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第6回JDFフォーラムジャパン報告

印刷機器ベンダーの開発関係の実務者によるJDF関連の情報交換会である第6回JDFフォーラムジャパンが12月3日に開催された。前半は10月24〜29日に京都で開催されたCIP4によるインターオペラビリティ会議(Interop)の報告が出席したベンダーのスタッフから、また後半はMIS/JDFによる合理化に取り組んでいる印刷会社の経営者から事例が紹介された。本稿では前半のInterop報告の概要を解説を加えて報告する。

JDFにおいて重要なことは自動化やプリセット、機械の稼動状況から原価などを算定することだけでなく、完了したJobをデータ蓄積して次回の同様な受注に際してJDFデータを再利用して入力の効率を上げること、JDFを利用して如何に発注元の意志である印刷仕様(Intent)を間違いなく速く生産部門に伝達するか、如何に効率の良い工程(Process)を設計し生産スループットを向上させるかのシミュレーションがリアルタイムでできること、そしてこれらの情報のやり取りを整流化していくことである。

例えば急に大量の受注があったときに、外注するのか社内で残業でこなすのか、納期・コストを比較してどちらが有利なのかという経営判断を、ベテラン工務の潜在能力に頼るのでなく、MISによってガラス張りによる皆が納得するような判断機能を持つことが必要であり、JDFはこのために重要なツールになる。

JDFワークフローの最初に来るProduct Intentは、MISで発注元が欲しい「物(what)」を、発注元の観点から記述したもので、パンフレットやチラシや本などの仕様であり、価格決定の要素が書くのであって、このでは「作り方(how)」は書かない。次に「Intentから工程への変換」を行なう、つまり「物/製品(what)」をつくるための「工程(how)」を導き出すこと、生産工程を決定するために、生産能力を分析すること、さらに各生産工程の間のつながりを決定することである。例えば「露光済みプレートはプリプレスからの出力であり、印刷への入力される」といったことである。さらに製品仕様が来たら、前にやった仕事を学習してくれて製造設計(How)をシミュレーションできる仕組みを作ることも重要もある。

この処理を行なうのは、実際の製品レベルではMISや、プリプレス・ワークフロー・システムや、印刷機のコントロール・システムや、後加工機のコントロール・システムなどが単独で、または役割りを分担するなどが想定でき、一般論としてどの製品であると明確な限定はできない。そしてMISに書かれていない、細部にわたる作業指示や、さらに現場責任者の暗黙知などが実際の生産に必要なので、MIS と生産をつなぐGrayBoxと呼ばれる部分がある。

つまりGrayBoxは工程の不完全な部分を補完する役割を持っている。MISから工程を見たときに重要なのはコストに影響する部分であって、コストに影響しない製造の上のパラメータはあまり重要ではないので、正確に書かれていないことも多い。さらに詳細な作業手順は省略されている。例えばMISではRIP変換は料金項目にあるので書かれるが、RIP内で処理されるトラッピングや色変換については書かれていないだろう。しかし、実際処理上はトラッピングパーセントやRGB-CMYK変換のパラメータは必要である。これらの部分を受け持つのがGrayBoxということになる。

CIP4が主催して開催されるInteropは第6回目になるが、日本で開催されるのは今回が初めてで大日本スクリーンがホスト役となり、10月24日に日本向けにチュートリアルが、25〜26日は開発者が一堂に会して互換テストが、27〜29日はJDF仕様の検討会議が、30日には幹部会が行なわれた。京都リサーチパークを会場にして電話会議での参加を含めて29社54人が参加した。

今回は日本での開催ということもあって初めて参加した国内のベンダーも多く、互換テストは技術者が短期間で多くの他社の技術者と交流できるメリットがあった。それに続く会議では、MISとプリプレスや印刷機、加工機のコントローラなどでの役割が重なってくるところもあり、JDFの仕様を決めるときにも、どこの役割にするのか、実際の仕事に対してどうかなどが話し合われた。京都での開催にはJDFが欧米ベンダー主導で仕様が決定されてしまう面があり、国内メーカーも日本の実情を反映するという狙いもあった。

会議の前日に開催されたチュートリアルではCIP4からハイデル社のDr.Riner Prosi氏の講演があったが、氏にはPAGE2005コンファレンス(2/3 E-1セッション)にもパネラーとして出席いただくことになっている。

25〜26日の互換テストでは持ち込まれた128の機器のうち、121の機器の接続が成功しており、会議ごとに確立が上がってきている。参加する製品数は減っているのであるが、接続数が増えていて、これは一つのソフトがマルチベンダーに対応してきているという結果になっている。JDFが柔軟に機能してきているということで、例えば、SCREENでも当初はJOB作成とJOB完了通知までで終わっていた接続が、今回は刷版終了通知ができるなど接続に深さが増してきている。またプリプレスから印刷へPPFを送付はJMFのリソースコマンドで送付できることに成功した。

27〜29日はいくつものワーキング会議が平行して行なわれた。MISワーキングは分かりやすくするということで7つに分割されて、ここでICSの仕様を決めていく。例えばプリプレスワーカーとかなど今まで無かったICSが加わってきた。また、JOBをアップデートするテーマなども、JOBの部分的な変更をどのように扱うかということが議論されている。リソースコマンドを使用してアップデート情報を通知していくことでよいだろうということになったが、これもICSに反映されてくる。

製版のワーキングでは、レイアウトのテンプレートをJDFに埋め込めないかという議論があったが、全て埋め込むには技術的にも難しいのでさらに確認しようとなった。レイアウトにどうページを配置するか、折りのパラメータにもなる、これと後加工の断裁をJDFで生成できるが、指示を入力したり、やり取りをどう整理するかと言う話があった。また、JDFでどのテンプレートを使うかを指示してもらえても、さらにノドを調整するような細部をJDFの再編集で行なうとなると、どこまでできるかなどがある。これに対して、面付けソフトが既に持っているテンプレートを呼んでくる方法もあるという提案もあったが、結論は出ていない。 インキ名の書き方では、MISとしては「特色」でよいが、プリプレスや印刷では例えばパントンの何番などが必要なので、カラープールの中のカラーのディスクリーとネームの中で扱うかというような議論がされた。

後加工のワーキングでは、今回は三方断裁をICSに加えることになった。またMISとプリプレスや印刷の関係と同じように、製本でも更新情報をどうデータに反映して行くかの議論があった。

JOBを途中で中止するときの対応について、走り始めているJOBをMISのコマンドで削除してしまうというのは危険なので、どのように扱うのか。また、注文の変更の管理方法などであり、例えばJobPartIDというタグが、途中で進んでいる工程の修正、変更、削除、指示されていない作業を行なう場合や、JobPartIDが無いデータが戻ってきたとき、また変更されたりマージされるときはどうするかなど、今後もテーマである。JOBが途中でキャンセルされた場合の取り扱いについて、JDFにはavoidとremoveというコマンドがあるが、avoidで生産からMISにリソースの通知しようということなどが話し合われた。

発注元が欲しい仕様をプロダクトのパラメータに置き換えるところでの関連付けが今まで議論されていなかったが、ここを作っておかないと課金情報が生成されないということもありこれもテーマである。

CIP4/Interopではこのような議論を重ねながら、着々とJDF対応システムが構築されている。ユーザーにとっては、JDFによって従来よりもローコストにCIMを実現できることが重要であり、究極的には全自動を目指すべきだろう。しかし全自動=CIMであるいう考え方は間違いと言える。CIMの取り組みはできるところから行なうのであって、JDFを利用することで、従来は潜在化していた管理情報が顕在化してくるというメリットは大きいのである。

2004/12/15 00:00:00


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