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グラフィックス分野における標準化の進展から,変化を読み取る

さまざまな分野で進む標準化

印刷分野におけるデジタル化は,さまざまな標準化とともに進展している。新しい技術が標準化されることで,製品への実装が進み,エンドユーザへの普及が進む。さらに,ひとつの標準が確立することがブレイクスルーとなり,さらに新たな標準化が進められたり,周辺技術の開発が進められる。

データプリント・サービスの分野では,かなり以前よりメインフレームでデータ処理をおこない,モノクロプリンタで印字する方法が普及していた。しかし,手作りプログラムのため高コストで納期もかかり,表現力も乏しいのが実情だった。また,さまざまなデジタル印刷機が発売されていたが,バリアブル印刷のためのインターフェイスは,各社独自の方式が取られていた。
しかし,バリアブル印刷のための言語としてPPMLが標準化されたことによって,バリアブル編集ソフトの開発が進展し,メーカー間の競争により,操作が容易で編集機能も豊富になってきた。そうして,エンドユーザはより高度なバリアブル印刷を実現できる,といった循環が生まれてきた。

モニター用の標準色空間としてsRGBが規格化されたことで,モニターの開発が進み品質の向上が図られたことはもちろんだが,カメラやプリンタ等の開発にも利用されている。さらに印刷業界でもICCプロファイルを使用したカラーマネジメントの普及につながっている。sRGBが普及したことで,さらに新たな拡張色空間の標準化が進められている。

XMLはドキュメントやデータ構造を規定するために使用されているが,実際にさまざまな分野での実用化が進んでくると,より高度なドキュメントを表現したいという要求が生まれてくるようになった。それが,複数のボキャブラリをひとつのドキュメントで扱うという「複合文書(Compound Document)」である。インターネット技術の標準化団体であるW3Cでは,既に複合文書を標準化する動きを進めている。

DTPやコンテンツ管理の分野で,膨大な数の素材を管理し,DTPワークフローを効率化するには,素材ファイルにメタデータを埋め込み活用することが考えられている。しかし,独自のメタデータでは限られたアプリケーション,限られたメンバーでしか使用することができない。メタデータを標準化することで,さまざまなアプリケーションで扱うことができ,有効に活用できるようになる。

PAGE2005コンファレンス,グラフィックストラックのテーマ

PAGE2005コンファレンス,グラフィックストラックでは,「標準化の進展とそれを取り巻く環境」がキーワードになっている。標準化の進展を読み取ることで,次のステップが明らかになってくるだろう。

【D1】 「メタデータによるDTPとコンテンツ管理」
AdobeがすべてのDTPアプリケーションに採用したXMPは,複数のメタデータを共存させて管理する仕組みで,自由にメタデータセットを追加することが出来る。様々な業界や分野で標準化されたメタデータを扱うことによって,システム側でのデータ管理,ワークフローの自動化をさらに進めることができる。
このセッションでは,国内で検討中であり,新聞・出版・印刷の編集工程での利用を目的として標準化を目指すPageアセンブリ・メタデータについて発表し,その可能性や課題について議論をおこなう。

【D2】 「拡張色空間の色再現と標準化動向」
sRGBが規定されたことによって,各デバイスの色再現目標が明確になった。しかし,その反面,sRGBの色再現域はカラーCRTディスプレイ特性に準じているため,銀塩写真やプリンタ,印刷で再現可能な色を再現できないという問題がある。それらの問題を解消するために提案された拡張色空間の色再現と標準化動向を探る。

【D3】 「バリアブルプリントの拡がり」
バリアブルプリントへの取組みには,フォーム印刷から発展しカラー化が進む請求明細書,CRMや大規模顧客データベースに基づくパーソナルカタログやパーソナルDM,さらには通信教育や各種学校,学習塾で使用する教材や成績表などの動きがある。本格的なバリアブル編集ソフトと,高性能化・高品質化が進んだデジタル印刷機の登場により,さらに新しい用途開発が進められている。多用途へ拡がるバリアブルプリントについて議論する。

【D4】 「InDesignの自動組版」
Adobe InDesignは,単体のレイアウトツールとしての評価以上に,XMLやデータベースとの連携など周辺開発のしやすさについて評価されており,日本語ページレイアウトのワークフローを変える可能性がある。XMLやデータベースを利用したInDesign自動組版システムと,今後のDTPワークフローのあるべき姿,さらに自動組版によって誰にどんなメリットがあるのかを考察する。

【D5】XML文書技術の新展開
XMLは世界的に普及が進み標準化が進んできたが,ほとんどの場合,単体のボキャブラリに基づくもので,各種のボキャブラリを混在させて扱うツールや環境は整備されている状況とは言えない。XMLの実際の利用が進むほど,「複合文書」に対する要求が高くなりつつある。W3C でも,すでにその標準化活動を開始し、その必要性、解決すべき課題等について取り組んでいる。また,様々なベンダーで複合文書に対するソリューションを提供する動きが始まっている。本セッションでは,複合文書への取組みや実用化,課題について考察する。

【D6】顧客サイドで進展するパブリッシング
印刷物の発注元である企業がMacやDTPアプリケーションなどの制作環境や,専門の人材を配備して印刷内製化をおこなうことは,容易ではない。しかし,定期的に発生する印刷物に関して,発注側でレイアウトをおこない発注をするメリットは大きい。印刷発注のコストだけでなく,基幹データとの連携,ワークフロー管理,印刷在庫の撤廃による在庫経費・管理経費の削減などである。
このような例を,顧客が主導するエンタープライズ・パブリッシングとして位置付け,動向や今後の可能性について議論をおこなう。

2004/12/20 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会