他インターネット,メール広告などITを使ったものも増えてきている。顧客の属性を見極め,地域のデータを数値化して,最適なエリアに最適なプロモーションを行うことができる。
最近は流通・小売系にもIT利用度が浸透して,スーパーなどがチラシをWebに公開していくケースも増えている。地域の中でWeb利用していく同社のエリアマーケティングの発想とマッチすることが多くなっている。また,高速インターネット環境の普及に伴い,今までのWebサイトからリッチメディアコンテンツを採用するサイトも増えている。顧客はいかにコストを下げ,効率良く配信するかを検討していかなくてはならない。
同社が提供するサービス「EBook AD(イーブック・アド)」は,チラシやカタログ,フリーペーパーなどの既存の広告制作物をインターネット経由により印刷物の利便性を損なわずに配信する,デジタルパブリッシングサービス・電子出版制作サービスである。
核となる技術には,韓国Digitomi社の電子出版技術「True EBook」を採用し,ASP方式で提供している。プラグインや専用アプリケーションなどのインストールが不要であり,特殊な環境を用意しなくてもいい。ワンクリックで電子カタログをスムーズに閲覧でき,しおり機能,検索機能,リンク機能などが備わっている。
電子チラシの場合は一覧性を高めるため全面に表示し,カタログの場合は見開き形式にするなど,印刷媒体そっくりなデジタル広告を作成できる。拡大機能は5段階までで,大きなサイズのチラシ広告にも使用でき,細かい表記にも対応できる。
広告主のメリットは,コストの削減はもちろんだが,アクセスログ分析によるマーケティング情報の入手もある。Book単位の総アクセス数,閲覧時間,時間帯別アクセス数,ページビュー・拡大ページビュー状況を分析レポート化するサービスもある。また各ページごとに詳細なページビュー状況やクリック分析レポートも可能である。また,ASPサービスなので短期間のキャンペーンなどに安価での利用も可能である。

「Yahoo!デリバー」でメール広告配信
また,ヤフーと業務提携し,ヤフーのメール広告配信サービス「Yahoo!デリバー」を利用して,新聞の折り込み広告と同じように小商圏別にメール広告配信ができるサービスを開始した。
「Yahoo!デリバー」は,現在登録されているYahoo! JAPAN IDのうち,メール広告のパーミッション(事前許諾)が得られている約886万ID(2004年2月現在)に向けて,ID登録情報の属性を指定して広告メールが配信できる広告商品である。これによって,Yahoo! JAPANの利用者向けに新聞の折り込み広告と同じように地域や生活に密着した折り込みチラシ情報を配信できる。新聞を購読しない若年層などに対してもアプローチが可能になる。
ターゲットとしては,小売・流通業,金融保険業,不動産業など,エリア別にチラシを主な販促に活用する広告主である。従来の新聞折り込み広告の営業活動に加えて,メール広告も連動したメディアミックスの広告展開を提案していく。
今後,広告の効果測定システムを利用し,アクセスレポートの作成などニーズ調査を行いながら,より小さな商圏エリア単位でのサービスを検討していく。広告主とインターネット利用者双方の顧客満足度向上を図っていく方針である。

折り込みとネットをミックスしたビジネスモデル
インターネットは夜見られていると思われがちだが,電子チラシの場合は,朝見られているケースが多い。朝刊の折り込み広告と同じように,スーパーのチラシをWebでチェックできる利点がある。
また,エリアマーケティングでアンケートを行うと,さまざまな声が聞こえてくる。例えば首都圏の賃貸住宅に在住の人から都下の不動産広告の要望があったり,逆に都下在住の人から新宿のデパートのチラシが欲しいという要望もある。
同じように「EBook AD」を利用しても,資料請求の率を上げるタイプのもの,来店誘導の告知などの効果を見たいものなど,商品や販売形態によって目的が異なるので,使い分けていく必要があるだろう。コンテンツの部分では,印刷会社とのアライアンスも図っていきたい。
電子広告は「印刷媒体そっくりに」制作できる点が強調されて,現状では奇麗に見せることに主眼がおかれているが,印刷媒体とシームレスに制作することで,データベース化を図ることができる。また,ソリューションの提供だけでなく,折り込み広告とインターネットをミックスしたビジネスモデルを構築していきたいという。

JAGAT info 2004年12月号より

2004/12/17 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会