JDFワークフローに関しては、CIP4での規格の議論や生産設備のJDF対応は着実に進んでおり、概念理解の段階から具体的な検討をする時期になった。しかし、業界の一般的な認識として、森を見ずして木を見るような誤解、偏見が見られる。JDF、あるいはJDFワークフローは、印刷業界が次世代のインフラとして目指す「デジタルネットワーク化」の一部である。
印刷業界のインフラ構築は、経営管理、生産にかかわる個々の設備をデジタル化した第一フェーズから、デジタル化された各システム間に情報を縦横に流通させる「デジタルネットワーク化」という第二フェーズに移った。このデジタルネットワーク化は、以下のような機能要素を互いに連携させながら積み上げ、新たな競争力を身につけ、利益拡大を目指すためのものである。
1. 生産産設備間のデータ流通による自動化の推進
2. 経営管理システム(MIS)と生産設備との連携によるCIMの実現
3. 非生産分野(営業、工務、管理業務)の業務の効率化と管理の質的向上
(1) 社内各部署間のリアルタイムでの情報共有によるミス・ロスの削減
(2) 顧客、協力会社等、外部組織とのEDI/EC/SCM実現による新しい関係作り
(3) 各種情報の統合的利用による経営判断の最適化
このようなデジタルネットワーク化は、生産活動、日常の業務管理、各種経営判断など、企業活動全般にわたるボトルネックを解消して従来にない利益の源泉を提供する、という意味で「全体最適化」と呼ぶにふさわしいシステム化である。
JDF,JDFワークフローは、上記1,2項の重要なインフラとなるが、それが全てであるわけではない。上記のようなデジタルネットワーク化をインフラとする全体最適化を目指すのならば、JDF対応生産設備が入らなければ何も始まらないといった見方は誤りである。
相当多くの印刷会社では、JDF対応設備からリアルタイムで得られる詳細な情報を有効に活用するMIS側の準備が出来ていない。そのような会社においては、社内各部署間のリアルタイムでの情報共有の仕組み作りを先行させることが投資効率の点からは有利かもしれない。しかし、まだ、印刷機のインキプリセットのように、プリプレスのデータを使って各種調整の自動化をしていない企業であれば、MISはともかくJDF対応の生産設備を導入することで投資に見合う効果を得ることができるだろう。
したがって、JDFワークフローを考えるにしても、重要なことは上記のようなデジタルネットワーク化の全体像とそれを構成する要素を理解し、各要素の導入自体で相応のメリットを得ながら、必要な要素を積み上げて目標に近づいていくロードマップを描くことである。
Page2005コンファレンス「JDF/MISトラック」では、CIMやEDI/ECを含む全体最適化を実現するロードマップを描くために、本来の目的とビジョンを確認しつつ、現在の位置を踏まえて今後の課題、見通しを話し合う。
第1日目(2月3日)は、今後のロードマップを考えるための基礎情報を得ていただく内容で構成する。
第2日(2月4日)は、印刷業の全体最適化への取り組みについて考える。
2004/12/26 00:00:00